cafe de nimben

見たものと、読んだもの

ヤマシタトモコ『違国日記』第9巻

前回の感想で、こんなことを書いた。 朝の、たまにちょっとおバカさんかもと思う時もあるけど、てらいなく人に質問をぶつけることができる、という点に対して、私はすごく尊敬する。 nimben.hatenablog.com 今回は、あえて言えば「才能」って何、かな やばい…

野田サトル『ゴールデンカムイ』(連載最終回と期間限定全話無償公開)

大幅加筆がある模様なので、単行本派の人も、連載版を読むといいし、まだ読んだことがなければ、無償だし、登録も不要なので、立ち読みみたいな感じで読んでみるといい。 外伝とかいくらでも作れると思うけど、本伝としては314話で、キレイに終わる。 tonari…

源頼光の鬼退治、酒呑童子編

こちらで出てくる nimben.hatenablog.com 3巻の扉絵は、源経基。その子が満仲、孫が頼光。 そして、鬼として描かれている、酒呑童子、紅葉と茨木。 この鬼たちは頼光時代の伝説で、将門の物語とは別。このため、本編ではおそらく頼光はもうでてこないとおも…

夢枕獏・伊藤勢『瀧夜叉姫 陰陽師絵草子 』(第3巻)

少しずつ、少しずつ、大きな幹が見え始めてきたかも。 今までほぼバラバラだったエピソードが線でつながり始めた。さらに後で辻褄が合ってくるのかもしれない。(楽しみのために、夢枕獏の原作は読まないでおこう) 表紙は、平将門。きちんと異形として左の…

魚豊『チ。-地球の運動について-』(第7巻)

あああ、完全に抜けていた! Pはポルトガルじゃなくて、ポーランドか!!! 羅針盤>大航海時代>ポルトガルと、信じて疑わなかったのが、勘違いの原因ですね。 チ。―地球の運動について―(7) (ビッグコミックス) 作者:魚豊 小学館 Amazon ポーランド ポー…

特別展「空也上人と六波羅蜜寺」(東京国立博物館)

平成館まるごと使った特別展ではなく、本館の一階のスペースを使っての、こじんまりとした展示。(平成館はポンペイ展をやっている) 会期:2022年3月1日(火)~5月8日(日) www.tnm.jp 重要文化財 空也上人立像 運慶の四男康勝による作品(13世紀)。 117…

ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展 (東京都美術館)

なんといっても、フェルメール『窓辺で手紙を読む女』の修復後の姿が、日本初見参。 かなり精度が高くて大きさも揃えてある模写も展示されていて、とてもよかった。 本来は、2022年1月22日(土)~4月3日(日)と言う会期だったが、オミクロンのせいで、開始が2…

Russians / Sting (1985)

1985年、England出身のStingによる歌。ソロデビュー作 "The dream of the Blue Turtles / ブルー・タートルの夢" 所収。 www.youtube.com 時代背景 この曲が作られた1984年は、ソ連はチェルネンコが書記長の時代。翌1985年にゴルバチョフが就任する。この時…

七尾ナナキ『異剣戦記ヴェルンディオ』(3巻まで。続刊中)

『Helck』の七尾ナナキ作品なので、最初の世界観がミクロ寄りに描かれるため、大きいところが読めないことはワクワクにつながるので、とても楽しみ。 異剣戦記ヴェルンディオ(1) (裏少年サンデーコミックス) 作者:七尾ナナキ 小学館 Amazon 表紙の通り、…

たらちねジョン『海が走るエンドロール』(2巻。続刊中)

65歳の老女が映画を撮る話、というまとめ方は正しいのだが、本質はそこではない気がする。 なぜか自分で蓋をしてきてしまった何かを、誰が何を言おうと、きちんと解放する話。今まで怖くて見てこなかったものに、きちんと対峙して、解像度高く見てみることを…

深見じゅん『悪女(わる)』(全37巻)

2022年4月から日本テレビ系列で再ドラマ化されるということで、久々に原作を読んでみた。 悪女(わる)(1) (BE・LOVEコミックス) 作者:深見じゅん 講談社 Amazon 1988-1997年まで連載されていたので、バブル絶頂期の様子が背景に残っているのはとても興味…

日本橋ヨヲコ『少女ファイト』講談社(第18巻)

待望の18巻。 大体年に一回単行本が出るペースだったのだが、17巻は2020年7月発行なので一年半開いた。 しかも、今回は最大の敵、雨宮摩耶戦である。(あえて、青磁高校戦とは言わない) 少女ファイト(18) 特装版 (イブニングコミックス) 作者:日本橋ヨ…

吉田秋生『詩歌川百景』第2巻

人に優しい嘘。自分にだけ優しい本音。 弱さを飲み込む強さ。弱さを凶器にする無意識の卑怯さ。 詩歌川百景(2) (flowers コミックス) 作者:吉田秋生 小学館 Amazon 「街で一番の美女」杯でいうと、大女将から、その娘、孫娘と繋がっている。 大女将。 街…

魚豊『チ。-地球の運動について-』/ 15世紀欧州の宗教と美術と音楽と大航海時代

前提として、14-16世紀ヨーロッパについて調べてみた 15世紀P王国。おそらくアディス朝ポルトガル王国。 ゴシックから、ルネッサンスへ変わっていく時期。ルネッサンスを朝日とするなら、チ世界は一番暗い夜明け前。 キリスト教 細かい派閥はあれど、まだカ…

魚豊『チ。-地球の運動について-』/ 地動説とリアリティライン

実際の地動説 コペルニクスの『天体の回転について』は1543年だから、この物語世界の最初は15世紀なので、次の世紀に結実する話。この物語で出てくるかどうかは、まだわからない。そもそもこの物語の最初では、コペルニクスは生まれていないかもしれない。 …

魚豊『チ。-地球の運動について-』(既刊6巻)

面白いという噂を聞いていたのだが、その通りだった。 年末年始に既刊6巻を大人買いして追いついた。 地動説を信じる人たちの戦い、と言ってもいいのかもしれない。 地動説自体を信じているのか、地動説を正統と叫ぶことで得られる何かを得ようとしているの…

2021年に買ったマンガ / 完結作品

追っかけていた中で、2021年に完結した作品 藤本タツキ『チェンソーマン』 [まとめ買い] チェンソーマン 作者:藤本タツキ Amazon 展開が最後まで全く想像できなかったのがすごい。 綺麗事では無い、人間のダメさ卑怯さ狡さ、自己評価の過大と過少の揺れがど…

2021年に買ったマンガ / Web系

去年は私にとって、マンガ体験の比重がWebに移った年だった。 といっても、今自分が紙の雑誌で追いかけているのは、月刊アフタヌーンだけなので、別のものに変えたというよりは、追っかけるものが増えた、というのが正しいけれど。 今までも、収納スペースの…

原作:青木潤太朗 漫画:森山慎 『鍋に弾丸を受けながら』(1) KADOKAWA

治安の悪い場所の料理は美味い そう思いませんか? (中略) 日本みたいに安全な場所って、"70点から90点のものがどこでも食える" んですよ そりゃあ素晴らしいことです でも危険とされるところ… グルメなどでは絶対に赴かないはずのエリアかな… そういう場…

小川一水『天冥の標』(てんめいのしるべ)早川書房/冥王斑

感想をどういう書き方にしようと悩んでいた。 10巻17冊の大河小説なので、いろんな切り方ができる。しかもダレ場というか無駄なところがなく、どれをどうとっても濃い。本当は相当書いて削っているんだろうなあという感じで、書こうと思ったらこの倍の外伝が…

チョン・ビョンギル『殺人の告白』2012韓国

10名の女性を殺し、時効となった事件の犯人が、それを告白する本を出してベストセラーに。彼の目的は何? というサスペンスアクション映画。色々な伏線とミスディレクションが駆使されつつ、迫力のある(まれに無駄にやりすぎ)アクションで、終わりまでノン…

原作:井龍一、作画:伊藤翔太『親愛なる僕へ殺意をこめて』講談社

色々仕掛けられているので、ネタバレなしにいうのは難しいが、猟奇的サスペンスミステリー。『羊たちの沈黙』を横溝正史的なウエットにしたものが好きな人におすすめ。 親愛なる僕へ殺意をこめて(1) (ヤングマガジンコミックス) 作者:井龍一,伊藤翔太 講…

デヴィッド・O・ラッセル/David O. Russell『世界にひとつのプレイブック』"Silver Linings Playbook"(2012米)

普通の人がちょっとダメになった時に、悪いことばかりじゃないさと言うための映画。 www.youtube.com 演技がすごい この映画のすごいところは演技だ。ナレーションがなく、劇伴も大袈裟でなく、派手なシーンもカットバックもない。いわば、ワンショットの長…

鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文春e-book)

監督として2008年から2011年まで8年間中日ドラゴンズの指揮を取り、日本一を1度、リーグ優勝を4度獲得、そして一度もBクラスにならなかった落合博満。 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book) 作者:鈴木 忠平 文藝春秋 Amazon 「嫌われ…

ヤマシタトモコ『違国日記』第8巻

相変わらず、深いテーマを、深刻にはならずに、むしろコミカルに描く卓越の技。 違国日記(8)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing) 作者:ヤマシタトモコ 祥伝社 Amazon えみりのカミングアウトの話と、朝の父親は「誰」だったのかを調べる探偵話。どち…

夢枕獏伊藤勢『瀧夜叉姫 陰陽師絵草子』2巻

「スーパー歌舞伎でトールキン」の第二巻。 いろんな布石を打つ巻ではあるが、藤太 vs 大百足戦と言う絵的にも大変楽しいものもあり、飽きることはない。 [まとめ買い] 瀧夜叉姫 陰陽師絵草子 作者:伊藤 勢 Amazon 伊藤の画力の高さは、これだけで楽しい。老…

羽海野チカ『3月のライオン』16巻

天才は畏敬することすることしかできないのだが、もがく人には共感する。 一緒に戦っている気分になるのは、悪いことではない。 3月のライオン 16 (ヤングアニマルコミックス) 作者:羽海野チカ 白泉社 Amazon 将棋のことはわからないけど、棋士のエピソード…

田素弘『紛争でしたら八田まで』7巻

ナウル編のエピローグと、シンガポール編全編と、日本編のプロローグ。 紛争でしたら八田まで(7) (モーニングコミックス) 作者:田素弘 講談社 Amazon もうちょっとエピソードを長くした方がいいんじゃないかと言う気がする。 フォーマットがあるのは強く…

おかざき真里『阿・吽』14巻完結

最澄と空海のお話の最終巻。 実は最後の最後で意味が取れなくなってしまった。読解力が落ちてしまったのか、自分にトホホな気分になっている。 阿・吽(14) (ビッグコミックススペシャル) 作者:おかざき真里 小学館 Amazon 最澄と空海の関係性はつまりな…

甲賀長生『異世界紀元前202年』(2巻まで、継続中)

紀元前202年は、ハンニバルがザマの戦いで、スキピオ・アフリカヌスに敗れ、項羽が垓下の戦いで四面楚歌となり劉邦に敗れる。この二人がこれらの戦いで勝ち、そのまま東西の大帝国がぶつかったら、と言うファンタシー。 この荒唐無稽さは面白い。 異世界紀元…