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見たものと、読んだもの

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 [Kindle版]

この本を読んで、みっついいことがあった。

  1. 昔の未熟さに、きちんと向き合えたこと。
  2. その失敗に対する対処方法を得たこと。
  3. 翻訳本の巻頭解説のベストな例の一つに出会えたこと。

1. 昔の未熟さにきちんと向き合えたこと

Giverに私が触れた最初の経験は、すがやみつる氏の「情報は Give & Givenである」という考え方だった。

もちろんそれまでも「情報は発信者に集まってくる」という考え方はあった。それはこの本で言うところの「Matcher」の考え方だとおもう。情報を発信した労力分は、受信できるだろうという計算があるという意味で。

すがやさんはGiverだった。Nifty-SERVE を中心に大量に高品質の情報は発信する。それの見返りを求めた姿は見たことがない。情報は、誰かから take する/ぶんどるのではない。誰かが Give してくれたなかに、自分が欲しいと思っていた情報があることがある。それをありがたくいただく。given なのだ、そうおっしゃっていた記憶がある。

これは若かった私には衝撃的なことであり、がんばって実践しようとした。
そして失敗した。私の行動が、「自己犠牲型 giver」になってしまい、疲れ果ててしまったからだ。同時に、こんなに一生懸命やっているのだから、何らかの見返りがあってしかるべきだ、という暗黒面に陥ったからだ。

それを下敷きとした行動は未熟だったと言わざるを得ない。今でも、申し訳ないとおもっている。
自分が天性のGiverではないということを、この本を通じて振り返ることができたのは、とてもよかった。

2. その失敗に対する対処方法を得たこと

この本は、ひとをGiver/Matcher/Takerの3種に分けて、実は成功しているひとのパーセンテージで一番多いのは、Giverだよ、と言っている。同時に失敗しているひとのなかで一番多いのも、Giverだとよといっている。そしてその理由を検証していくと同時に、成功するGiverになる方法について分析をしている。

私は「自己犠牲型Giver」であったこと、それにこりて「Matcher」になっていたことがある。
たぶんどちらも、自分の世界を狭くするものだ。前者の時は、Giverとして与えられる容量の上限、後者の時は、交換できるものの容量の上限の関係で、世界の広さの上限ができてしまうからだ。

成功するというよりも、いまよりもちょっとましになりたいとおもったとき、自己犠牲型でないGiverになる方法論が、私には必要なのだと思う。

その内容は、本書をご覧じろ。

3. 監訳者のことばがよかった

訳書者の言葉はだいたい最後につき、どんなに苦労をしたかなどのこぼれ話に終始する。楠木氏のそれは、巻頭にあるだけに、これから読む人に内容を要約しつつどういう読み方をするとさらに得るものが多いか、というヒント集になっていた。

落語で言うと、よい枕になっている。よい要約になっているので、完読後に、再度、監訳者のことばを読まれることをおすすめする。