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宇宙という、来なかった未来

スペースシャトルの写真を見ると、来なかった未来に思いを馳せてしまう。

宇宙戦艦ヤマト機動戦士ガンダムを子供の時にみて育った。
アポロ計画は物心ついた時には終わっていた。金が続かないからという話を聞いて、戦争する金を宇宙に回すべきだと怒っていたりした。
宇宙旅行ができるのは当たり前で、月に行くのも生きている間にはなんとか機会があるかもしれないとおもっていた。
アポロのような使い捨てロケットではなく、繰り返し利用するスペースシャトルによって劇的にコストが下がるので、民間人でも、安くはないだろうが手が出る価格になると夢見ていた。

正確には1975年の通称アポロ18号(ソ連ソユーズとのドッキング)で米国による宇宙に人を送り出すのは中断されていた。
1981年にスペースシャトルコロンビア号が有人で宇宙に出た。
2011年までの30年で19回、有人宇宙飛行をしている。0.63回/年。
アポロ計画では68年のアポロ7号から75年の通称アポロ18号までの7年で15回有人飛行が行われている。2.1回/年。

アポロ計画では、1号が発射訓練中の事故で3名が失われたが。スペースシャトルは14名が亡くなっている。
1986年にチャレンジャーは発射から73秒後に、2003年にコロンビア号は地球帰還時に失われ、それぞれ7名亡くなったのだ。

これら事故の後でも飛ばしているので、技術的にはある程度確立したとはいえ、安全にかかるコストは膨大なものとなり、使い捨てロケットの方が安いという皮肉を生み、スペースシャトルはミッションを終えてしまった。

ロケットって古いよね、というスペースシャトルが逆にロケットに負けているところもまた、こなかった未来的な感慨がある。

現在でもISSへの渡航は、ロシアのソユーズで行われている。ソユーズは67年から有人飛行をしていて、未だ後継がないというのももどかしい。生まれる前のものが、いまだに使い続けられているというのは、更新されない未来。

なお、民間人の宇宙旅行という点では、TBSのお金で1990年にTBSの社員が宇宙に行ったのが最初。個人が自費で行ったのは2001年のチトー氏が最初。チトー氏は24億円で1週間滞在したそうだ。一時期、西側諸国でもそういう話があったが、その後どうなったのか、よくわからない。ま、1億円はするんだろうし、それなりの健康を保っていないといけない。金と健康と若さを兼ね備え、ということでいうと、自分が宇宙旅行をする可能性は、残念ながらかなり低い。これも、来なかった未来。

来ると信じ込んできた未来がこなかった、というのは、体験したことがないのにノスタルジーなのかよくわからない心境だ。

なお、チャレンジャー事故の調査報告に、理論物理学者のリチャード・ファインマンが断固として入れさせた、付録Fというものがある。結びがこうだ。

For a successful technology, reality must take precedence over public relations, for nature cannot be fooled.

http://science.ksc.nasa.gov/shuttle/missions/51-l/docs/rogers-commission/Appendix-F.txt

「技術の成功のためには、PRよりも現実が優先されなくてはならない。自然は騙されないから」
これは「事故が起きたのは、現実よりもPRを優先させ、事実を捻じ曲げて人を騙したからだ」と言っているに等しい。

人には、見たいものを見るという悲しい習性がある。多くの場合、その悲しい習性に従う方が、人生はハッピーだ。だが、nature cannnot be fooled。謙虚に事実を直視するようにしないと、このような大きなしっぺ返しが待っていることを肝に命じたい。