地味な良作って感じの映画だった。
惹句が「マジメって、面白い。」だったのだが、実は地味で真面目な人を小馬鹿にする系なのかなと、公開当時にちょっとビビっていて未見だったのだが、よい方向に外れた。
原作未読。女性誌のCLASSYで連載だったらしい。
カメラと被写体の距離感が面白い。ドキュメンタリーでもないし、かといってガッツリ入っているわけでもない。体温が低い系? これは独特な間だな。
細かく言うとはてな点はいくつかあるのだけど。
13年も経って西岡(オダギリジョー)と一緒に仕事をするときに、再会の喜び系の話はなかったのかとか。
そこら辺をしっかり描くために、岸辺(黒木華)のところの下りは削ってもよかった気がする。
まあ、一つを外すとバランスが崩れるから、無い物ねだりなのだけど。
松田のコミュ障チックなベースにありつつも、新人と主任とで演じ分けて15年の成長を見せるところとか、宮崎あおいの勉強コンプレックスから来る怒りの演技とか、オダギリの軽い感じとか、自然体に見える演技が、すべてのアラを消し去ってくれる感じ。
しかしまあ、手で作る辞書の現場が映像として残る最後のチャンスだったよね、きっと。windows 95っぽいものの上で動くexcelがあったにしても。これデータベース化していけば一瞬で終わる付け合わせ作業が、学生バイト群が数日泊まり込みって、もうありえへんだろうし。これからの辞書には、そういう時間を別の時間につかってほしいとおもう。と同時に、excelすらない時代の完全手作業のときの辞書作りって、涙がでるほどすごそうな話だと怖気をふるう。
なお、フジテレビのノイタミナ枠でアニメ化するらしい。
「これは辞書作りに魅せられた一人の男と、その熱意に魅せられたもう一人の男の物語」と言うコピーは、なかなか良さげ。バディもの的な?
秋みたいなので、気長に待つ。