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見たものと、読んだもの

雨隠ギド『甘々と稲妻』1−6巻(連載継続中)/講談社

丁寧。

妻を亡くしたシングルファーザーの高校教師とその娘が、その学校の女子高校生に料理を習うお話。

とだけ書くと、高校教師ものの恋愛なのかとか、料理の作り方コミックエッセイ的なものなのかとか、いろいろ妄想が湧くかもしれませんが、ちょっと待った。

いわゆるプログラムピクチャーのようなものではなく、ここに出てくるキャラクターたちが丁寧に相手を思いやりあいながら進んで行くお話。温かく見守るような感じで是非ご覧ください。

↓ 試し読みだよ。第1話。

www.moae.jp

テイストがあえば是非。

永遠に続く日常的なものではなく、容赦なく時は流れていく。となると高校卒業というイベントがどうしても発生してしまうから、それまでに何か起こるのか起こらないのか。どきどきする。

 

話がどう丁寧なのかは、ネタバレっぽくなるので、ちょっと隠しておくよ。

好きなところ:未分化のまま提示される好意とそれをもてあます小鳥

小鳥ちゃんの「好き」がどういう好きかわからなくて、第三者に勝手に「恋」にカテゴライズされることに拒否を示すところが特に好き。ゲスいことを考えて、二人をくっつけちゃえという安易な解決にいかないし、周りの近しい人がそれを暖かく見守るところが、周りのゲスい人がそういう妄想をするシーンを描くところを含めて、とても誠実。

僕はこれは、恋なのかもしれないし、父親のいる家族というものへの憧れという代償行為かもしれないし、「好き」には違いないけど、何の好きか自分でもわからないし、いま決めたくない、のだと思っています。というのは、先生への恋であれば、つむぎちゃんなしで二人きりになりたいかなとおもうんだけど、そういう描写がないから。先生とつむぎちゃん、今の所ワンセットで好きなんじゃないのかなあ。もちろん「先生が先生じゃなかったら」というところで、恋に恋する感じはあるから、恋心がゼロとはおもいませんが。
 
とか印象で書いていたら、台詞にもあるのね。6巻のP134-135。
 
でも今は本当に……
大切な人たちだから
そういう気持ちを恋とか 他の人に決められるの
嫌なの……
 
……よくわかんないけど
つまり好きってことだよね?
 
〜〜っ
だからっ!!
もっと複雑で!!
 
いいじゃん
小鳥ちゃんの好きな物ワクの中に入れとけば
ごはんとかごはんとかごかんのとなりに
だって
あー好きだなー
って思うのは
別に悪いことじゃないでしょ
 
ここのくだり、ほんと好き。
 

好きなところ:料理初心者が経験値を積み上げていく喜びの描きかた

自分でも料理をするのだが、最初がどうだったかはもう思い出せない。何に怖がって、何に緊張してなんてものは前世紀においてきてしまった。

しのぶの

大事にしていたんじゃねーのか?

え?

センセーとあの子とゆっくりていねーにやるの…

私はさーせっかちだし

手ー出したくなっちゃうから悪かったかなーーって…

 第2巻P130。

ってのは、ほんとうにいい子やなあと。

 

蛇足

著者インタビュー

http://konomanga.jp/interview/5804-2