読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『重版出来』と『99.9』は、何が違ったのだろうか

見ていた春ドラマは『重版出来』と『99.9』どちらもちょっとマイナーな業界もので、主人公はちょっと変人。どちらも浮世離れしている。

99.9-刑事専門弁護士- Blu-ray BOX

99.9-刑事専門弁護士- Blu-ray BOX

 
重版出来!  DVD-BOX

重版出来! DVD-BOX

 

 

『99.9』は2016年春ドラマでトップの視聴率(最終回19.1%)を叩き出し、『重版出来』は視聴率10%を超えることなくおわった(最高は初回の9.2%)。

Audience Rating TV > 視聴率 > 2016年04〜06月

ドラマの質はどちらもいいとおもうし、どちらも個人的に好きな作品。

構成の共通点として、どちらも短編連作的な基本は一話完結の物語なのだが、一部が伏線となって後に回収される仕組みをとっている。

だが、もし差があるとしたら、という点がひとつある。

シリアスとおふざけのメリハリだ。

『重版出来』は、原作から引き継ぐ弱点がある。それはヒロインのスーパーマンぶりだ。柔道女子の日本代表になりかけて怪我で引退。そこから漫画の編集者としていきなり作画から営業から人間関係から、無双してしまう。漫画の専門の勉強をしてきているわけでもないのに、10年選手レベルの対応ができてしまうのは、浮世離れしていると言わざるを得ない。

黒木華も、ちょい猫背足開き気味で立ち低重心な原作の小熊らしさをみせつつ、ビジュアルでも本来の和風細身美人で絵をなりたたせるという溶け込み用をみせる。二次元を三次元に移し替えるとはこのことだよね。

そういう控えめなヒロインを狂言回しとし、脇の名優たちが、表舞台に立つことで、ファンタシーなのにリアリティをもたせるというウルトラCをやってのける。

本や漫画をよむのが好きな私としては、好きな業界ものとして、また漫画家と編集者の関係がこうであったらいいなあというファンタシーを感じることができたという好みな意味で、とてもいいものだった。

ただおそらく、真面目に過ぎる。荒川良々安田顕の時折ふざけた演技があるが、これは原作のテイストにあわせた、真面目な演技。

脚本もとても真面目に原作をなぞり、そしてテレビ用に翻案をしてみせた。連載ものはどうしても後から見るとぶれているところがでてくるのだけれど、それもうまく一本の芯にまとめるという、優等生のような。

そう、みんながみんなの理由でがんばる、やさしい世界なんである。そこには、努力をすれば何らかの形で報われる的な、日常系四コマ漫画的な世界だった。

『99.9』は、テレビオリジナル脚本。

じつは構成としては壊れているとおもう。主人公がなぜ「被疑者の利益を最大に」ではなく「事実にしか興味がない」といいきるのか。依頼人に対するある種の裏切りを前提にした話なのか。そのサスペンスが、物語の一番の駆動力と想定していたはずだ。その破調を乗り越える何かが提示できたのか。

一応の決着はあった。しかしそれは、伏線の張り方からすると、思わせぶりのわりに熱量があまり大きくならぬまに、肩すかしのままにおわったように見える。映画版に続くという感じでもないし。正直消化不良だ。たとえば丸川検事(青木崇高)なんかは、検事内紛争で「昔、検事で不正があった」ということを見つけて、戦うという役柄を目指していたのではなかったか? 役が急に小さくなった気がするぞ。

が、そこが多分よかったのだとおもう。最終決戦にむかっての伏線は、会の最初の方から色々張っていた。これは完全に妄想なのだけれど、テレビ局は毎分の視聴率もわかる仕組みになっているので、どうやらそれが「ミステリーによる駆動力」というポジティブ面よりも、「重いから見ない」というネガティブ面を感じ取って、少しずつ軽くしていく方向に、演出も脚本も変えていったのではないかという節を感じた。

無駄に長いダジャレやプロレスラー押しとか、「シリアスな重さ」に耐えられるように味を調整したらああなったということではなかろうか。映画と違い、リアルタイムに脚本や演出の方向性を変えて、チューニングを加えるのは、連続ドラマならではの戦い方だ。

視聴率を取るのが仕事と理解すれば、これは全面的に正しい。

『重版出来』はひとつの映画的な作品で、『99.9』は視聴率を取りに行くエンターテインメント。『重版出来』は狭く深く入り込んで、もしかしたら長く愛してもらう作品で、『99.9』は浅いが広く視聴者を獲得し、このクールできっちり終わらせる作品。

だから、そもそも戦っている土俵がちがっているんだとおもう。

そして、放映時間などを考えて、うまくターゲットを考えて戦ったTBSはドラマビジネス的に強かった、というのが2016年4−6月期なんだろうなあ、という感じ。