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見たものと、読んだもの

クリス・バック/ジェニファー・リー『frozen』2013

いやー、これ、題名として売れるのは『アナと雪の女王』かもしれないけど、物語としてはfrozenでないとあかんやろー

 

 

 

ネタバレ

 

 

Frozenは、何が凍ってしまったのか。それはエルサの感情だ。

妹を殺しかねなかったトラウマで心を凍らせる。

愛すべき妹を遠ざける羽目になる。妹のトラウマにならぬようにその記憶は消される。そのために、アナが姉を愛すゆえに無邪気に「雪だるまを作ろう」と歌って誘うのが、姉エルサにトラウマを何度も何度も重ね塗りすることになる苦しさよ。しかも、心は悲鳴をあげたいが、それすらも許されない。地獄かよ、長男長女教。

戴冠式でそれは爆発し、夏に国を凍らせてしまう。

Let it go は、ありのままなんかじゃなく、今まで貯めて来た辛さを流してしまえ。もう何も我慢しなくていいんだ、という人間宣言だ。

知性あるが故に、自分が人に害をなす存在だと知るが故に、山中に自分の城を築き、閉じこもる。ただ、自分の力が予想以上に強く、国をFrozenさせてしまっていることに、この時点では気づかないが。

しかし、すべてを let it go して閉じこもるのは、自分の感情を抑制しなくなった以外には、実は行動としては何も変わっていないという皮肉。

「家出しちゃった、ああ、せいせいした」レベルでしかない。

国がFrozenになっちゃって、実は何も変わっていなかったことに気がついたときの絶望。好き放題暴れまわっていたとおもった孫悟空が、気づいてみたら釈迦の掌の上だったレベルの、何も変わっていなさ。学習的無力感とはこのときのためにある。

話が最初にもどり、成長したアナを、自身のFrozen魔法で凍らしてしまう。

自分で自分の魔法の解除の方法をしらない(今まで隠していたことしかない)

あんなに冷たくしたのに、体を張って守ってくれたアナを、再び殺してしまうのか。

このあたり、わたしは涙を止められなかったですよ。

 

最後、大団円でよかったよかった。 

 

通常のおとぎ話と見せて、『真実の愛」は、恋の先ではなく姉妹の家族愛の復活にしているところが、ミスリードを誘いつつ、物語の円環を閉じてて好ましい。 

 

長男長女教の呪いの解毒に。