cafe de nimben

見たものと、読んだもの

「ベルギー 奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」渋谷Bunkamura

作家の個展と言う見方も楽しいのだが、時間軸で見てみるってのもなかなか乙なものだと思った。超有名作はそんなにないのだが、流れが面白い。

www.youtube.com

www.bunkamura.co.jp

 

現代→15世紀→時間軸に沿ってそのまま現代へ、と言う流れ。

 ブリューゲルバベルの塔」展を見ていたので、「奇想」と言うか「ヘン」なものはちょっとだけ前提知識があった。

nimben.hatenablog.com

15-17世紀のフランドル美術

ボス系のキモかわいいキャラクターたち

ヒエロニムス・ボス系のヘンなものは確かにたくさんあった。

上記ブリューゲル展でも見た『大きな魚は小さな魚を食う』
(タラ男の位置的に、左右逆転のような気がするが↓)

Pieter Bruegel the Elder - Big Fish Eat Little Fish, 1556 - Google Art Project.jpg
By Pieter Brueghel the Elder - XQE024hSXOrhwQ at Google Cultural Institute maximum zoom level, Public Domain, Link

ブリューゲルの、七つの大罪シリーズ(七つとも展示)、それと対になる七つの徳目シリーズ(4つのみ展示)

七つの大罪は、映画『セブン』とコミック『鋼の錬金術師』の影響が強いので、また別の感じがする。ボス/ブリューゲルの流れだと、どうしてもヘンなキャラクターがたくさんいてキモかわいい的な。大罪とか徳目とか、なんか道徳的な感じを持てないのが、いいのか悪いのか、と言う感じ。

キャラクターはこちらが便利(会期終わってもページ、なくならないといいけど)

fantastic-art-belgium2017.jp

しかし、神奈川県立近代美術館にボスの七つの大罪、徳目の版画が収蔵されているのね。

ルーベンス

ルーベンスをこう言う流れで見たことはなかったのだが、ルーベンスはやっぱりルーベンスだった。

Peter Paul Rubens - Lion Hunt - WGA20415.jpg
By ピーテル・パウル・ルーベンス - Web Gallery of Art:   Image  Info about artwork, パブリック・ドメイン, Link

この生々しい肉感と過剰なくらいドラマチックな表情と演出が素晴らしい。(展示されているのは全て版画なので、上記油彩画が来ていたわけではない)

しかし版画でこの肉感を出すのって、すごいですわ。

他の版画も『習作 皮をはがれて筋肉構造が露わになった三人の男性裸像、一人は右腕を上げている』(ベルギー王立美術館収蔵)なんてのもあり、そういう地道な解剖学がこの肉感を作り上げているのだろうなあという、すみません、小学生並みの感想で。

今、ルイヴィトンで、Mastersと言うコラボ名で、ルーベンス『虎狩り』モチーフのカバンとか売っていますが、いやー、一部を切り取ってもルーベンスルーベンスというオリジナリティのすごさを感じますね。

jp.louisvuitton.com

アントニウスの誘惑

今回、ボス系でこの画題のものが複数展示されていた。

と同時に、第二章で展示されるフェロニアンロップスのものも、また別の味わいで出ていた。

同じモチーフで随分違うのが面白かった。

色々あると面白いので、別稿にしたいと思います。

 

19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派・表現主義 |ロップスの世界|ベルギー象徴派|アンソールの世界|

ボス系を抜けると、また全く別の世界。


Félicien Rops - La tentation de Saint Antoine.jpg
By フェリシアン・ロップス - eMule, パブリック・ドメイン, Link

 

jmapps.ne.jp

 

第 3 章 20世紀のシュルレアリスムから現代まで |マグリットデルヴォーヤン・ファーブルと現代美術|

現代だ!

超有名どころとしてマグリットの大家族。などあったが、今回、私はお初のヤン・ファーブルがとても気になった。

さすがにパブリックドメインの画像がないので貼れないけれど。

 

いくつか収蔵品があるので、行ってみたい。

www.kanazawa21.jp

 

2年前に表参道でやっていた展覧会の記事。昆虫記のファーブルの孫なのか!

bijutsutecho.com

 

ヘンなもの、という言い方である意味統一したかったのかもしれないけれど、フランドル派の「ヘン」と現代美術の「ヘン」は随分違っていて、トルストイのAnna Karenina的な多様性かもしれないと言って御茶を濁してみる。

私はしっかりとした遺伝子的な流れは感じなかったのだが、それでもしかし一つの流れでとある国の美術を見てみるというのは、びっくり箱のようで楽しかったです。

全くノーマークだった、ヤンファーブルに会えたのは、こういうオールスター形式ならではの楽しみですね。