りょかち『インカメ越しのネット世界』幻冬舎Plus+ 2017

エモい(褒め言葉)

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インカメ越しのネット世界 (幻冬舎plus+)

インカメ越しのネット世界 (幻冬舎plus+)

 

 

これが、マーケット的に正しい分析なのかどうかはわからない。鳥瞰性はあまりないかもしれない。しかし、急激に立ち上がる「自撮り」システムの只中にいる筆者のエモーションが、この本には詰まっている。2017年のこのマーケットの一つの虫の視点として、記録すべき本。

 

これは、自撮りのやり方を教わる本ではない。コミュニケーションの革命だ。
文字からの脱出のドキュメンタリーだ。

 

文字からの脱出を言うならば、抽象と具象の概念に切り込む必要がある。

今まで、文字が一番遠くに届くものだった。時間的にも、距離的にも。それは、文字という不可逆な超高圧縮というプロトコルを使うからだ。

体験は、何かに変えないと人に届けることはできない。つまり、体験という具象を文字という抽象に変換する必要がある。「あの時君と見た夕日」は、文字にした瞬間に普遍性を持つ代わりに「あの日」「君と見た」夕日性は失われる。非可逆圧縮だから。

文章がうまいというのは、具象性をあまり失わせずに、文字で体験を抽象に定着させることができるということを指したのだと思う。これは圧縮アルゴリズム職人技なので、そんなことができる人はなかなかいない。だから、今まで重宝されて来たのだと思う。それが例えば百人一首に収録された短歌。時を千年経っても不滅の名作を生む。

しかし、文字にしなくてはいけない理由が、技術の発達で少なくなって来た。ほぼリアルタイムで、安価に、広帯域で世界中の人とつながるインターネット。月に行ったアポロをはるかに凌駕する性能のスマホ。だいたい無料のアプリ。

どう感じたかは、脳内にしかないので、流石に文字が必要だ。しかし、どんな風景だったかは、見たままを記録し、送信できるだけのアプリとパイプを人類は獲得した。

体験共有の民主化と言って良い。

 私はそこに未来を感じるのだが、筆者はどうも郷愁を感じているように思えるのがエモくてよい。