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見たものと、読んだもの

高橋慶太郎『ヨルムンガンド』サンデーGXコミックス(全11巻完結)

最初、なんで『ヨルムンガンド』なのかわからなかったのだが、読み終えると確かにヨルムンガンドですね。

この本の表裏には

五つの陸を食らい尽くし
三つの海を飲み干しても
空だけはどうすることもできない。
翼も手も足もないこの身では。
我は世界蛇。
我が名はヨルムンガンド

とある。そして、そういう物語だ。

 

ちなみに、北欧神話としてのヨルムンガンド

ヨルムンガンド - Wikipedia

 

最初はガンアクション漫画だと思ってて、5巻くらいまで読み進めていたのだ。

アニメ版だとこんな感じだしね。


ヨルムンガンド戦闘シーン1〜2話

が、単行本派なので途中から買い損ねていた。いやー、こういう終わり方だったのか。想像をかなり超えていて、素晴らしかった。

ネタバレ

まず、単行本の表紙ですよ。

ココと誰か、というセットで、9巻まででココ組が全員描かれ、10巻でココのみ、最終巻の11巻でヨナのみになる。

この物語が、ココの野望、それもただの野望ではなくヨルムンガンドの名に恥じない大きな野望を実現するための物語であると同時に、戦闘を憎んでいながら戦闘の天才である元少年兵ヨナの成長の物語でもあることを、端的に示していて素晴らしい。

ココが素晴らしい。

ヨルムンガンドを作る程度には天才で、戦場の鉄火場で自分の命すらカードにすることも厭わないハードネゴシエーターで、天然で美人(なのに色気はない)だ。

交渉ってこうだよねー。交渉の席に着くまでに90%以上決まっているのが大事。段取りが全てだ。彼女は武器を武器として使う戦闘能力という点ではからっきしだめだが、武器という威力を背景にした戦闘能力という点では、最強だ。武器商人こそが武器の本当の威力を知っているのかもしれない。

ココ組も、兄貴も、敵さんも、みんなきちんとキャラをたてながら、キャラの強さと構成力の両方で作品世界を組み切っている。非常に精緻なエンターテイメントだと思う。