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見たものと、読んだもの

本間浩輔『ヤフーの1 on 1』ダイヤモンド社/2017

自分の会社以外で、どう言う1 on 1 が行われているのかを知る機会はなかなかないので、為になった。

上級執行役員コーポレート統括本部長、と言う肩書きもあって、「なぜ」 1 on 1 をするのか、と言う意義に焦点が当たっている。「そんな時間作れないよ」と言う人に対するYahooの答えだ。

ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法

ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法

 

メタ認知によって自分をモニタし、自分を自分でコントロールすることの意義は、手を替え品を替えて言われ続けている。とはいえ、その気がない人をその気にさせることは難しいし、その気がある人も正しくできるように導くことは難しい。

そう、自分で考える人を作るのは、個人的には無理だと思っている。

ではどうするか。気づきを与えることはできる。その気づきで、自分の立ち位置を把握することができ、次の課題が見つかっていけば、それは徐々にだが、自分で考える人に近づいていくのではないか。

実は「考える」という定義が難しい。たくさんのHOWを提案できることも「考える」ことだし、何をやるべきなのかというWhatを提案できることも「考える」だし、なぜやらないといけないのかというwhyも「考える」だ。

本来は、Why -> What -> How と下ろしていかないと、MECEではなくなる。ただ、How -> What -> Why とチャンクアップしていくとき、Howしか見ていないと、気付きようがない。本書内の良い例を挙げると:

アーチェリーという競技において、みんなで試合のときに応援しようと決めたとします。そして試合が終わった後に応援の仕方を振り返って改善をしていくと、どんどん、いい応援ができるようになります。

でも、そこで「何のために応援するか」を考えずにいると、「もっと大きな声を出した方がいい」などというように応援のテクニックだけが上達して「そもそも声を出して応援する行為はアーチェリーにおいて本当に得点につながるのか」という根本を忘れてしまいます。もしかしたら、静かに集中したい選手にとっては、よくなったはずの応援が得点を妨げていたということもあるかもしれません。HOWの部分だけに注目して改善を積み重ねると、こういうことが起きるんです。

 (p143)

声を出して応援をすることというWhatに固着してしまうと、それに対するHowしか出てこなくなる。当人たちは一生懸命考えているはずだが、この後半の例のようにそもそもWhatが間違えていると、それに付属するHowは全て徒労だ。

ここでコーチングとして、気づきを渡せる 1 on 1 があれば、最高には違いない。

 

いろんな人に「まだるっこしい」と言われてしまう 1 on 1 だが:

本間:(前略)「ちゃんとした1 on 1をやると、業務時間の全てが研修になる」と言っていましたね。これは名言です。

吉澤:共感しますね。1 on 1 なんて「30分の時間が無駄だ」と言う人も少なくないけレド、本当に有意義な30分なら、それ以外の業務時間でも常に経験学習がまわるし、モチベーションにも好影響があるというわけですね。

(p238)

これなんかすごく同感。極論をいうと、私は業務と研修は分けてもしょうがないと思っている。

日々やる業務それ自体が研修になっているという働き方をしないと、身につかない。習慣こそが最短の道なのだと思う。(まだ読んでいないけど、この辺りが「経験学習」論なのだろうか)

実は私はいまだに、コーチングとティーチングの発動の良い境界線の引き方に悩んでいる。時間のない中で動こうとすると、確かに1 on 1をする機会を作ること自体が難しいし、その意義は最初はティーチングでないと教えられないのではないか、いやいや、そこからコーチングでないとそもそもの意味がないのではないか、と悩むことが多い。

その答えは本書にはない。しかし、この本は 1 on 1 の意義の確認のためにあるので、それは別に本書の瑕疵ではない。

1 on 1の意義を理解ないし、再確認するためにとても良いので、ぜひおためしあれ。