ベラスケス目当てで行ったが、それ以外も面白かった。
Las Meninas見てみたいなあ。プラド美術館に行かないと、かなー。
ちなみにオンラインでベラスケスを目で探すならこちら
https://owlstand.com/roam/6ad2f894-70a2-4654-ab26-3f3c0aebd075
プラド美術館の公式ページ(英語)
まとめ感想
写真でいう被写界深度の魔術師のように見えます。映画でいうと、「セブン」の監督のデヴィッド・フィンチャーの絵作りっぽい。大好き。
王太子バルタサール・カルロス騎馬像 / príncipe Baltasar Carlos de Austria (1635ごろ)
By ディエゴ・ベラスケス - 原版の投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link
細密に描けるからといって、全部を細密には描かずにメリハリつけるよ! というのが好み。一番好みだった、カルロスくんで、説明すると。
顔は高解像度。きりりと引き締まって、ああ、次の王様になるんだなと、わかる主人公感。視線が自然とそこに行くように計算されている。
逆にいうとそのほかはぼんやりとしている。馬だけでなく服装の一部すらもぼんやり。写真でいうとボケ味。でも遠くから見ると(ないし上記のように小さくなった写真でみると)きっちりとした解像度のように見えるマジック。感覚的にはドット絵職人もかくや。また、ぶらぶら美術散歩だったかな、本来は下から見上げる位置に置いてあったということだったので、そんなに混んでいないことをいいことにしゃがんで見たが、確かにこちらの方が自然に見える。
低解像度でも手は抜いてなくて、山々の緑と空な青さは、王太子と馬の茶色との補色関係でとても目立つし美しい。いわゆる、マローネ エ アズーロですね。
「東方三博士の礼拝 / Adoration of the Magi」(1619)
とはいえ初期作品の「東方三博士の礼拝 / Adoration of the Magi」(1619) は、どこに視線を誘導するか、カルロスくんと比較をするとまだフォーカスが甘いように思えて、かわいい。やっぱり、だんだん上手くなるんだね。この時ベラスケスは20歳(1599年生まれなので計算しやすい)
ベラスケス視点
ベラスケスは以下の7作品。ベラスケスは1599年生まれだから、西暦の下二桁に1を足すと良い。今回きたものは、東方三博士の礼拝以外は、脂の乗った三十代。
フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像1635
メニッポス1638 /後述
マルス1638ごろ Dios Marte
筋骨隆々ではないが贅肉はない中年。戦いが終わって、防具など全部脱いだ感じ。ヘルメットの低解像度具合がたまらない。印象派に影響を与えたと言われるとなるほどと思う。
By Diego Velázquez - See below., Public Domain, Link
狩猟服姿のフェリペ4世1632-34 Philip IV as a Hunter
左脚の描き直し跡があんなにくっきりあるとは思わなくてびっくり。
By ディエゴ・ベラスケス - Museo Nacional del Prado, パブリック・ドメイン, Link
バリェーカスの少年1635-45 / The Dwarf Francisco Lezcano, Called "El Niño de Vallecas"
少年と書いてあるが、中国語で侏儒、英語でdwarfとある。顔の表情が、人を小馬鹿にする愚者という顔。ベラスケスはよっぽどこの人が嫌いだったに違いない。
By ディエゴ・ベラスケス - Web Gallery of Art: Image Info about artwork, パブリック・ドメイン, Link
王太子バルタサール・カルロス騎馬像1635/先述
東方三博士の礼拝1619/先述
ベラスケスを離れて:聖ベルナルドゥスと聖母
知らなかったのでおもしろかったのは、聖ベルナルドゥスと聖母。母乳飛ばし。これが、面白いでも、猥雑でもなく、聖なる話として成立する美しさ。
Saint Bernard / Alonzo Cano
By Alonso Cano - Galería online, Museo del Prado., Public Domain, Link
対比で面白かったもの
対比があるのもキュレーションの面白さ。全部をベラスケスってわけにはいかないが、逆に広く取れたりするわけで。こういうの大好き。
ポートレート対決
フェリペ4世の近辺に置いてあるものも、比較のために良い展示。
アントニス・モル「フアナ・デ・アウストリア」ヴァン・ダイク「レガネース侯爵ディエゴ・フェリペ・デ・グスマン」が並んでいるのだが、服の黒の影の付け方が素晴らしい。写真だと細かいところが潰れるなあ。
アントニス・モル「フアナ・デ・アウストリア」Juana de Austria / Anthonis Mor
By アントニス・モル - www.museodelprado.es/coleccion/obra-de-arte/doa-juana-de-austria/d3d06131-46a4-4331-878f-786a3a8b5736, パブリック・ドメイン, Link
ヴァン・ダイク「レガネース侯爵ディエゴ・フェリペ・デ・グスマン」/Anthony van Dyck "Diego Felipe de Guzmán, Marquis of Leganés"
By アンソニー・ヴァン・ダイク - ywEF4SyuI8qLFQ at Google Cultural Institute maximum zoom level, パブリック・ドメイン, Link
哲学者対決
ルーベンスのを見て、それに「似せず」に書いたという学芸員の方の言い方だった。ルーベンスは「泣く」を見せるための構図とライティング。ベラスケスは、シュッとだって明るい全身を見せる。貧乏哲学者のステレオタイプが決まって来た的な解説があったが、うーん、そこはピンとこなかった。
ルーベンス工房の「泣く哲学者ヘラクレイトス」1638ごろ / Crying Heraclitus
By ピーテル・パウル・ルーベンス - http://web.madritel.es/personales2/jcdc/presocraticos/pinac04_heraclito_democrito.htm, パブリック・ドメイン, Link
wikipediaによると
その著作の難解さと厭世観から「暗い哲学者」、あるいは、「泣く哲学者」と呼ばれる。また、ヘーゲルなどの思想の源流として、弁証法の始まりを担う人としても考えられている。
それで泣いているのか。個人的にルーベンスは笑っている奴の方が好き。
ベラスケスの「メニッポス / Menippus」1638:
陽気で全身に目がいく。後ろの甕の適当具合にも
こっちは笑っている。
wikipediaによると
メニッポスは(中略)深刻なテーマを嘲笑の精神で論じ、とくにエピクロス主義とストア派を攻撃して楽しみ、ストラボンとビュザンティオンのステパノス(Stephanus of Byzantium)はメニッポスのことを「 σπουδγελοιο, Spoudaiogeloion(まじめな道化師)」と呼んだ。
となると、からかいの笑いかな。
聖家族対決
聖アンナが中心で、泥臭くも暖かいルーベンスと、家族3人と小鳥と犬で静かに黒背景基調にはっきりとした解像度のムリーリョ。どちらも静かで暖かい。
ルーベンス「聖アンナのいる聖家族」1630ごろ / Peter Paul Rubens - The Holy Family with St Anne
By Peter Paul Rubens - Web Gallery of Art: Image Info about artwork, Public Domain, Link
ムリーリョ「小鳥のいる聖家族」1650ごろ Sagrada Familia del pajarito / Bartolomé Esteban Murillo
De [2], Dominio público, Enlace
蛇足: 今回来ていないベラスケス
これ、生で見たい。Las Meninas/ラス・メニーナス (1656年)
By The Prado in Google Earth: Home - 7th level of zoom, JPEG compression quality: Photoshop 8., Public Domain, Link
作成年をみると、最晩年ですね。