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ルーヴル美術館展 肖像芸術 ―人は人をどう表現してきたか@国立新美術館

ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

全体的にいうと、どう変わって来たのか、という変わり方への補助線が少なくて、単純に編年体的な並び方になって来たような気がする。もちろん「記憶のための肖像」(葬式系)→「権力の顔」→「コードとモード」→「アルチンボルト」 

もしかしてヌード展のように、現代美術を持ってこないと「肖像画」をなかなか描ききれないのかもしれない。

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1. 記憶のための肖像

古代エジプトとか古代ローマとかは、そうね、あるね、という感じなのでここでは触れないが、一番びっくりしたのはこれ。

#21 ブルボン公爵夫人、次いでブーローニュおよびオーヴェルニュ伯爵夫人ジャンヌ・ド・ブルボン=ヴァンドーム (石)

Jeanne de Bourbon-Vendôme / 作者不明

Jeanne de Bourbon-Vendôme

Jeanne de Bourbon-Vendôme | This may be the creepiest sculpt… | Flickr

Attribution-ShareAlike 2.0 Generic

顔は死相、胸にはウジがわき、腹は腸がはみ出るのをなぜ作るんだろうという驚き。

 

2. 権力の顔 / ナポレオンコーナー (来ていないのも含む)

英雄といえばナポレオン。3つも来日。時系列で追うと面白い。

#43 Bonaparte on the Arcole Bridge on 17 November 1796, 1801 / アルコレ橋のボナパルト

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By Antoine-Jean Gros - The Yorck Project (2002) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., Public Domain, Link

1796年のフランス革命戦争で、ナポレオン率いるフランス軍が、神聖ローマ帝国を破るという象徴的なアルコレ橋の戦いの「英雄的」ワンシーン。本当はぐちゃぐちゃだったので、光のあるうちにナポレオンが軍旗を持って橋を渡るなんてできなかったそうだけど。

来てないけど:Napoleon crosses the St. Bernard, by Jacques-Louis David (Berlin), 1800 /『ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト

Jacques-Louis David / ジャック=ルイ・ダヴィッド

1800年にアルプスを越えてイタリアに侵攻。

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By Jacques-Louis David - The Yorck Project (2002) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., Public Domain, Link

どんどん神格化が進んでいく。

来てないけど:ナポレオンの戴冠式

ルーヴルでナポレオンといえばこれ。1804年に行われた戴冠式

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By Jacques-Louis David - The Yorck Project (2002) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., Public Domain, Link

#44 戴冠式の正装のナポレオン1世の肖像

Anne-Louis Girodet de Roussy-Triosonの工房

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By Marie-Victoire Jaquotot - Unknown, Public Domain, Link

#45 戴冠式の正装のナポレオン1世

Napoléon Ier en costume de Sacre 1813 Marbre

クロード・ラメ / Claude Ramey

Napoleon Ramey Louvre LP456.jpg
By Marie-Lan Nguyen - Own work, Public Domain, Link

白貂のもふもふとか、刺繍のミツバチとか、そういうのまで大理石彫刻されるってすごいなあという小学生並みの感想。アウグストゥスなどの神っぽい。

来てないけど:Napoléon Bonaparte abdicated in Fontainebleau

フォンテーヌブローで退位するナポレオン

作者:Paul Delaroche / ポール・ドラローシュ

英雄すぎないのが素敵。無念と怒りが静かに伝わってくる。

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By Paul Delaroche - 2. Museum der bildenden Künste 1. fak09.uni-muenchen.de/Kunstgeschichte, Public Domain, Link

 

この画家は、昨年とっても話題になった「怖い絵展」の「レディー・ジェーン・グレイの処刑」を描いた人でもありますね。 

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By 不明 - Uni München, パブリック・ドメイン, Link

 

この後に、デスマスクもあるのだが、これは「肖像」という美術というよりも、歴史的価値という別のカテゴリーのような気がする。 

3. コードとモード (aka 美人画)

#95 エカチェリーナ・ヴァシリエヴナ・スカヴロンスキー伯爵夫人

個人的に、今回の美術展の一番美人さん。この頃って、きっと美人に描いてもらうこと自体が意味あることなんじゃないかと思った。

Élisabeth-Louise Vigée-Le Brun - La comtesse Skavronskaia (1796).JPG
By Sammyday - Own work, Public Domain, Link

 

エピローグ:アルチンボルト

#111 『春 / Spring』(1573)、ルーヴル美術館、パリ

ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo)

Giuseppe Arcimboldo - Spring, 1573.jpg
By ジュゼッペ・アルチンボルド - 不明, パブリック・ドメイン, Link

昨年アルチンボルトが色々来ていたのだけど、見ることができなかったので、なんかリベンジできた感がある。この描き方は面白い。けれど、飛び道具すぎる気がする...