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見たものと、読んだもの

トム・ティクヴァ『ザ・バンク 堕ちた巨像』(原題 The International) 2009米英独仏

ハードボイルドでガンアクションがあって、古いクライムサスペンスの良いところを、現代ならこうなるというアップデートがされていて、とてもよかった。

キャスティングも含めて 原題である The International であり、グローバルであることが当たり前である今、作られる必然性があったように思う。

 

ご都合主義のところが極小に抑えられていて、かつ、その部分は、ここまで頑張ったらこういうご褒美もあるよね、という納得感があった。

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なんか、いい予告編がないので困る。

 

色々伏線もあるし、その人がそうでないといけない理由もあるので、頭に予備知識を特に入れずに、ご覧になってくださいませ。

 

見た方には。私が好きなこのシーンを二つ。一応隠します。

 

「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館」での銃撃戦。

流石に、実物は使えないので、原寸大セットを作ったらしいこのシーン

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Solomon R. Guggenheim Museum / ソロモン・R・グッゲンハイム美術館

Guggenheim museum (4374514480).jpg
By KimonBerlin - https://www.flickr.com/photos/kimon/4374514480/, CC 表示-継承 2.0, Link

設計は、フランク・ロイド・ライト

場所は、マンハッタンのアッパーイースト。

収蔵物は、近現代美術。だいたい20世紀もの。カンディンスキーピカソモディリアーニとか。この「カタツムリ」感、実際に訪れてみたいな。

 

苦い苦い独白

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このてのお話って、主人公の思い込みなのか、実際にある話なのかが一見してわからないという、没入しづらいことになりやすい。主人公と敵対する別の警察などからは、あからさまにめんどくさい、関わりたくないというシーンもできてしまうし、それがないとリアリティもないし。そこをナオミ・ワッツ演じるホイットマン検事補がずっと協力することで、それを回避しようとして、まんまと成功している。

 

いい味を出していたのが二人。

ジョナス・スカルセン(IBBC頭取)。

「別にミサイルを販売することで儲けようなどとは思っていない。吐き気がするかもしれないが、銀行の本質は、負債をコントロールすることなのだ」

演じるのは、Ulrich Thomsen/ウルリク・トムセン。デンマーク人。北欧の人は、流暢に英語を話すが、それでもちょっとアクセントがある。そしてそのアクセントが、国際的銀行っぽさを表していて良い。一昔前ならニューヨーク訛りの米国語だろうに。

 

ウィリアム・ウェクスラー

「私も一度は君のような人間になろうとした。誠実で、強い信念と意志を持った男。だが、挫折から立ち直るのは難しい。人生は予測を超えたことが起きる。知らぬ間に影響を受け、それまでとは違う自分に変わる。そして最後は、理想の人間像から、かけ離れてしまう」

演じているアーミン・ミューラー=スタールArmin Mueller-Stahlは、実際に東ドイツの人。正確には、生まれたのはワイマール共和国の時。ナチスドイツになる直前のドイツ。出生地のプロイセン州ティルジットは、第二次大戦後にソビエトに併合され、ロシアのカリーニングラード州ソヴィェツクになっている。アテガキのようなキャラクター造形。

 

私は割と構造がきになる人なんだけど、キャラクターの造形にリアリティがあると、そこにも引き込まれてしまうね。