ものすごくしばらくぶりに再読したのだが、こんなに哀愁を帯びたお話でしたっけね。
というか、表題作の『笑う大天使』もそうなんだけど、後日談である『空色の革命』
『オペラ座の怪人』『夢だっていいじゃない』の哀しさたるや。
いいところのお嬢ちゃんが、猫かぶるのに疲れて授業を抜け出してアジの干物を焼いて食べる。そういう馬鹿馬鹿しいような話が出たりとか。
でもね、そういうコミカルさはお化粧で、通奏低音として流れているのは、自分に素直で、かと言って相手にはそれを押し付けず、好きな相手が幸せであることを一途に祈るという情感で、そしてそれが昭和のお話のようにウエットではなくサラリとちょっとドライめに描かれているところ。
いや、情というよりも哀切に近いかも。
哀しいとは。
自分を出して、自分がなりたい自分になるぞ、と自ら道を切り開かないタイプの人がいる。自分よりも大事にしたい人がいて、その人が幸せであったら、自分のことは二の次でいい、というような。
とあることがきっかけで、その気持ちに気がついたりする。
特に、後日談は、それに気づく物語だ。
気づくのが幸せとはいえない物語が多い中で、素直に幸せな気分にさせてくれる。