cafe de nimben

見たものと、読んだもの

小川一水『天冥の標』(てんめいのしるべ)早川書房/途中経過6巻まで

残念ながら、今読むべき作品。 今のアメリカの状況が、タイミングが今だと叫んでいるからだ。それが残念でならない。もっと遠くの世界の話として読みたかった。しかし、それだけに、強く入ってくる物語だ。

《天冥の標》合本版

《天冥の標》合本版

 

もちろんそれを意図した物語ではない。現在のCOVID-19やアメリカの暴動についての本ではない。初出が2009年、最終巻が発売されたのが2019年10巻17冊におよぶ大河SFである。

今のところ、第6巻9冊目『宿怨』を読み終わったところ。

全体のネタバレ感想は、完走してから書く予定なので、どの巻に何が書かれているのかはまだ書かない。ただ、生きようとする人の業が、別の人の業を呼び寄せ、踏みにじり、そして踏みにじっているものはそれすら気づかず、踏みにじられている方は踏みにじられている以上に歪んでいき、時に爆発する様は、この作品をただのスペオペでもない重厚なものにしている。そしてそれは、スペイン風邪と大不況と人種差別暴動が同時に発生した、原作スティーブン・キング、監督クエンティン・タランティーノとまで揶揄される2020年アメリカの現状を、オーバーラップさせながら読んでしまう自分がいる。

書いていることの深層はかなり重いが、語り口はライトで世界観がわかってくると、ページをめくる手が止まらなくなることは、うけあう。

一回、第1巻に戻ってから、第7巻に行こうかな。

 

SFの、ノンフィクションの良いところは、こういう悲劇ですら、俯瞰して見ることができ、キャラクターに寄り添うことで自分のことのように感じることができることだ。なので、ある意味苦痛ではあるが、快いという、うまく言葉に表すことができない複雑な感情を浮かべているところだ。

読み終えたらまた別の感情になっているかも知れない。しかし、読み進める快楽と、終わってしまう悲しさと、読むことによって変容するであろう自分の心がどうなるのか。それもまた、読書の醍醐味で、それに値する本に出会えたことは、非常に嬉しいことだ。

 

リッチー・スミス『ジャドヴィル包囲戦 - 6日間の戦い-』2016

初めてUNのPeace Keeper としてコンゴに派兵された158名のアイルランド兵は、3,000名の敵に包囲されて孤立無援という絶望的な状況に置かれた指揮官は、どう決断するのか? という、実話をベースとしたお話。


The Siege of Jadotville - Main Trailer - Only on Netflix 7 October

 

時代背景

時は1961年。1月に就任したケネディ米大統領主導で、4月には米国がキューバに侵攻、失敗するピッグス湾事件発生。キューバ敵の敵は味方として、ソ連との関係を深める。喉元にソ連から匕首を突きつけられる状態のアメリカは緊張を高め、翌1962年のキューバ危機へと繋がる。そういう、第三次世界大戦の匂いが濃厚に漂う、そんな時代。

前年の1960年はアフリカの年と言われ17か国が独立を宣言。この中に、ベルギーの植民地だったコンゴ共和国がある。

コンゴ動乱略年表:この映画の時点まで

1960-1965年にわたるコンゴ動乱は、米ソ代理戦争ともなり、動乱中10万人が殺害されたとみられる悲惨な内戦だ。

 

1960年6月:ベルギーからコンゴ共和国が独立。中央政府が機能せず、治安が悪化。

1960年7月:南部のカタンガ州がカタンガ国として分離独立を宣言。

国連はカタンガの独立を認めず。

となって、内戦状態に突入。 

1960年8月:カタンガ州の北側に位置する南カサイ国も分離独立を宣言。

1960年8月:ルムンバ首相主導で南カサイに進軍。民間人の大量虐殺。

1960年9月:カサブブ大統領が、南カサイ大量虐殺を理由にルムンバ首相を更迭。

1960年9月:陸軍のモブツが無血クーデター、実権を握る。ルムンバ首相拘束。

 

1961年1月:ルムンバ元首相が処刑される。

1961年2月:モブツにより、カサブブが大統領に再任命。

1961年2月:チョンベは立場の強化のために、外国人傭兵を輸入。国連平和維持軍と傭兵隊との緊張が高まる。

1961年6月:オブライエンがカタンガの州都に着任

1961年7月:国連軍が約20,000名に増員

1961年8月:国連軍が、カタンガ憲兵隊の武装解除、外国人傭兵の逮捕/追放を開始

1961年9月:国連軍が、カタンガ傭兵部隊の拘留、カタンガ国政府幹部逮捕を目指す、モーソー作戦開始。「ジャドヴィル包囲戦」

1961年9月:コンゴ動乱の停戦調停に赴いていた国連事務総長ハマーショルド、飛行機事故で死去。

(動乱はまだまだ続く)

 

映画の感想

映画で描かれるのは、初めて国連平和維持軍として派兵されることになった実戦未経験のアイルランド軍がどうなるのか?

無能な上司によって適切なサポートが受けられない理不尽さ

その中で頑張るアイルランド

というところだ。

実戦未経験ということを強調するためか、隊員たちのちょっと牧歌的なところが描かれているのは、対比上おもしろい。

 

英雄

主役:パット・クインラン少佐 Commandant Pat Quinlan

この人、スーパーマンだよね。実戦未経験、戦史書は全て読破。頭でっかちで教条的なエリートかと思ったら、ヤバさへの嗅覚、臨機応変な対応、命がけで部下を守る、敵の嫌がることを確実にこなして足止めする。最後まで諦めない。まあ、賢すぎて、ボスマネージメントに失敗するんだけれど。

しかし、劇映画としては、淡々と書きすぎでは? もうちょっと英雄的に書いてもバチは当たらないのではないだろうか。かっこいいんだけど、ちょっと感情移入しづらい。

ある程度なんでもできるが普通の人で、大変な状況の中で乗り切るといえば『プライベートライアン』のトム・ハンクス演じるミラー大尉なのだが、ああ描くにはもっと尺が必要かも。

ただ、事実をベースにしているので、過剰に盛ることはしなかったのかもしれない。

悪役がすっきりしない

チョンベ カタンガ大統領は割とステレオタイプ的な悪役(悪くて強い敵)として描かれるが、描写は少ない。現地の傭兵隊長は、したたかで強くてかっこいい敵として描かれる。となると、明確な悪役は?

事実上、悪役は、カタンガ軍というよりも、国連軍のトップにあたるオブライエン博士だ。

戦略レベルの失敗がオブライエン博士(Conor Cruise O'Brien  :のちにアイルランド郵政大臣など歴任)によってもたらされた。彼は自己愛が強く、国連軍アイルランド舞台を見捨てる卑怯で無能な上司という悪役を担わされている。無能な味方と、有能な敵、どっちが手強いか、というのは、創業と守成どちらが難しいかという話と同じくらい論争のある話ではあるのだが。

敵よりも味方を悪役にするのは、劇映画としてはちょっと弱かった気もする。爽快感という意味で。

ブラッカイマー映画だったら、そういう中でも戦った英雄的なアイルランド軍という様に描かれるんじゃない?

ああ書かざるを得なかった何かがあるのだろうか? そう考えてオブライエンを深堀してみた。

オブライエンを深堀り

イギリスのガーディアン紙によるオブライエン批評だが

He had stirred up a hornets' nest internationally. One of the most vocal critics was Paul-Henri Spaak, then Belgian foreign minister and now remembered as an architect of European unity. "Who is Conor Cruise O'Brien?" asked Harold Macmillan, and answered his own question: "An unimportant, expendable man." Pressures on him, on the UN and on the Irish government multiplied. Hammarskjold was forced to desert his protege, then died in a plane crash and his successor, U Thant, formally agreed to a request from Aiken that O'Brien be released from further UN duty. Almost immediately, he announced his resignation from Irish government service.

Conor Cruise O'Brien | The Observer | The Guardian

要約:

彼は国際的にスズメバチの巣(=コンゴ)をかき混ぜた。当時のベルギー外相は彼の批判の急先鋒で「コナー・クルーズ・オブライエンとは誰だ? 重要ではない、使い捨ての男だ」と容赦ない批判をぶつけ、彼と国連とアイルランド政府に対してプレッシャーをかける。国連事務総長はオブライエンを切り捨て、その後飛行機事故で亡くなる。次の国連事務総長は、オブライエンを更迭する。

と、国際的な批判を浴びた人物として描いている。

まあ、ベルギーから見たら敵だからねぇ、こういう言われ方をするのはしょうがないかも。と言ってもハマーショルド国連事務総長は守ってあげないといけないんじゃないかな?

その後、このコンゴ動乱のことをオブライエンは 1969年に"To Katanga and Back" という本にまとめている。

一応、ちょっとだけ擁護しておくと、国家主権の立場から、軍事行動を行うのは非常に悪手ではあるので、行動が縛られるのは政略上仕方がない。また、ハマーショルド国連事務総長に手足を縛られてどうしようもなかった、という説もあるので、同情できるところもある。

しかし戦略レベルでは、投入した部隊が安全な状態にするのは必須。補給線が途絶えて包囲されやすいところに部隊をおくというのは、味方の死体を生産する行為であって、戦略上おかしいと言わざるを得ない。ただ、その戦略レベルは、オブライエンの範疇だったのか、アイルランド軍の範疇だったのか、その辺りは描かれていないので不明だ。実戦未経験だったのは前線の部隊だけではなく輜重部隊もだったとすると、一概にオブライアンだけを責めるのはフェアではない可能性もある。(まあ、そこまで確認する気力はないのだが)

包囲戦にフォーカスするならしょうがないのだが、オブライエンを真ん中に据えて、アメリカ、ソ連、ベルギー、カタンガコンゴに振り回されながらも前に進んでいくという物語だと、もしかするとオブライエンは泥臭いけれどかっこいい主役をはれたかもしれないね。立場が変わると見えるものも違う。

参考:コンゴ動乱略年表:もうちょっと詳しく&終わりまで

1960年6月:ベルギーからコンゴ共和国として独立。大統領に保守派のカサブブ、首相に革新派のルムンバ就任。このまま事実上の支配権を持ち続けたいベルギー(&コンゴ保守派)と、独立したのだからその構造を打破したいコンゴ革新派との間の軋轢が表面化。カサブブとルムンバの対立により、中央政府が機能しない。治安が悪化。ベルギーは自国民保護を理由に派兵。要所を制圧。

1960年7月:ベルギーの支援を受け、チョンベが南部のカタンガ州をカタンガ国として分離独立を宣言。チョンベはカタンガ国大統領を名乗る。カタンガマンハッタン計画の材料となったウラン鉱床などでコンゴ共和国の中ではかなり豊かな地域だった。

国連が事態収拾に動く。

1/ コンゴ共和国からのベルギー軍撤退要請、2/ ハマーショルド国連事務総長コンゴへ派兵する国連軍編成の権限付与するという安全保障理事会決議143が可決。国連軍の派兵が決まった。

とは言っても国連が主権国家に軍事介入をすることは好ましくないと、あまり積極策ではなかった。

とはいえ、当然カタンガは面白くないので、ベルギー人将校や傭兵による武力強化を行う。

ルムンバ首相は国連の消極策に失望し、ソ連に近づき、武器や物流支援を取り付ける。アメリカのアイゼンハワー大統領はコンゴソ連に近づくことを快く思わない。

1960年8月:カタンガ州の北側に位置する南カサイ国も分離独立を宣言。

1960年8月:ソ連軍の軍事支援をうけ、ルムンバ首相主導で、南カサイに進軍。民間人の大量虐殺。

1960年9月:カサブブ大統領が、南カサイ大量虐殺を理由にルムンバ首相を更迭。

1960年9月:陸軍のモブツがクーデターを起こし、実権を握る。ルムンバ首相拘束。モブツはこれを契機にアメリカとの関係深化。

1960年11月:ルムンバが軟禁から脱出

1960年12月:ルムンバ再び拘束。

1960年12月:ルムンバ派が反乱軍政府樹立。(ギゼンガ政府)

1961年1月:ルムンバ元首相が処刑される。(劇中の描写はないが、一度埋められた遺体を硫酸で溶かしたらしい)

(1961年1月:アメリカ大統領にケネディ就任)

1961年2月:モブツにより、カサブブが大統領に再任命。

1961年2月:チョンベは立場の強化のために、外国人傭兵を輸入。国連平和維持軍と傭兵隊との緊張が高まる。

1961年6月:チョンベ、一時逮捕、拘留。

1961年7月:国連軍が約20,000名に増員

1961年8月:国連軍のランパンチ作戦により、カタンガ憲兵隊の武装解除、外国人傭兵の逮捕/追放

1961年9月:国連軍は、武力行使せずにカタンガの傭兵舞台を拘留するためのモーソー作戦により、カタンガ国政府幹部逮捕を目指す。「ジャドヴィル包囲戦」

1961年9月:コンゴ動乱の停戦調停に赴いていた国連事務総長ハマーショルド、飛行機事故で死去。

1961年11月:国連事務総長ウ・タント就任。米ソの了解を取り付け、コンゴ動乱に積極的に介入へ。(国連安保理決議169号:カタンガ国を認めず、コンゴ中央政府を強力に支援)

1961年12月:国連による調停も、事務総長ウ・タント経済制裁を課したことで、チョンベが交渉から撤退。

1961年12月:南カサイ国消滅。

1962年1月:ギゼンガ逮捕により、ギゼンガ政府崩壊

 

1962年12月:チョンベ大統領が、キトナ協定に署名。カタンガの分離独立放棄へ。が、挑発行為は続ける。逆に、カタンガの最大の支援国であるベルギーですら支援をためらう様に。

1962年12月:コンゴ国連軍がカタンガを占領。停戦合意。チョンベは北ローデシアに逃れる。

1963年1月:コンゴ国連軍が、チョンベ派の最後の地点を占領。カタンガ国の事実上の消滅。

1964年1月:東部のクウィル州で反乱。中央から東部地域に飛び火し、より大規模なシンバの反乱となる。

1964年7月:USとベルギーの承諾を受け、コンゴに傭兵部隊創設。通称ワイルドギースなども含まれる。(映画『ワイルド・ギース』1978英の元ネタ)

1964年8月:新憲法制定。コンゴ共和国からコンゴ民主共和国へ。カサブブ大統領がチョンベを暫定首相に任命。

1964年11月:ドラゴン・ルージュ作戦。ベルギーのパラシュート部隊がシンバ反乱軍から1800人以上の人質を奪還する作戦に成功。東部の暴動はひと段落。

1965年11月:モブツが再びクーデター。カサブブ更迭、モブツが国家元首就任。反対派を弾圧、鎮圧。コンゴ動乱終結

後に、モブツは国名をザイール変えて独裁を続ける。なお、「キンシャサの奇跡」は、1974年に行われたザイールの首都キンシャサで行われたボクシングの世界統一ヘビー級タイトルマッチ。落ち目の挑戦者モハメドアリ(当時42歳)と24連続KO勝ちで25歳のチャンピオン、ジョージフォアマンと戦い、劇的な逆転KOでアリが戴冠する試合のことだ。


1974 10 30 キンシャサの奇跡 モハメド・アリ vs ジョージ・フォアマン

2005年:ジャドヴィル包囲戦に参加したアイルランド部隊の名誉回復。

みなもと太郎『風雲児たち』と、閉塞感

みなもと太郎が描きたいのは幕末なんだけど、幕末を描くためのバックグラウンドがわからないとなんでこのキャラクターたちがこういう動き方をしたのかわからないから、そうだ、わかるようなところから描いていこうぜ、ということで関ヶ原の戦いから描き始めた、大河歴史まんが。

関ヶ原から幕末の志士たちが生まれた位までが、全20巻(完結)

風雲児たち全20巻 完結セット (SPコミックス)

風雲児たち全20巻 完結セット (SPコミックス)

 

風雲児たちの完結後の本編「幕末編」が現33巻で続刊中。

風雲児たち幕末編 コミック 1-30巻 セット

風雲児たち幕末編 コミック 1-30巻 セット

  • 発売日: 2018/02/27
  • メディア:
 

 1巻のはじめが、1845年。

33巻が終わっても、まだ岡田以蔵は生きているし、松平容保京都守護職に着任しようかという1862年文久2年)。単純計算で17年を33巻。なので、明治改元(1868年)まであと10巻は少なくともかかりそうなペースですねえ。ドラマ性考えると、20巻かかっても不思議ではない。

 

細かいところまでフィクションも交えて流れを描いていっているので、幕末がお好きな人にはおすすめです。

話の芯に、関ヶ原の合戦以降の、徳川、薩摩島津、長州毛利、土佐山内、会津松平の因縁もある。しかし私は、鎖国をして、他の国との交易をしようというのに家康が決めたという前例主義/権威主義でそれが続いていき、それではいかんと模索し始めた人々をほとんど蹂躙して鎖国体制を守っていたことに対する憤りこそが、通奏低音として流れているように思う。

もちろんそれは、結果を知っている未来人だからこそ「ああやっておけばよかったのに」という後付けの知恵かもしれないが、大黒屋光太夫高田屋嘉兵衛や尚歯会メンバーなど、彼らの知恵と経験を生かしていれば、オランダ館長のアドバイスをもっと早くに聞いていれば、もっと違った、少なくとももっと血腥くない開国はあったかもしれないなあと思いながら読んでいます。

ただ、佐久間象山がいうように、目を覚まさせるために、あえてという手段を取らないといけなかったかもしれないので、また別の血生臭いルートになっていた可能性も捨てきれないので、歴史のifはなかなか難しいところですが。

幕末編は、NHK大河ドラマ龍馬伝』がお好きなら、こちらもお好きかも。

 

 

 

「里崎指数」と言う盗塁についての新指数提案が面白かった

捕手の指標で、盗塁阻止率と言うのがある。盗塁を阻止した数÷盗塁を企画された数で表す。10回企画されて、5回刺したら、5÷10=0.500で、盗塁阻止率.500と言う。

そこに、元ロッテマリーンズの名捕手里崎が、それはおかしくないか、盗塁させないのが大事で、それは投手にも責任があるんだから、別の指標を作ってはどうだろうと日刊スポーツで提案したのが、里崎指数だ。

www.nikkansports.com

里崎指数は、盗塁を企画された数÷投手と捕手のコンビの投球イニング数。

つまり、1回盗塁を企画されるのに何イニングかかるかと言う数値で、数が多いほど、走ろうとしても走られないイニング数が長いと言うことで、盗塁の予防が優秀と言うことになる。

が、待てよ、と。

野球が結果のスポーツであるならば、例えばどんなに走られても全部刺殺してしまえば、それは試合の結果には好影響であろう。であれば、それを全体で見る必要があるのではないかと。

そこで、「里崎指数」で利用された元データを利用して、上記の投球イニング数÷盗塁を許した数と言う指標を作ってみた。

f:id:nimben:20200517160501p:plain

この指数の最優秀バッテリーは、青柳-梅野(Tigers)

青柳-梅野(Tigers) 131.33

という数値となる。

これを見ると、バッテリーとしてTigers青柳-梅野コンビが桁違いに良い数値。

最優秀の理由は、盗塁阻止率の高さ

盗塁を1つしか許していないためだ。

8回走られて7回刺殺するという、盗塁阻止率が.875と非常に良いためである。

では、梅野捕手がすごくいいのかというと、このランキングの母数としてもう一度出てくるのは西投手とのコンビだが、こちらは盗塁阻止率が.364と、青柳投手とのコンビニ比べるとそんなに良くはない。11度走られて4回刺し、しかし7回許しているのだ。

となると、コンビとして青柳-梅野は最優秀だが、梅野捕手単体で最優秀とは言えない気がする。

捕手として優秀なのは、會澤か(Carp)

盗塁に強いバッテリー Top5 の残り4組は、

床田-會澤(Carp) 69.83
九里-會澤(Carp)57.50
今永-伊藤光Baystars)35.44
大瀬良-會澤(Carp) 34.67

Top5のうち、3回名前が出てくるCarp會澤捕手が最優秀と言えるのではないか

#ここには出てこないが、そもそもローテーションピッチャーとこれだけ組んで試合に出ることができると言うこと自体で、信頼が厚いといえる。この19組の中で捕手としては會澤がトップの3組で登場というのもある。Hawks甲斐捕手も3組で登場。

會澤捕手が強いのは、予防。

里崎指数のTop5は

床田-會澤(Carp) 69.83
九里-會澤(Carp) 57.50
千賀-甲斐(Hawks) 22.54
今永-伊藤光(Baystars) 21.27
大野雄-加藤(Dragons) 18.04

このTop5で2回登場。数字もこのTop2が三位以下と比べ段違いに良い数値。

ちなみにこの里崎指数Top2は、どちらも2度走られて2度成功されているのというのはちょっと面白い。

盗塁阻止率でいうと、大瀬良と組んだ.500の同率6位が最高なので、ここは最優とは言えない。

盗塁阻止率

盗塁阻止率でみると、Giantsが面白い。山口投手と組んだ小林捕手、メルセデス投手と組んだ大城捕手と、捕手を違えてTop5に2回出てくる。ただ、盗塁を企図された数は9回と13回と平凡なので、走らせないよりも、走ったら殺すという戦略のようにも見える。

ちなみに盗塁阻止率のTop10で名前が二回出てくる捕手は、Lions森捕手(六位と九位)、Buffaloes若月捕手(三位と十位)だけ。盗塁阻止率が捕手だけで決まるならば、もうちょっと上位に固まってもいい気もする。2018年日本シリーズMVPで「甲斐キャノン」の異名をとった甲斐捕手の盗塁阻止率が8位、16位と17位なのはちょっと意外。もっと高い位置で固まっているかと思ったので。

ただ、盗塁阻止率は母数である盗塁企図数が、最大でも17なので、あんまり割合でいうのは意味が無いような気がしなくも無い。意味があるとすれば、年間通算の、球団別か、捕手別か、投手別のような気がしなくも無い。盗塁阻止は派手だから面白いんですけどね。

 

と言った感じで、数字をいじって見てみるというのは、なかなか面白かったです。

野球はデータのスポーツなので、調べればデータが公開されているので、頭の体操にいいですね。

いわゆる「なろう」小説を色々読んでみた

なぜ「なろう」がそんなにバカにされるのか、よくわからなかった。ので、読んでみることにした。

 

考えられる嫌われる理由って、二つある。

一つは、表現が稚拙であること。

ま、これはありえる。編集者や校閲者のフィルタを通していないものが対象になる。びっくりするような誤字誤植という細かいところや、物理法則などをその物語世界の中で利用できる説明なく敵に不都合に自分に好都合にネジ曲がったりするという世界観的なものだったり。こういうのは私も好きではない。

 

二つ目は、「都合が良すぎる」ということ。

物語内人間関係やラッキーすぎる展開という意味で、「都合が良すぎる」というのは、それは語り口に対する好みによるかもしれない。それを言ったら、ハリウッドブロックバスター映画も、池波正太郎時代劇も見ることができない。そもそも現実から目を背けて別な世界に浸るのがフィクションなんだから。

 

ということは、「なろう」にも、私の好みの作品もそうでないのもあるってことだな。

ここ最近やたらとアニメ化される印象もある。やたらと取り上げられるということは、そろそろジャンルの終わりなのかもと思わなくはないが、どうなんだろうね。

 

ざっと読んでみた印象。 

世界観がジェネリック

いわゆるゲームファンタシー由来が多い。古くはJRRトールキンの『指輪物語』以降にファンタシーは始まり、ここに数多のフォロワー作品とゲーム化メディア作品とそれを下敷きにしてという繰り返しの歴史の中で、ファンタシーの土壌ができあがっていると思う。

つまり、中世あるいは近世ヨーロッパに近い文明で、ゴブリン、エルフ、ドワーフなどの、ほぼ人間や、ドラゴン(中国の龍ではない)などがいるファンタシー世界。

言語はあまりジェネリックな感じはしない。トールキンの様に言語まで開発するというのはハードコアにすぎるが、その言語を話すにあたっては、それまでの1000年くらいの文化背景があるはず。ヨーロッパもドイツ風だったりフランス語風だったり、今一つどの言語系かははっきりした指針がないものが多い。

割と現代日本背景のもの、例えばバレンタインのチョコレートとかの風習があったりすることも多い。おそらく蔑称として「なーロッパ」という言い方もあるらしいことがわかった。

ゲーム的解釈の一般化

読者に求められる一般常識として、「自分には自分のレベルと得意とするスキルが見える」「そのスキルは経験値を積むことによって、レベルが上がる」がある。

これには戸惑った。

なぜなら、レベルが上がると逆にできなくなることがあったり、そもそも何に強いのか、どうしたいのか、何が自分に合っているかということがわからないのが人生だから。ゲームでは当たり前と私も思う。しかし、なんで小説でないといけないのかと突き詰めた時、ゲームではこぼれ落ちているその機微を書くというポイントって大事なないのかな、と思っていた。多分それは、私がこの読者ターゲットではないということなんだろうなあと思うので、しょうがないかも。

貴族

貴族は、差別主義の無能な敵か、正しく権力を使う味方か、のどちらかで描かれる。

特に異世界転生ものでは、その能力を持って生まれたが、大体は平民であり、能力がわかる味方と一緒に世界をよりよくするか、無能な差別主義者を滅ぼして世界をよりよくするかという二択のことが多い。異世界に行くということは、現代日本の知識をある程度持っていくことが多いから、多様性を当たり前の善とし、それを無知が踏み潰すことに対して、嫌悪感を持つ主人公が多い気がする。まあ、現代日本の感覚でいうと当たり前か。

男性主人公は割と草食。

ハーレム展開の場合も結構あるが、女性から慕われても割と押し戻す感じが多いかも。仲はいいが、恋仲になるかといえば、そうとも限らない。みんなとそれほど深くはないが、みんなときゃっきゃできている感じがいいというか、どちらかというと家族愛とか同族愛に近いというか。恋愛至上主義的な感じはないかな。恋愛の楽しさと毒の両方を、みたいなことはあんまりないかも。

もちろん思春期特有とも言える男にとっては無邪気な、女にとっては無邪気だからって許されるのかというボーダーあたりにある描写はどうなんかなあという気はする。まあ、現実では許されないのだから、ある意味、フィクションの中で何をやっても構わないと思うが。これは、そういう世代なんだろうねぇ。

 

ということで、ここからは、オススメ

日向夏薬屋のひとりごと

https://ncode.syosetu.com/n9636x/

単行本版あり

薬屋のひとりごと 全7巻 セット

薬屋のひとりごと 全7巻 セット

  

コミカライズ版あり。

shogakukan.tameshiyo.me

後宮に少女が入れられて始まるファンタシー、というと酒見賢一後宮小説』と思ったけど、薬を中心とする割とロジカルなミステリーと、主人公たちの人間関係ドラマという二軸のバランスがよい。

香月美夜本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~』

なろう版:

https://ncode.syosetu.com/n4830bu/

Kindle版(unlimitedにも入っているので、お試しにはそちらがよいかも)

大学図書館に司書としての就職が決まったばかりの主人公が、地震で本に埋もれて死んだと思ったら、異世界にマインという名の5歳の女の子として一般市民に転生するところから始まる。この異世界でにはまだ一般に流通する本がないので、この世でも司書になるために、そもそも本を普及させるところから七転八倒して、という話なのだが、ストレートに実現するわけではない。ファンタシー世界の文化・文明発達と、魔法がどうくるのかなどを組み合わせた、世界観を楽しむお話。アニメ化もされた。

LV999の村人

https://ncode.syosetu.com/n7612ct/

異世界で、最弱のキャラクターである村人。普通はレベルをあげても10程度。モンスターを倒すとお金と経験値が手に入ることに気づいてしまったので、自身でレベル上げに勤しみ、今では完ストのLV999。

ここだけ見るとオレTueeeで、ハーレム作りまくり、お金稼ぎまくり、敵倒しまくり、と思うかもしれないが、そうではない。「モンスターを倒すとお金が稼げる」システムとは何かを暴き、そのさきに向かうというメタ性がとてもおもしろかった。

 

無職転生 - 異世界行ったら本気だす -

https://ncode.syosetu.com/n9669bk/

現代日本在住34歳ニートが、剣と魔法の異世界に赤ん坊として転生をする。今度は全力で生きようとして、その通り全力で生きる。冒険者としてレベルを上げ、いろんな種族と仲良くなり、最後は世界の仕組みと対峙する。私が読んだ中では珍しく、家族を作る。

藤孝剛志『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』

なろう:https://ncode.syosetu.com/n5691dd/

コミカライズ:

www.comic-earthstar.jp

 

殺意を感じただけで、その対象を即死させることができる主人公が、修学旅行のバスツアー中に、団体さんで異世界に転送させられて、という話。最初にゲームアプリをインストールさせられる描写がある親切設計。しかし私はゲームやらないのでよくわからないんですが、いろんなキャラというかロールがあるんですね。主人公高遠くんの淡白さも面白い。会話劇のテンポも良いし。

 

 

二日市とふろう『現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変』

https://ncode.syosetu.com/n3297eu/

パラレルワールドの日本のちょっと過去に戻った財閥令嬢様に転生して、という話なのだが、実際にはバブル崩壊期の日本を振り返る様な感じになって、グローバル経済との連携でこんな(ツライ)ことあったよねーなかなかハードな感じがいい。まだ完結していない。

 

こうやってみていくと、面白くない、ないしは、飽和してきたなと思ったら、その次のものがいろいろ出てきて、面白い。

なろう →書籍化→コミカライズ→アニメ化、という流れもできている様なので、これからこれでビジネスにもなっていくんだろうと思うと、ダイナミックにいろいろ変わっていくといいなと思う。

昔は小説は新人賞を取らないとどうにもならなかったのだけど、こうやって(プロから見たら稚拙であっても)読者の目に触れて、フィードバックを受けて、どんどん新陳代謝が行われるのは、いいことの様な気がする。