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見たものと、読んだもの

高野秀行・清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』2015/集英社インターナショナル

本を読んで、目からウロコが落ちることが楽しい人と、自分が言っていることが正しいことを証明してくれるのが楽しい人と二種類あるとおもう。前者派の私にはたまらない。

世界の辺境とハードボイルド室町時代

世界の辺境とハードボイルド室町時代

 

辺境とは、中心から遠いことを指すが、それは距離でもあるし、時間でもある。

本書の場合は「現代日本」が中心で、距離的に離れているのが現代のソマリランド、時間的に離れているのが、中世の日本。当初からこのお二人が畏友だったわけではなく、SNSからのエゴサーチからの、という知り合い方もおもしろかった。

対談なので、「現代ソマリランドでこんなことがあって」「室町日本だと似たようなことであんなことがあって」というトリビアちっくな披露し合いで進むのかと思ったら、もうちょっと奥がふかかった。奥というよりも、もっと事例主義的なところをたてていくと、かえって奥に深くなるというような。

高野氏は探検部出身で、辺境にいっては長く滞在して体験してきたことを書く作家。タイに住んでいたときは現地アドバイザとしてNHKの取材に同行するとか、そういう深さで現地にいて詳しくなって、それをベースにする。

清水氏は中世の民衆史がご専門で、法の解釈をするのに公家の日記を辿って、実際には効力があった/なかったんじゃないかという実証面での記述をつないで面展開していく。

つまり、法とかポリシーはあるのは前提としつつも、その運用はこんな感じになってきたのだよね、という理解の上に論が成り立つタイプ。だから実は「現代ソマリアランド」と「中世日本」の共通点というよりも、そのリアルさ追求の共通点が、おふたりをくっつけたのかもしれないとおもう。

単純にトリビアとしての共通点を探すのも楽しい。

しかし、まだやり残された視点は何なのか、現場の人間からの下から目線で考えて見るように思いをはせると、ちょっとおもしろいんでかろうか。

おすすめです。