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見たものと、読んだもの

デミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』2016

クラッシックなミュージカルをいまつくるとこうなる。

つべこべいわずに楽しく見るのも良いし、つべこべ言いながらほろ苦く見るのも良い。


映画「ラ・ラ・ランド」オリジナルmusicPV

 

ハリウッドミュージカルのリブート版

まず、色がいい。基本的に無地の服を着ている。全体的に彩度が高い、くっきりとした色をしていて、みているだけで楽しそうだ。

 

『パリの恋人』1957年なんかの感じ。みんなの衣装の色みてくださいな。

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フレッド・アステア最高!

もちろんジーン・ケリーも忘れちゃいけない。
マジックアワーのあのシーンでセブがさりげなく真似をしている『雨に唄えば』1952年。

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雨に唄えば』といえば、ドナルド・オコナーでタップダンスですよ。

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「楽しい」が溢れている♪

ハリウッド的ミュージカル映画って、そういえば長く見ていない。

ブロードウェイ系は、『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』『レント』『コーラスライン』『シカゴ』などなどけっこうあったけど。ヒットしたハリウッド系ミュージカルってベスト盤のような『ザッツ・エンターテイメント』以来なのかもしれない。

古臭い、ということだったのかもしれない。

ジャズのリブート

古臭いの代名詞でつかわれていたのが、ジャズ。セバスチャンは、まったく誰にも理解されない。セブが好きなのはビバップだとおもうのだけど。

どのアルバムのアートワークかはわからなかったがビル・エバンスのレコードはあった。

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椅子で出てきたカウント・ベイシー

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オーケストレーションによる豪華さ

といっても、ビバップのスリーピースで楽曲ができているわけではない。

多くはオーケストレーションされていて、とってもゴージャス。

うまく適切な例がだせなくてもうしわけないのだけど、クラッシックだとたとえば『ボレロ』のピアノ版とオーケストラ版を聴き比べると、ゴージャスさのちがいがわかりやすい。まずはピアノ版。

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そしてドゥダメル指揮のウイーンフィルオーケストラ版

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あまりに楽しすぎて買っちゃいましたよ、サントラ

 

Ost: La La Land

Ost: La La Land

 

Another day of Sun が一番のお気に入り。

 

しかし、全編オリジナル楽曲というのがすごい話で。ブロードウェイミュージカルの映画化であれば、すでにある程度の人気がある楽曲があるということになるが、映画封切りまではとうぜん誰もしらないわけでしょ。プロデューサーがよくお金をひっぱってこれたなあという、もうため息しかない。

実際、この監督の前作『セッション』よりも前にこの映画の構想はあったのだが、お金が集まらなくて作れなかったみたい。『セッション』のおかげでなんとか出資を集めることができたみたい。かつすでに興行収入は制作費の十倍以上みたいなので、出資者は十分にもとがとれたようだ。よかった、もっとビッグバジェットの映画もとれる権利獲得だ。

恋模様と夢模様

これは、本当は賛否がわかれるんだろうなあとおもう。非常に重層的で、あの終わり方をハッピーエンドとしてみるかどうか。

「女の恋は上書き保存、男の恋は別名保存」などというステレオタイプで語っていいものではないとおもう。

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オスカーでも主演女優賞をとったEmma Stoneは、ゴールデングローブ賞の受賞スピーチで、1:05のところから、

This is the file for dreamers and I think that hope and creativity are two of the most important things in the world

and that the movie is all about and so to any creative persons whose had a door slammed in the face (...) or physically, or actors whose had their auditions cut off or the callback didn't come

or anybody anywhere really that feels like giving up sometimes find into themselves to get up to keep moving forward, I share this with you.

 (一部きちんと聞き取れていなくてもうしわけない)

この映画は夢を追っているたちに捧げる映画だ。希望と創造性がこの世で最も大事なことだ。この映画はそのためにあり、クリエイティブに何かを始めようとする人たちの前でドアがぴしゃりと、たまには物理的に、閉まったり、俳優の卵がオーディションに落ちたり、結果の折り返し電話がかかってこない。誰にでも、どこででも本当にもうダメだと落ち込んで止めてしまいたくなっても、立ち上がって前に進もうとする、そんな人たちと、この賞を分かち合いたい。(拙訳)

と夢を追っているひとたちに捧げる映画だと述べている。

直接は言わないが、「仕事と恋のどちらを選ぶの?」という話でもある。どちらもは選べない。どちらを選ぶのが正解だったのか。今のは正解、でももっと別の正解があったのではないか。

それは誰にもわからない。それがあれば世界が滅んでも構わない、それだけでは進まなくなるのがオトナってやつで。

その恋の始まりの楽しさと一緒に、人生の苦さってやつを複雑に練りこんだタペストリーになっている。そういう意味で、とてもテクニカルな脚本であり、演出でもある。

きらびやかな楽しさを追うことを楽しむ映画でもあり、人生のほろ苦さを味わうことにもなるという意味で、『プラダを着た悪魔』を思い出す。

 

この映画、クラッシックになる映画なので、10年に一度ずつみるといいとおもう。きっと感じ方がかわってくる。これを30歳の映画監督が撮っているなんて、まあなんとすごいことだ。

長々と書いているが、ぜひ劇場で、大画面で、特に最初の高速道路のシーンをみてほしい。