ついに、国宝燕子花と、お庭燕子花の共演を見ることができた。
もちろん、根津美術館ご自慢の国宝『燕子花図屏風』(尾形光琳)と、裏庭の燕子花のことである。
燕子花図屏風 尾形光琳筆 右隻
By 尾形光琳 - Nezu Art Museum, パブリック・ドメイン, Link
同 左隻
By Ogata Kōrin - Nezu Art Museum, パブリック・ドメイン, Link
(↑ しかし、写真も撮り方と色の選び方でずいぶん違いますね)
夏秋渓流図屏風 鈴木其一筆
By Suzuki Kiitsu - Nezu Museum, パブリック・ドメイン, Link
が同時に見ることができるということで、というよりも、実はお庭のカキツバタを拝見しに行きました。
じつは燕子花図屏風を見るのは二度目。しかし、根津美術館で見るのは初めて。
2年前に、尾形光琳300年忌で、根津美術館からMOA美術館に貸し出されていたのだ。そして、『紅白梅図屏風』と『燕子花図屏風』を同時に見るということができた。*1
鈴木其一だと、『朝顔図屏風』と並べて見たいなあ。これが、尾形光琳の燕子花図屏風に対する其一のアンサーソングだと思うので。メトロポリタン美術館行きたい。
By 鈴木其一 - http://www.metmuseum.org/art/collection/search/48982 This file was donated to Wikimedia Commons by as part of a project by the Metropolitan Museum of Art. See the Image and Data Resources Open Access Policy , CC0, Link
燕子花図屏風のかわいらしさ
よくコピペによるリズム感の良さ、という言い方で表される。
たしかにリズムはいいとおもうけれども、今回の気づきはふたつ。
ひとつめは、引き算の心地よさ。
他の図屏風は、風景をパノラマ写真のように全部描いている感じ。しかし、燕子花図屏風は、燕子花しかない。 これが心地よい。その上で、燕子花の花が流れていく。左から右に、右から左にみてもよい。一直線でない、山の稜線の上下をみるような心地よさ。
ふたつめは、群青色のきれいさ。
燕子花の花がぽってりした感じ。場合によっては青二色で立体的に彩られている。緑色の葉の部分はとても平面的だから、視線を花に誘導し、そして釘付けにするための、視線操作でもある。
「ありのままを描くよ」というよりも、非常に人工的な計算に満ちた作品だなあと感心してしまった。
計算に満ちているのに、金箔で、下に水がない燕子花ってだけでもかなり人工的なのに、なにか愛嬌を感じさせるぽってり感と色の美しさ。若冲とはまた別の感じで心地よいです。
燕子花の庭園
根津美術館の庭園はいつ行っても何かが咲いていて気持ちがいいのだが、特に今回は燕子花共演である。藤棚もきれいだったのだが、全盛を過ぎていて残念。
天気にも恵まれ、新緑の葉にも恵まれて、燕子花がひきたっていた。
その名も燕子花という和菓子とお抹茶(お薄)のセットが千円でいただけるのも、なかなか乙なもの。「とくに流派は関係ないし、足を崩してもらっても問題ないですから」とやさしくおっしゃっていただきながら、庭を横目にお茶をいただくのはなかなか贅沢な喜びでした。
国宝もいいんだけど、やっぱり生の草花の美しさもまた美しく、ジャンルの違うよさなんだなあと、心地よく観覧してきたのでした。
おまけ
『紅白梅図屏風』
ぼくにとっての其一は、このメトロポリタン美術館収蔵の『朝顔図屏風』なんですよね。こっちのほうが尾形光琳『燕子花図屏風』との共通点が多いと思う。
- 背景が金箔
- 描いてあるのが題名の植物のみ。土も他の草花などもない。
- 群青
- 配置のリズム感(尾形光琳は一次元、鈴木其一は二次元だけど)
同時表示にはいいとおもうんだけどなあ。一度見てみたいなあ、同時に。