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見たものと、読んだもの

オースン・スコット・カード『エンダーのゲーム』新訳版 ハヤカワ文庫SF

エンダーは、果たして幸せになったのだろうか。 

エンダーのゲーム〔新訳版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)
 

これも緊張と緩和で綴られる。絶体絶命の危機、回避、新たな危機。page turnerとしてとても優秀なできで、上下巻を一気に読みきってしまった。

主人公は「エンダー」というあだ名のまた年端もいかない天才の男の子。どこか遠い未来の話で、バグーという宇宙人との戦争状態にある。エンダーの天才性を見出した国際艦隊 (IF) の教官が、その天才性を花開かせるために、常に彼を窮地に追い込む。その才能は本当に花開くのか。ダークサイドに陥ることはないのか。そこにそこはかとない恐れを抱きながら読んでいった。

私は、エンダーに感情移入しながら読んでいった。その絶望に。ついには意図を感じ取り、どうあろうと賞賛されることもなく、家族とも切り離され、人からは憎まれるように誘導されていく、無間地獄、賽の河原。外から見たら最優秀の数字を挙げているのに、何という絶望と孤独。思春期にそれを味わったものは、それを劇的に追体験することになる。

彼は癒しを与えられたのだろうか。

エンディングは難しい。これが求めていた救済なのかわからない。しかしエンダーにしか取り得ない最後だろうと思う。

彼を執拗に追い込むグラッフ氏の視点で見たときに、彼は酷薄非情のサイコパスなのか、使命感に駆られた人格者なのか、どうなんだろうね。

映画は未見。軽く評を見る限り、割と原作に忠実っぽい。


「エンダーのゲーム」クリップ映像

予告編では、なんかエヴァンゲリヲンとの比較を意識しているような言い方がされているけれど、私は別に感じなかったなぁ。

エンダーは悩むし絶望するんだけど、シンジくんとはベクトルが随分違うので。