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見たものと、読んだもの

ダグ・リーマン『オール ユー ニード イズ キル』2014米国

これはいいハリウッド化。

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映画館では未見。主人公がトムクルーズになったのを知って、ハリウッド大作的な変な改変がされているに違いないという偏見による。

小畑健によるコミカライズ版を読んでいるが、主人公が若者であるところがよかったと思っていた。トムクルーズもよく活かされていると思う。

トムクルーズの冒頭が、卑怯者なのも良い。脅し方が小者すぎてたまらない。

そういう大人のビルディングロマンになったのは、演出がうまいんだろうなあ。 

本来は広報官だから戦闘経験がないといっているしそう描写されているが、見る方は『ミッションインポッシブル』のように、何でもできて当然というパブリックイメージがあるしね。

ハリウッドのスクリプトドクターがおそらく手を入れていて、論理的な矛盾点が最小限に抑えられているという基礎的な部分がしっかりしているのが、まず良い。

こういうタイムループモノは、最初にタイムループという大嘘をいうのだから、それ以外のところが論理的な辻褄が合わないと、妄想にしかすぎなくなるから。

アクションのけばけばしくないリアルな臨場感も光っているのは、さすがは『ボーンアイデンティティ』シリーズの監督というところか。

大作にふさわしい大掛かりな絵作りもあり、娯楽作品として大いに楽しめると思います。

ちょっとネタバレというか、言いがかり。

実はラストシーンは、見ているときは映像にねじ伏せられてしまうのだが、論理的には本当にそうなのかなあ、という部分がある。

最後の最後、オメガを倒した後でその血を浴びて、過去に戻る。なぜあの瞬間に戻るのかという説明がないというところ、また、本当にオメガを倒すことができたのかという点が、実は説明されていない気がする。

前者は、おそらく作品的にあそこで終わるのが美しいという話だと思う。よって、まあ映画だからいいじゃん、という話で終わらせたいので、まあいいんですが。

後者は、本質的に、オメガが惑星侵略をするときに自分が有利なように時間を操作して最終的に勝つというずるい侵攻方法をとるということであるならば、オメガは殺されるときに、またタイムループを引き起こして地球を侵略するという未来があるはず。それが「この」オメガかもしれないし、「別の」オメガかもしれないけれど。

だとすれば、映画の終わりは、これで危機がさったといって万々歳で終わるのではなく、おそらくまた彼らは侵略してくる、それでもこの束の間の勝利をケイジとリタで祝いたいという感じになるんだろうと思うのだが。

まあ、ケイジにして見たら、このリタは知らないが何年も一緒にいて好きになったリタと戦争という意味でなく会えた喜びの方が上ってのもわからんではないのですが。

ハードに進めたなら、ハードな終わり方でもよかったかなあと。