cafe de nimben

見たものと、読んだもの

ダニエル・ピンク『人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!』講談社2013 (1/2) ABCを辞書引きながら考える

原題は "To sell is human". 「売るってのが、人っちゅうもんよ」です。

別にセールスマンだけでなく、ほとんどの職種の人は「売る行為」をしている。それは何かを物理的に買ってもらうだけじゃなく、何かをしてもらうという交渉のことだからだ、という説明から入るので、営業職でない人にもおすすめ。

これも長くなるので、分けます。今回は英語編。

しかし、一旦Merrian-websterのオンライン英英辞書で「Defined for English Language Learners」で定義を読んだ後に、もう一度元々の英語の定義を読むのは、理解が深まって良いな。そもそもBuoyancyという言葉がtop 40%の頻出単語だって知らなかったし(汗

人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!

人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!

 

新たな三原則ということは、古い三原則があった。どちらもABC。

今までの営業のABC

古いほうはこっち Always Be Closing

www.youtube.com

上記引用元の映画は『摩天楼を夢見て』1992年の映画だ。もう25年以上も前の映画だ。

2001年に亡くなったジャックレモンとか、若きケビンスペイシーやアレックボールドウィンが出ているのが、なかなか味わい深い映画である。

"Always be closing"は、「とにかく受注しろ」って感じですね。アレックの口調が全てです。ABCだから覚えやすい。「途中の交渉段階には俺は興味はない、全て受注だ!」という感じが、アレックの口調から滲み出て怖いですね。年下上司にこう言われたベテランのジャックがどう感じるか、なんてこの映画が描く人の機微が出てきます。

今でも営業会社はこの感じじゃないかしらね。この映画はもちろんアメリカの会社を扱っているけど、外資系日本系問わず。

補足:ビジネス英語のclose(とopen)

英語でcloseといえば、こういう文脈の時は、最終段階です。ゴルフだとパットをする段階、鍋だと雑炊にする段階。大きな儀式ものでも最後の演説が Closing Addressというように、シメるがclose, シメがclosingです。

営業活動は、最後は受注か失注なので、結果が受注・成約なら "(closed) won"、失注なら "(closed) lost"となります。

ちなみに、closed disengagedってのもあります。これも失注っちゃ失注。会社によって定義が異なりますが、他社に負けての失注が closed lost、お客様都合での失注ないし無期延期が closed disengagedというニュアンスはあるかな)

ちなみに、closeの逆はopenですね。例えば、不具合を見つけたのでなんとかしてくれというときは「open a case」というようにも使います。ただ、英語の場合は「open issue」というと、「何かことを始める」ではなくて「未解決の項目」という意味です。

著者による新ABC

これを踏まえた上で、著者の新ABC

同じABCに揃えたいということもあって、ちょいと難しい単語だ。先に用語だけ確認していく。英語版を読んでいるわけじゃないから、本書の書き方とはちょっと語彙が異なるかもしれないが、そこはご容赦あれ。ちなみに著者本人がちょっと語っているYouTubeはこちら。

www.youtube.com

今回は、新ABCの英語的意味と類義語対義語、そして著者の言っているさわりを書きます。

A — Attunement: 同調

being or bringing into harmony; a feeling of being "at one" with another being

Attunement | Define Attunement at Dictionary.com

merriam-websterの定義は以下のもの。ちなみにどれくらいよく使われる単語かを "Popularity" で表現してるのが面白い。attunement自体は掲載されておらず、動詞のattuneが下位50%の頻度と出ている。

attune
verb

Popularity: Bottom 50% of words

Definition of attune
transitive verb
1 : to bring into harmony : tune
2 : to make aware or responsive : attune businesses to changing trends

attune for English Language Learners
: to cause (a person, company, etc.) to have a better understanding of what is needed or wanted by a particular person or group

https://www.merriam-webster.com/dictionary/attunement

Dictionary.comだと、「調和する、調和をもたらす、他者と一体となったような気持ち」Merriam-websterの通常定義だと「調和をもたらす」「知って反応する」

Merriam-websterの英語学習者向け定義だと、「特定の人やグループが、何が必要で何を欲しているのかをよりよく理解するような行動」かな。

「調和をもたらす」って、裁定者としてことに当たるという意味合いもあるけど、そうではない。謙虚に相手のことを知るという方が近そうだ。

アナログのラジオのチューニングを合わせるような感じが良さそうなんだけど、最近はラジオはデジタルだからこの例えは辛いかも(汗 なんかいい言葉教えてください!

 

B — Buoyancy: 浮揚力

1. the power to float or rise in a fluid; relative lightness.
2. the power of supporting a body so that it floats; upward pressure exerted by the fluid in which a body is immersed.
3. lightness or resilience of spirit; cheerfulness.

Buoyancy | Define Buoyancy at Dictionary.com

buoyancy
noun buoy·an·cy \ ˈbȯi-ən(t)-sē , ˈbü-yən(t)- \
Popularity: Top 40% of words |Updated on: 11 Jan 2018

Definition of buoyancy
1 a : the tendency of a body to float or to rise when submerged in a fluid

testing an object's buoyancy
  b chemistry : the power of a fluid to exert an upward force on a body placed in it the buoyancy of water; also : the upward force exerted

2 : the ability to recover quickly from depression or discouragement : resilience his buoyancy of spirit

3 : the property of maintaining a satisfactorily high level (as of prices or economic activity) betting that the economy will maintain its buoyancy

BUOYANCY Defined for English Language Learners
noun
Definition of buoyancy for English Language Learners
: the ability of an object to float in water or air
: the power of a liquid to make someone or something float
: the ability of someone or something to continue to be happy, strong, etc., through difficult times

Buoyancy | Definition of Buoyancy by Merriam-Webster

「水や空気に物体を浮かべる能力」「浮揚力」というのがbuoyancyの第一定義。

レジリエンス/Resillenceにした方がいい気がしたのだが、B始まりじゃなくなるからそうしたのかと思ったけど違いましたw

この本を読んでいくとポジティヴとネガティブの比率を、浮揚と重力として捉えている。そこを重視するなら、確かに「浮揚」ですね。

なお、レジリエンスの対義語はフラジャイル、ないしは脆弱性 (vulnarability) 。

対義語であるfragileとは(脱線つき)

Fragile | Definition of Fragile by Merriam-Webster

fragile

 
adjective  frag·ile  \ ˈfra-jəl , -ˌjī(-ə)l \
Popularity: Top 40% of words |Updated on: 31 Jan 2018

Definition of fragile

1a easily broken or destroyed 
  • fragile vase
 
b constitutionally (see constitutionally 1a) delicate lacking in vigor 
  • fragile child
2tenuousslight   
  • fragile coalition

Definition of fragile for English Language Learners

  • : easily broken or damaged : very delicate : not strong

 脆いとか壊れやすいとか弱いとか。こっちにすると、先の「浮揚」「重力」という対比は使えません。

Fragileというとこっちかな。1987年Sting。もう30年前の曲になるのか。


Sting - Fragile

夕日が真っ赤に落ちていきながら、最後の人間が血にまみれて死んでいく姿が目に浮かんでしまう。人という種の「脆さ」を感じる曲。

 

人によってはこっちかも。2001年のELT


Every Little Thing / fragile

恋愛も含んで人間関係の脆さ、かな。

対義語であるVulnerability/脆弱性とは。

長くなりすぎるので、vulnerability/ 脆弱性については、以下参照

www.merriam-webster.com

 

「ソフトウェアに脆弱性が発見されました」というニュースあるじゃないですか。その「脆弱性」はVulnerablityの直訳として当てられます。

一番近いニュアンスだと思っているのは、「open to attack, harm, or damage / 攻撃に晒される・余地がある」という定義。多分そこから意訳的に「脆弱」という言葉が当てられたのかなと。攻撃に対して「脆い」「弱い」という感じ。

一般的に「脆い」「儚い」だと、それ全体が、という感じだけど、vulnerableだと「(他は大丈夫だけど一部に)攻撃されたら不味いポイントがある」という感じ。

瀬戸物の器はが脆いのは、fragile。OSの不具合で、攻撃をかけられるとやばいポイントはvulnerableというイメージ。

瀬戸物がvulnerableというと、攻撃されるようなポイントかなあと思うので適さない。OSがFragileというと、攻撃に対して弱いというよりも、そもそも起動したらすぐに落ちちゃうとか、動き自体が安定していない感じの方が強い(もちろんこの時は、unstableというのが正しい言い方だと思う)

 

レジリエンスもフラジャイルも脆弱性も、まだ伝わりづらい概念かなという気はする。

C — Clarity:明確性

Clarity | Definition of Clarity by Merriam-Webster

clarity

 
noun  clar·i·ty  \ ˈkler-ə-tē , ˈkla-rə- \
Popularity: Top 30% of words |Updated on: 19 Dec 2017

 

Definition of clarity

the quality or state of being clear lucidity 
  • There is a lack of clarity in many legal documents.

clarity

 
noun

Definition of clarity for English Language Learners

  • : the quality of being easily understood

  • : the quality of being expressed, remembered, understood, etc., in a very exact way

  • : the quality of being easily seen or heard

簡単に理解できること。明確性、明瞭性。

対象を見る時、暗いから見えないとか、霞がかかっていて見えないとか、そういう邪魔なものがなく、くっきり見える感じ。 

Clearなどと同じ語源ですね。単語のイメージがわからなくなったら Clear Sky / 雲ひとつない青空、を思い浮かべると良いかも。

この動詞型の clarifyはビジネス英語でよく使います。似たようなものに、identify, specify, define, elucidateなどあります。

clarifyは、曖昧さやノイズを減らして明瞭に(簡潔に)表現する感じ。多少の端折り含む的な。

elucidateは、もうちょっとそのややこしいところに光をあてて説明する感じ。詳細やや歴史的背景のあるものを端折らずに丁寧に見て理解する的な。

specifyは、曖昧さを具体的に詳述する感じ。それを集めて合成するとIdentifyになる感じかな。「今の調子の悪さを具体的にいうと、喉が渇いて、頭が痛くて」というのがspecifyで、「喉が痛くて、頭が痛くて、昨夜深酒したというのを総合的に考えると、二日酔いだね」というのがIdentify的な。

defineは、辞書的定義づけだから、あんまり使わないかも。

ちなみに私はelucidateは使ったことないなあ。今度使ってみよう。

 

なお、この本では、補助線を引くことで、思考の曇りを払う思考フレームが示される。 

 

今日はここまで!