cafe de nimben

見たものと、読んだもの

ウェイン・ワン『スモーク / Smoke』1995 米日独

タバコの煙のような癒しの、大人のクリスマス映画。

題名の通り、みんなびっくりするくらいタバコを吸っている。それもそのはず、主人公の一人であるオーギー(ハーベイ・カイテル)はニューヨークはブルックリンのタバコ屋の主人なのだ。そのタバコにまつわる話から、物語は動いていくのだが……。

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ラブ・アクチュアリー』(2003) などのように、オムニバスでショートエピソード同士がちょっとだけクロスオーバーして進んで、最後は癒し系のハッピーに終わるお話。

癒しのクリスマス映画と言っても『素晴らしき哉、人生』 (1946) のような元祖セカイ系の派手なものでもない。『ラブ・アクチュアリー』のように、恋愛的キラキラハッピーでもない。

誰もが、あんなことをやっちまったとか、本当はああしたかったという過去がある。いわゆる unfinished business というやつだ。それは日常の中で、喉に引っかかる魚の小骨のように、小さく疼き続ける。

過去には戻れない。相手があることなので、解消する機会は、永遠にこないのが普通。

でも、ひょんなことから機会を得たり、遡ってそれを捉え直したりして、それが解決することがある。その「ひょん」というのは、自分だけではどうにもコントロールできなくて、それが来るってことは、人の縁だったり、天の配剤だったりするのだろう。

Coincidence is God's way of remaining anonymous.
(偶然は、神がそれとわからないようにされるわざだ)

とかいうと、ちょっとクリスマス映画っぽいかも。

 

それはほろ苦いタバコの煙。煙なので本当かどうかはわからない、そして一度煙ったら消えてしまう。

しかしそこに、一瞬の癒しがある。時に、その思い出があれば、それを頼りに一生生きていける、という種類の。

何者でもない、ただの人が得る、そんな癒し。

という、たまにはこんな、大人のクリスマスを。

メリークリスマス。