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見たものと、読んだもの

『ローグワン / Rogue One』2016 US

スターウォーズの数字なし外伝的映画。時系列的にはep3 と 4 の間になる。

この映画は、スターウォーズだけど、未来の神話という数字ありエピソードとは異なり、負け犬の落とし前を描写するハードボイルド作品だ。物悲しい短調の劇伴が多いのは、多分それを意図してのことだろう。

 

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I am one with the force. The force is with me.

個人的に一番素敵なキャラだと思うのは、チアルート / Chirrut Îmweである。

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盲目の、僧兵っぽい人。本人はフォース*1を信じてはいるが、他の誰も彼がフォースが使えるとは思っていない、そんなイタイ人。武術も、フォースが使えれば使うはずのライトセイバーじゃなくって、棒術だし。演じるは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』『イップ・マン』でも有名な、香港アクション映画界の俳優/アクション監督、ドニー・イェン / 甄子丹 / Donnie Yen. かっこよいのも理の当然である。

彼が唱えるマントラ / mantra である "I am one with the force. The force is with me"  / 『私にはフォースがついている。フォースは私と共にある」が素敵。 *2

死をかけて戦うシーンがある。その時、彼はできると信じるために、"I am one with the force. The force is with me" を何度も何度も何度も繰り返し唱える。私にはほとんど震えているように見える。本当に信じているのならば、繰り返しいうこともない。自信満々に唯やればいい。ジェダイであれば、そんなことはいう必要すらない。しかし、ジェダイならぬただの人であるチアルートは、おそらく「できっこない」という心の声を打ち消すために、それを唱え続けるのだ。

ただの人間が、一瞬だけ超人になる瞬間が、人生にはある。

横糸は、ハードボイルドなキャラたち

しょうがなかったの一言で、本心を黙らせてしまっている、昔やった後ろ暗いことって、誰にでもあると思う。汚れた手をみたとき、あるいは悪夢の中で、たまにそれが思い返される。後悔と言い訳と忘却。自分の本心に背いてきたことの落とし前をつけるために立ち上がるという姿は、負け犬が唯一度だけ真人間に戻るための戦いを挑むハードボイルドだと思う。

アーソ父がそうだ。キャシアンがそうだ。彼らと一緒に立ち上がる名もなきキャラたちがそうだ。

「自分が自分であることを取り戻せるなら、死んでもいい」。日常生活ならいい。しかし、帝国軍相手に行うのは、文字通り自殺行為だ。

でも、だからこそ、映画でくらいは、心の澱を晴らす美しい行動をとるキャラクターに思いを託せる。これがファンタジーとしてのスターウォーズサガの強さなんだろうな、と思う。

彼らは、スターウォーズサガのリアリティラインを崩してまでも生き延びることはない。数字なしエピソードのキャラである宿命だ。それは否応なく悲劇性を帯びる。

それがこの映画の強い横糸だ。ん、じゃ、縦糸は?

縦糸は、ep3と4をつなぐ物語

縦糸は、ep4 でデススターがなんでXウイングに一撃でやられるんだ、あの大きさのをあんなチビ戦闘機が一発でなんて、簡単にやられすぎでしょう、というものの回収。なぜか弱点が作られることと、その弱点が漏れること、この二つがなければ、ep4は起こりようがなかった。

縦糸も横糸も非常に強い物語駆動力を持った糸で織られた映画になっている。

なので、安心してこの映画世界に没入していける。

昔は、自分が超人になれると思っていたので、強いキャラクターに感情移入したものだが。こういう凡人キャラの方に感情を移入するようになったとは、ああ歳とったな。

*1:しかし、いまだにフォースが何者かわからない。ほとんどの場合、中立の武「力」であり、ダークサイドに堕ちるとさらにパワーアップするなんて、じゃあなぜこれが信仰されるのか

*2:スペイン語だと直訳なんすな。 "Soy uno con la Fuerza, y la Fuerza está conmigo"