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レンブラント[2/5] オール ザ レンブレント@アムステルダム国立美術館 (2/2 鑑賞編)

All the Rembrandts @RIJKSMUSEUM (2/2)

おお、これがアムステルダム国立美術館ことRIJKSMUSEUMか

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RIJKSMUSEUM/アムステルダム国立美術館

青い素描っぽいのがレンブラント。上の電線みたいなものはトラム用。

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RIJKSMUSEUM/アムステルダム国立美術館の中を通る道路。自転車怖い。

この地図を見るとわかるが、橋に向かって一直線に中を突っ切っている道路なのです。

Rijksmuseum Amsterdam area map.svg
By OSeveno - 投稿者自身による作品, build on public data from the municipality of Amsterdam, CC0, Link

 

 

左右のガラスみたいなところが入り口。そこから階段を下ると、展示場のもぎりへ。

もぎりを通る前に、コートやバッグなどはクロークに預ける。(上野の東京文化会館くらいの大きさかな)

もぎりで、係員の人にチケットのバーコードを読み込んでもらう。PDFの2ページ目の通常展用のやつです。*1

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なぜかラオコーンによるお出迎え(通常展チケットもぎり入った直後)

そこから通常展に回るも良し、レンブラント特別展に行くも良し。もちろん私は特別展に。行き方がわからなくて、アジア展を最初に見たのは内緒だ。

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特別展入り口を上から

1885年の建物の中が白と直線の北欧っぽい現代テイストになっており、19世紀と21世紀が交錯する内装も面白い。

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みんな大好きレンブラントおじさんのエッチング


油絵もあるが、エッチングが一番多い。素描も色々。

好きなエッチング 

エッチングも連作的に提示すると、落ち着いたいい感じになります。壁の色もいいんですよね。

左から
「Christ Healing Leper』(素描)
『The raising of Lazarus / ラザロの蘇生』(エッチング
『The raising of Lazarus / ラザロの蘇生』(エッチング

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真ん中のキリストなんだけど、細かい。ものすごく細かい。エッチングなのに細密画かと言うほど。

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キリスト降架 / The Descent from the Cross (1633)

とはいえ失敗もあり、刷るのに失敗したキリスト降架の最初の版。

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おそらくレンブラントが銅板を熱し過ぎたらしくて失敗。

 

刷り直し。やっぱりこれ、一点ものじゃなくてエッチングなのすごいよ。

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技術を突き詰めた果てに、技術ではなく美を提示していく。 

 

好きな油絵

Man in Oriental Dress (日本名わからず)

Man in oosterse kleding Rijksmuseum SK-A-3340.jpeg
By Rembrandt Harmensz. van Rijn - http://www.rijksmuseum.nl/collectie/SK-A-3340, Public Domain, Link

注目したいのはターバン(?)部分

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髭もそうなんですが、ターバンの繊維が全部一本一本立体的にしかも光を浴びてキラキラしているんです。それでいて服はそのキラキラを抑えてあるから、ターバン部分に視線が誘導されるというこのメリハリ。キレイ。

Portrait of a Woman, Possibly Maria Trip (Rembrandt)

Portret van een vrouw, mogelijk Maria Trip Rijksmuseum SK-C-597.jpegPortrait of a Woman, Possibly Maria Trip (Rembrandt)

By Rembrandt - www.rijksmuseum.nl : Home : Info, Public Domain, Link

この肖像画なのですが、手のどアップにしてみると

 

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レースの描きこみもすごいですが、油絵特有のひび割れかもしれないけれど、指毛的なところまで偏執的に描き込んでいるかのような。

レンブラントって、エッチングだけでなく油絵もこんなに細かいとは思っていませんでした。

 

しかし、細かいところを偏執的に描くだけの人であれば、もっとデッサンが狂ったりしてもおかしくありませんが、全体像の捉え方や、光の濃淡のつけ方が絶妙。

好きな素描

ああ言う細かさを見た後で、素描を見たときの線の大胆さと、捉え方の巧みさに驚く。

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集大成的な『夜警/ Nightwatch』(1642年)

そしてその集大成的に、『夜警 / Nightwatch』になるわけですが。これが特別展の中でなく、通常展の中にあるというのも、またちょっと面白いところですけど。

The Nightwatch by Rembrandt - Rijksmuseum.jpg
By レンブラント・ファン・レイン - http://hdl.handle.net/10934/RM0001.COLLECT.5216, パブリック・ドメイン, Link

 

手前の二人と、童女にスポットライトが当たっているような、この感じがとても好き。

他のみんなもそれぞれに準備をしている、と言う全体のバランスの良さ。

 

そのバランスの良さを崩さず、例えばこのスポットライト当たっている右側の人の服や槍の細かい描き込み。手前が光って、奥が暗い槍は、立体感をもつ。

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細かい、槍と服の模様

レンブラントが好きと言うと「ああ、あの暗いやつね」と言われて悔しいんだけど、そんなに暗いと思っていないんですよね。修復されたらもっと明るくなるんじゃないかと言われてはいますが。

これ、集団ポートレートなのですが、これをみて当たり前と思っていると、他の人の作品を見ると良さが際立ちます。『夜警』の左右も集団ポートレートではありますが、

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ね、パンフォーカスで、全員にスポットライトが当たって、全員カメラ目線で、ほのぼのと「わーい、写真撮影だ。かっこよくとってね」と言うゆるい感じで、私には退屈。

『夜警』は、確かに集団ポートレートですが、これから出陣だと言うような緊張感やそこからくる物語性があるように私には思えます。多分、だから好き。

 

なお、キレイに修復されているのでわかりづらいですが、右の犬の上くらい、傷がふたたつあります。

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傷の修復跡

これは1975年に切りつけられた跡。*2

 

もちろん修復済みなのですが、これが原因で痛んでいるのがわかってきたので、再修復が検討されていて。ついに、今回の "All the Rembrandts" が終わった7月から、公開で修復作業が行われる予定。

公開なので、インターネットでのライブもある模様。それはそれで見てみたい。

期間として、修復にどれくらいかかるんでしょうね?

 

懸念がないわけでもない。

手前と奥の明度のコントラストが変わるといやだなあと、ちょっと思っています。システィーナ礼拝堂の修復で、ものすごく絵が明るくなったのを知っているので。でもミケランジェロのあの絵、修復後の方が好きなんですよね。だから、夜警も修復前後で感じ方がどう違うか、よくわからない。よくわからないから、ちょっと楽しみ。

 

今回の展示を見ることで、ますますレンブラントが好きになってきた感じ。無理して行った甲斐がありました!

 

*1:なので、実際には物理的にはもぎらない

*2:しかし、手前にあるのに犬の解像度の低いこと。こういうメリハリも好きなのかも。同時代のべラスケス『マルスの休息 / Mars Resting/ Descanso de Marte』(1638年)もこういうメリハリですね。

Velázquez - Dios Marte (Museo del Prado, 1639-41).jpg
By Diego Velázquez - See below., Public Domain, Link