黒人差別を描く映画の典型の極みという感じがする。ハリウッド的どストレート。
2018年のオスカー作品賞受賞。
普通に考えたら、オーソドックス過ぎるが故に退屈極まりない映画になるところが、そうで無くしたのは、役者の力。
でぶでぶに太った役作りのヴィゴ・モーテンセン/Viggo Mortensenという無知で粗暴だけど気のいい用心棒と、浮世離れしたジャズピアニストを演じ、前年に2016年公開作『ムーンライト/Moon Light』でオスカーを得ているマハーシャラ・アリ/Mahershala Aliの力だろう。
ヴィゴは、何と言っても『ロード・オブ・ザ・リング』が名演だった。
アリは、実はいろいろ出ていることを後で知ったが、何と言っても『ハウス・オブ・カード』のネゴシエーターがよかった。
二人とも名役者です。
あんまり難しく考えず、バディームービーとして見るといい感じ。
ジャズ的に
残念ながら私はこのドン・シャーリーは知らなかった。
聞いてみると、繊細で端正な感じですね。
Don Shirley - The Very Best of Don Shirley - The Piano Jazz Legend
この頃はジャズの黄金期で、だいたいこういうメンツが現役でやってた頃です。
ジャズピアニストというと私が一番好きなのはビル・エバンスなのですが、彼の代表作である "Waltz for Debby" が1961年なので、ほぼ同年代の人。
56年、Round About Midnight / Miles Davis
56年、Saxophone Colossus / Sonny Rollins
57年、Blue Train / John Coltrane
58年、Moanin / Art Blakey
58年、Somethin' Else / Cannonball Adderley
59年、Kind Of Blue / Miles Davis
58年、The Scene Changes / Bud Powell
60年、Portrait in Jazz / Bill Evans
60年、A Night in Tunisia / Art Blakey
61年、Waltz for Debby / Bill Evans
61年、Thelonious Monk with John Coltrane
61年、Someday My Prince Will Come / Miles Davis
62年、Interplay / Bill Evans
#録音年ベース
時代
1962年の実際の話をベースにしたフィクション。
アメリカはケネディ大統領の時代。ドクターシャーリーが電話をしたのはその弟のロバート・ケネディ司法長官。
なので、絵とは違って、もっと冷戦真っ只中の緊張感溢れる時代だった模様。
公民権運動がらみだと
- 55年、モントゴメリー・バスボイコット。
- 57年、リトルロック高校事件
- 63年、ワシントン大行進とキング牧師 "I have a dream" 演説
- 64年、公民権法
厭戦気分から始まるフラワームーブメントは60年代後半。なので、『グリーンブック』の時代は、サイケとLove & Peaceの時代の前ということになります。
なので、この映画『グリーンブック』は、当時のリアル世相からすると、かなりおとぎ話よりにした雰囲気のものだとわかる。まあ、政治が殺伐としていたとしても、のほほんと生きていてはいけないわけじゃないから、こういう空気作りを含めて作品としての作り方の範疇のうちではあります。
それの善し悪しはあるようで、スパイク・リーが批判をしているとか。
映画として何を楽しむか、というのを突きつけられますね。
他人事でない話題ではあるが、かといって別の国の過去の話にそれほど理解感を持てるかというと現実的には難しい。
なんか、政治とプロ野球の話はしたらダメ、という系の話題かも。