cafe de nimben

見たものと、読んだもの

ラテン語の警句やことわざ

前々回の『アド・アストラ -スキピオハンニバル-』の題名のもとになる "Ad Astra Per Aspera" って見たことある気がすると思ったら、『彼方のアストラ』の第二話で、アストラ号の名前の由来になった言葉だった。

彼方のアストラ コミック 全5巻 セット

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  • 発売日: 2018/02/02
  • メディア: コミック
 

twitterか何かで知った、王道の宇宙SF少年漫画だ。 去年だったかな、アニメにもなったみたい。そちらは未見だが、これは面白いのでおすすめだ。伏線が色々回収されるので、感想はとても書きづらいので書いていないけど。

ちなみに、"Ad Astra Per Aspera" > 直訳 >  "to the stars through difficulties" > 「困難を越えて星へ」

ということで、映画をみていると、たまにラテン語の警句、格言、ことわざが出てくるので、ちょっとまとめてみたい。

「来た見た勝った/ Veni, Vidi, Vici」とか「賽は投げられた / Alea iacta est」はラテン語としてはあんまり使われない気がするので外した。

 

『いまを生きる』/ Dead Poet Society


"Carpe diem. Seize the day." - Dead Poets Society

もう亡くなってしまったロビン・ウイリアムス / Robin Williams が主演の1989年のアメリカ映画。オスカーの脚本賞受賞作品。

日本語題名の『いまを生きる』は、この中でロビン演じる教師が死せる詩人の会(=Dead Poet Society。英語の題名ですね)という同好会でいう言葉の一つ、"Seize the day" から来ている。これは、ラテン語の "Carpe Diem" からの英語直訳。日本語直訳だと、「詰め、今日の花を」

紀元前1世紀の古代ローマの詩人ホラティウスQuintus Horatius Flaccus の詩の一節。

Tu ne quaesieris, scire nefas, quem mihi, quem tibi
finem di dederint, Leuconoe, nec Babylonios
temptaris numeros. ut melius, quidquid erit pati,
seu pluris hiemes seu tribuit Iuppiter ultimam,
quae nunc oppositis debilitat pumicibus mare
Tyrrhenum: sapias, uina liques, et spatio breui
spem longam reseces. dum loquimur, fugerit inuida
aetas. carpe diem quam minimum credula postero.

ラテン語には不案内なので最後の一文が、元ネタ。意訳すると「まだ来てもいない明日のことに思い煩うことなく、今日この一日だけの花を摘むのだ」という感じ。

マインドフルネスの思想に似ている、というか元ネタ。ホラティウスエピクロスの快楽主義の影響にあると言われている。快楽主義と言っても、明日の辛いことは忘れて、今日はぱぁーっとやろうぜ、という意味ではない。アタラクシア/Ataraxiaという心の平穏があれば、外界の有象無象に影響されることなく生きていけるのだ、というお話。

日本だと禅とか清貧とか、なんかそういう感じ。古代ローマ人鎌倉時代禅宗が似たところにいるというのは、なかなか面白い。

ほぼ同じ意味で使われるのが "Nunc Est Bibendum" = now is the time to drink.同じくホラティウスの詩の一節。こっちは「いいから飲もうぜ」的なように感じてしまうけれど。

意味的には死生観にも繋がるので、Memento Mori / 死を思え になる。ほぼそのままのタイトルの映画といえば、クリストファー ・ノーランの出世作メメント』(2000)


🎥 MEMENTO (2000) | Full Movie Trailer in HD | 1080p

でもこれ、 メメントモリとはちょっと違う気もするんだけど。

 

似た様なことを過去に書いていたのを忘れていた(汗

nimben.hatenablog.com

 

 

汝平和を欲さば、戦への備えをせよ / Si Vis Pacem, Para Bellum

アクション映画が好きな人なら聞いたことがあるであろう、NATO軍の標準弾丸 9x19mm パラベラム弾の元ネタ。パラベラム弾って1901年の設計で、第一次世界大戦後主にヨーロッパ各国でパラベラム弾を使った銃が正式採用され始め、いまだに使われている。

1938年にドイツ国防軍の制式拳銃となった、というよりもルパン三世が使っていると言ったほうがいいのかな、ワルサーP.38が使っているのが、この弾丸。

もちろん他にも『007 Spectre』でジェームス・ボンドや『ダイハード』の2以降でもよく出てくるオーストリアグロック/Glock社の自動拳銃で使われる。

この "Si Vis Pacem, Para Bellum" という言葉のオリジナルは厳密には不明だが、AD4世紀ごろのローマ帝国軍事学者フラウィウス・ウェゲティウス・レナトゥス(Flavius Vegetius Renatus)の『軍事論』の一節とされる。

 

脱線:

しかし、NATOメートル法で、アメリカはマイル・インチ法なので、数字の意味が変わって面白いというか辛いというか。

9x19パラベラムといえば、口径9mm、薬莢長19mmのパラベラム弾と分かるが、例えばコルトガバメントの.45ACPと言われると、口径0.45インチ、薬莢長は書いていないが22.8mm、Automatic Colt Pistol (=ACP) と、比較するのに一手間かかる。ちなみにACPは元々の45口径コルトのレボルバーモデル用の32.6mmものを自動拳銃用に薬莢長を詰めた物。

メールなどで使う言葉

略語系でよく出てくるイメージ。よく使うのもあれば、ちょっと気取った様に思われるのもある。あと、数学の証明問題とか。

% = per cento (イタリア語 ) = per centum (ラテン語) = 100あたり = パーセント

これを知っていると、PPMはMは数だからMillionっぽいと推測できれば、100万分の1と分かる。(ちなみに Parts Per Millionだから、最初のPは難しい)

ちなみに、アメックスのカードに影絵出てくるのは百人隊長。英語でCenturion(センチュリオン)、ラテン語でケントゥリオ/ Centurio。ローマ軍のひとつの単位百人隊(実際にはばらつきがあるが80名程度)の指揮官である。百をHundredとだけ理解しているとわかりづらいがラテン語で100をCentumと知っていると、世紀Centuryもこの仲間だなとか分かるので、知っておくと便利。

CV =curriculum vitae = resume = 履歴書

VS = Versus = 対 

e.g. = exempli gratia = for example = 例えば

i.e. = id est = That is = すなわち 

etc = et cetera = and so forth = その他。エトセトラ。

Curriculum vitaeと発音している人は聞いたことはない。egもieも同様。基本的に書き言葉の話ですね。

 

vice versa = with position turned = 逆もまた同様に

de facto = by deed = the way things really are = デファクト、事実上の

この二つは、言いもし、書きもする。割とよく使われる。

ちなみに「デファクトスタンダード / 事実上の標準」があるのなら、事実上でない標準ってあるのか、といえば、あります。あんまり使われないけれど "de jure / デジュレないしデジュール" という「法令上の」という言い方がある。例えば、こんな感じ。

If Japan chose to legally establish English as the de jure national language, English could be the language used nationwide, especially for governmental environments, but the de facto national language would remain Japanese.

もし日本が英語を法制上の公用語にしたら、英語は日本中、特に政府系では使われる様になるが、事実上標準は日本語のままだろう。

普通は「標準」とだけ使えばいいので、あえて「法制上の」を付けないといけないとすると、それが空文になったときというのが行間に出てしまいますね。

 

ちなみに、英語の手紙の文末につけるRSVPはRépondez s'il vous plaît = Response if you please = お返事願いますなので、ラテン語ではありません。

 

どっとはらい。