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吉田秋生『詩歌川百景』第1巻

吉田秋生の美しい女子高生から始まる話といえば『吉祥天女』だと思っていたのだが、この『詩歌川百景』が、それとは別の角度でとってかわるかもしれない。

詩歌川百景(1) (flowers コミックス)

詩歌川百景(1) (flowers コミックス)

  

話は『ラヴァーズ・キス』からの『海街Diary』でに続く鎌倉三部作、と言っていいのか、スピンオフと言ったほうがいいのか。『海街Diary』完結後の番外編『通り雨のあとに』から続く物語。『BANANA FISH』>『YASHA-夜叉-』>『イヴの眠り』と似たような流れに、この作品群もなるのかな。

家族関係複雑なので、まとめてみた。 

香田:都(母)+婿養子(父:浅野)+幸、佳乃、千佳。(鎌倉)

浅野:浅野+季和子(仙台へ)
(不倫して、仙台に駆け落ち。すずはこの時点で季和子のお腹の中。佳乃が7歳の時、離婚成立。離婚まで揉めたかどうかは不明。浅野は離婚成立後、再婚)

香田:都+幸、佳乃(7)、千佳(幸たちは鎌倉に残る)

浅野:浅野+季和子+すず(仙台)(駆け落ち先の仙台で、すずが生まれる)

↓(1-2年)

今井:三姉妹の母、都は再婚して今井姓になり、家を出る。
(『海街Diary』2巻時点で札幌だが、この時はどこに住んでいるか書かれていない)

香田:都の母(=幸たちの母方の祖母)+幸、佳乃(9)、千佳(鎌倉)
(三姉妹は都の実母のところ、『海街Diary』の鎌倉のあの一軒家に住み始める)

↓(8年ほど)

香田:幸、佳乃(17?)、千佳(鎌倉)
(幸たちの祖母死去。幸達はそのまま姉妹三人暮らし)

↓ 

浅野:浅野+季和子(急死)+すず(仙台)

(その後、浅野は、陽子の前夫のDV問題で相談にのっており、男女の仲に。
おそらく陽子はこの時、夫のDV原因の離婚により、叔父の飯田家がある山形河鹿沢温泉に身を寄せていた。浅野は、仙台でタクシードライバーをしていたが、陽子のことがほっておけなくて、山形に移ったのではないかと思われる(特に物語には記述はない)
河鹿沢温泉「あづまや」で働き始める

浅野:浅野+すず+陽子+和樹、智樹(山形)
(浅野が陽子と結婚(浅野は再々婚、陽子は再婚)。すずが、陽子の連れ子である和樹、智樹と義理の兄弟になる)

浅野:浅野(死去)+陽子+和樹(8)、智樹(6)+すず(out)(山形)

香田:幸、佳乃(22)、千佳、すず(in. 13)(鎌倉)
(『海街Diary』の第一話)

↓(1年弱)

?:陽子+智樹(6?)+陽子の夫(浅野死去から1年たたず陽子、再々婚を前提に、智樹と共に山形から米沢へ『海街Diary』3巻『思い出蛍)

飯田:飯田夫妻(陽子のおじ)、妻+和樹(和樹は陽子にはついていかず、残る)

 ↓(1年弱?)

?:陽子+智樹+陽子の夫+守(守が生まれる)

↓(ほとんど間なし?)

飯田:飯田夫妻(陽子のおじ)、妻+和樹(9)、守(陽子との絶縁を条件に、和樹と守を養子として引き取る)(山形河鹿沢温泉)

?:陽子+智樹(7)+陽子の夫(智樹は陽子のもとに残る)

↓(9年)

小川妙(中3)親の離婚で東京から山形河鹿沢温泉へ。
(妙は「あづまや」の大女将の孫)

↓ (3年)

浅野すず、一旦帰省して山形へ。浅野13回忌でお墓を鎌倉に移しに。
飯田:和樹(20)+守(山形)
(和樹の義理の父は死去、義理の母は、認知症で施設住まい。和樹は「あづまや」で湯守見習い。実母陽子とは飯田の養子になった後、約束通り没交渉
小川妙(高3)

(『海街Diary』の番外編「通り雨のあとに」。この直後から『詩歌川百景』開始

 

通奏低音:意図しない残酷さに対する、やり場のない怒り

吉田秋生の話は、「無自覚や無知に由来する残酷さ」という理不尽に対する怒りと、それに対する意趣返しないし赦しの物語であるような気がする。

意趣返しにかかるのは、キャリア前半の話に多い。『吉祥天女』も『BANANA FISH』もそうだ。それが少しずつ赦しに向かいつつ、いや、赦すよりも怒らなければならないと盛り返す、そんな揺れを感じる。

どちらが正しいということでもない。赦すのが一番美しいが、復讐することで楽になることもあるしい、幸せが最高の復讐として無視する方法もある。そのキャラが納得するように、描かれればそれでいい。倫理の時間ではないのだから。

この『詩歌川百景』の1巻は怒りの方に比重が乗っている気がするが、さて、どうなりますか。小川妙の怒りは、吉祥天女を彷彿とさせる。

が、第一話がチャールズ・ブコウスキーの名作『町でいちばんの美女』と同じなのは、流石にわかってやっていると思うのだが、そうだとすると……。

町でいちばんの美女 (新潮文庫)

町でいちばんの美女 (新潮文庫)

 

  

一気読みした感想 

nimben.hatenablog.com

 

 いい詩だったので

nimben.hatenablog.com

 

 よく考えると8巻の感想書いていないのね。『ラヴァーズ・キス』の簡単な感想も

nimben.hatenablog.com