アーティゾン美術館初参戦。
前身のブリジストン美術館も、多分行ったことがないので、本当の初参戦。
東西都市文化ということで並べるのが正解だったかは、正直よくわからなかった。ファンゴッホ+浮世絵くらい近いとわかるんだけど。
しかし、琳派の名品はやっぱりいいなあとしみじみした。
前期は12月20日まで。後期は22日から。そして後期は年末の大目玉がある。こいつだ。
俵屋宗達 (Tawaraya Sotatsu, ? - ?) - Brother Sun , Sister Moon, パブリック・ドメイン, リンクによる
尾形光琳版も好きなんだけど、個人的にはこいつが一番好き。
一度だけ行くのなら、後期がいいんだろうけど、どうしても前期に行きたいものがあったのだ。それがこの、『第一章 the 琳派 3 墨の世界』
前期でしか展示しない『第一章 the 琳派 3 墨の世界』
琳派だとどうしても金箔が貼っている背景に、たらし込みなどの技法を用いて描かれるものという印象があるが、これは墨だけ。
琳派の太い流れである、俵屋宗達>尾形光琳>鈴木其一>酒井抱一の4巨匠勢揃いという豪華版。
まずは幽玄系。
俵屋宗達『蓮池水禽図』(国宝。1615年頃。京都国立博物館蔵)
俵屋宗達 - Emuseum, パブリック・ドメイン, リンクによる
墨だけで、たらし込みの技法など使って、生き生きと幽玄にというなんとも矛盾した物を両立させている。
俵屋宗達って、前述した『風神雷神』や今回も展示されている『舞楽図屛風』のような、金箔の上にかっこいいオブジェをカッコよく配置する、というちょっと剽げた面白さという印象を今まで持っていた。いやー、この『蓮池水禽図』のすーっとした線と、墨の濃淡で描かれる遠近感といい、かっこいい。墨の濃淡の遠近感というと、長谷川等伯『松林図屏風』(1593年ごろ)を思い出すが、作成年から考えると、等伯の技法を宗達が盗んだのかしら?
白蓮がすーぅっと泥の中から首を出して清い花を咲かせる、心洗われる作品。
参考:比較が色々あって面白い
鈴木其一『夜桜図』(個人蔵)
葉のシルエットに墨の濃淡をつけて置いてあり、ため息がこぼれるような美しさだった。同じ形のものを濃淡をつけ、リズミカルに構成して配置する琳派らしさがあるのだが、それが楽しさより、幽玄に寄っている。
かわいい系
俵屋宗達『狗子図』
たらし込みで、誑し込まれる。
尾形光琳『竹虎図』
ご存知、京都国立博物館の「トラりん」の元ネタ。
Ogata Kōrin (1658-1716) - Kyoto National Museum, パブリック・ドメイン, リンクによる
第一章 the 琳派:花木草花
これは、前期後期で半分ずつ。
尾形光琳『槇楓図屛風』(重要文化財。18世紀。東京藝術大学美術館蔵)
全体的に暗めの照明のなかで、金箔の上の赤い花が浮き立つような感じ。
詳細を見るとなるともっと明るい方がいいが、逆にもっと暗いのも陰影礼讃的によかったかもしれない。『桃山展』でもたくさん金箔物(狩野派)を見たが、暗い中の金箔って、静かで良い。間違っても秀吉の黄金風呂の金とは違う。
参考論文。
重要文化財尾形光琳筆「槇楓図屏風」東京藝術大学大学美術館所蔵の現状模写及び装潢
https://www.housen.or.jp/common/pdf/26_13_hayashi.pdf
(伝)俵屋宗達の同名作品(山種美術館蔵)の模写なのか。知らなかった。
序章は、前期後期総取っ替え。前期は「京」
トーハクの『桃山展』でもやっていたのとは別の『洛中洛外図屏風』(作者不明、江戸時代)が展示されていたので、流れを感じる。狩野派と琳派は金箔的に似ているので、どちらも同時に見ると面白い。
本阿弥光悦筆&(伝)俵屋宗達画『桜柳下絵新古今集和歌巻』(17世紀。個人蔵)
鉄板なのは、本阿弥光悦筆&(伝)俵屋宗達画の組み合わせ。ここでも『桜柳下絵新古今集和歌巻』がその綺麗さを発揮。
出てないけれど、これの親戚と言えば良いだろうか。
Tawaraya Sōtatsu and Hon'ami Kōetsu - Kyoto National Museum, パブリック・ドメイン, リンクによる
個人蔵なので、次いつ出るかわからないから、ここで見るの、おすすめです。
第二章 琳派x印象派 1. 継承
鈴木其一『藤、蓮、楓図』(通期。19世紀。アーティゾン美術館蔵)
傷みもなく、色が冴え渡って、藤の紫、蓮の緑、楓の朱赤が響きあって美しい。
ちなみにこちらは酒井抱一版
池田孤邨 『青楓朱楓図屛風』(通期。19世紀、アーティゾン美術館蔵)
酒井抱一の弟子で、鈴木其一の兄弟弟子である池田孤邨 『青楓朱楓図屛風』も素晴らしい。左側が朱の楓、右側が青々とした楓と、季節が分かれているのが美しい。赤と緑なので補色なので、ド派手な感じ。
第二章 琳派x印象派 2. 水の表現
尾形光琳『富士三壺図屛風』(前期のみ。18世紀、個人蔵)
ど迫力の六曲一双。なんだろう、東山魁夷っぽい。左隻の荒々しい海と、右隻の堂々たる富士山の対比が面白い。
クロード・モネ『睡蓮の池』(通期。20世紀、アーティゾン美術館蔵)
琳派 x 印象派なので、同じ部屋に琳派と印象派が展示されているのだが、ここの対抗でよかったのがモネ。
クロード・モネ - 不明, パブリック・ドメイン, リンクによる
朝日のような光を水面から反射して、とても穏やか。光琳とはずいぶん違って面白い。
第二章 琳派x印象派 3. 間(ま)
間というか、コンポジションの妙は、前期しか展示がない宗達のこれ
俵屋宗達『舞楽図屛風』(前期のみ。重要文化財。17世紀、醍醐寺蔵)
Tawara Sôtatsu - Catalogue, パブリック・ドメイン, リンクによる
浮世絵のように遠近法がない感じで、かっこいい衣装を着た舞楽する人たちをコンポジションの妙で見せる。なんとなく、金箔の上に、フォトショップでここら辺かな? と置いて作ったかのような。ポップでリズミカル。
ちなみに、 左隻右隻の真ん中手前5mくらいのところに、ドガの踊り子の彫刻があり、舞楽を一緒にしているみたいで良い配置でした。時と場所を超えた競演。
Ogata Korin, died 1716 - Nezu Gallery, パブリック・ドメイン, リンクによる
と、ノリが似ている。
第二章 琳派x印象派 5. 注文主
尾形光琳『孔雀立葵図屏風』(通期。重要文化財、18世紀、アーティゾン美術館)
左隻の赤白の花と緑の葉(=イタリア国旗模様)の立葵の茂った様子と、右隻の孔雀の夫婦の対比が、派手ではなく穏やかに見える。
第三章 the 印象派
琳派に圧倒されて、印象派はあんまり印象に残っていないのだけど、とは言え、これは大好き。
クロード・モネ『黄昏、ヴェネツィア』(1908年ごろ。アーティゾン美術館蔵)
クロード・モネ - 不明, パブリック・ドメイン, リンクによる
シニャックもよかった。絵具がゴツゴツしているのに淡い印象でいいのよね。大好き。
参考資料
美術館公式
公式サイト
ほぼ同時期開催の、琳派とタメをはる金箔集団、狩野派の図屏風たくさんの展示