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見たものと、読んだもの

杉谷庄吾【人間プラモ】『映画大好きポンポさん』

素晴らしい。一人の天才映画監督が生まれるところと、それを見出し育てたプロデューサー。という話なんだけど『ハスラー』とか『スティング』のようなお話ではない。

 

映画を主題にしたコミックって、それなりにあって、それなりにあるだけに、みんなちょっとひねりが効いている。そりゃそうだ、ストレートに描いたら凡庸なものにしかならないし、凡庸なものを読むくらいなら、映画好きは映画を見る。

本を開くと、4頭身くらいの女の子が「ポンポさんが来ったぞーっ!」である。ポンポさんである。往年の大プロデューサーである祖父の跡を継いで、B級映画をバンバン当ててがっぽり稼ぐ名プロデューサーである。

というリアリティラインの引き方をされると、おお、気軽にペラペラめくりながら楽しく読むタイプね、リラックスして読み流す感じかな、と思うわけじゃんか!

このリアリティラインでしかできないことと、このリアリティラインでこれをやっちゃうのか、というところの混ぜ方が絶妙。

天才新人監督誕生、という物語を綴るときに、その映画の中身を細やかに描きたくなるところをうまくぐっと抑え、読者の想像に任せるところとか、手練のシネフィルが作者だなって感じ。長くやろうと思ったら、これは役者の話だけど、『アクター』や『アクタージュ』のように、一緒に映画作品を見ているようなところまで描いちゃうんだろうけど、短く収めているってところも、映画っぽくて好き。映像といってもテレビドラマではなく、映画だものね。

映画を撮るというところが、アマチュアのそれでなくプロ監督としてのものであることを示す話とか、それでも溢れる自分だけの作家性とか、行きたい未来があるならそこに行くためのメンタルブロックを外して進む話とか。いいぞ。

全巻買ってもたった3巻だ。

映画が好きなら読みたまえ。(何故か上から目線