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見たものと、読んだもの

羽海野チカ『3月のライオン』16巻

天才は畏敬することすることしかできないのだが、もがく人には共感する。

一緒に戦っている気分になるのは、悪いことではない。

 

将棋のことはわからないけど、棋士のエピソードは割と好きだった。

9x9=81の世界の中で、同じ駒を使って、重厚な守りとか飄々とした攻めとか言われても、ピンとこないことを告白する。

しかしそれでも、棋士のもがきかたは、不幸な家族がそれぞれであるように、それぞれある。

主人公の零とその擬似家族との関係性という幹を書き上げる。

魅力的な敵ないし味方として、棋士のキャラを書き分ける。

中学生でプロ棋士になり、一度は高校生になることをやめ、一年遅れで高校生になった零。彼が自分では得られるはずもないと思っていたものが、徐々に揃えられていく。

1巻の零を知っていると、よくぞここまで、と言う、親戚のおじさんがちょいと見ないうちに成長した甥っ子を称えるようなそんな感じの16巻だった。

 

しかし、作風的に、ここから大ネガティブエンジンが発動して、読者全員を奈落の底に叩き落としそうな気がして、ものすごく怖いんだが。