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見たものと、読んだもの

デヴィッド・O・ラッセル/David O. Russell『世界にひとつのプレイブック』"Silver Linings Playbook"(2012米)

普通の人がちょっとダメになった時に、悪いことばかりじゃないさと言うための映画。


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演技がすごい

この映画のすごいところは演技だ。ナレーションがなく、劇伴も大袈裟でなく、派手なシーンもカットバックもない。いわば、ワンショットの長回し的に話が進んでいく。

にもかかわらず見ていられるのは、演者の演技のすばらしさだ。

主演男優、パット役のブラッドリー・クーパー (Bradley Cooper) 

主演女優、ティファニー役の、ジェニファー・ローレンス(Jennifer Shrader Lawrence) 

助演男優、パットの父役の、ロバート・デニーロ (Robert De Niro)

助演女優、パットの母役の、ジャッキー・ウィーバー (Jacki Weaver)

の4名が、第85回アカデミー賞にノミネートされ、ジェニファー・ローレンスがオスカーを獲っている。

とはいえ、映画のキャラクターとしては、割とみんなサイテーで、できればお友達になりたくないタイプ。

主演男優のブラッドリー・クーパーと、主演女優のジェニファー・ローレンスの演技がすごい。割と精神を病んでいる系の演技者がオスカーを取ることが多いが、彼らは、精神を病んでいる時と、寛解した時との間を地続きで演じているのが凄い、最後はきちんとロマンチックに終わるし!

原題のSilver Linings Playbookって?

Patのこのセリフが全てかもしれない。

You have to do everything you can, you have to work your hardest, and if you do, if you stay positive, you have a shot at a silver lining.

嫌でもなんでも、できることを全て、できる限り、やるんだ。それをやりきって、ポジティブでいられたら、銀の裏地を得られる。

銀の裏地って?

元は『失楽園 / Paradise Lost』の作者であるミルトンが書いた詩 (正確にはCOMUSという仮面劇内の詩)によるらしいが、今では "silver lining" だけで、不幸の裏には幸せがあるというイディオムとして使われる。

Every cloud has a silver lining. という諺にもなっている。

イメージとしては、真っ黒な雨雲の隙間からこぼれる太陽の明るい日差し。

「どんな雲にも銀の裏地がある」=「どんな暗雲の裏にも、太陽は輝く」=「不幸の裏には幸せが必ずある」

 

幸と不幸をついにする諺はたくさんある。

禍福は糾える縄の如し (fortune and misfortune are intertwined)だと、不幸の裏に幸福、幸福の裏に不幸と50:50な感じ。

"Dark Knight" でハービー・デントが言う "The night is darkest just before the dawn"


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"The night is darkest just before the dawn" / 夜明けの直前が、最も暗い (=ドン底の次には夜明けが必ず来る)は、個人的には未来よりも今の辛さの方が強いように感じる。 "Darkest" という言葉のせいかもしれない。(厳しい状態だと、最悪の底にもっと悪いものがあるんじゃないかと思ってしまうから)

そういった意味で、"Every cloud has a silver lining" はもうちょっと明るい(暗雲じゃなくて雲だし)感じがして、よりポジティブでポップな感じがして良いかも。

Playbookはよくわからない

もちろん、これが、劇中でみんながハマっているフィラデルフィア イーグルスNFLのチームだから、アメフトのPlaybook/戦術帖というか定石集のことを指すのだとおもう。

けれどもそうだとすれば、Playbookを見て、その通りにやってみて失敗したり成功したりするというコメディっぽくなるんじゃないけど、そうじゃないし。

となると、Playbook = 脚本という意味で捉える方が自然かもしれない。

"Silver Linings Playbook" = 「穴から這い出た主人公が幸せになる話」最近のラノベっぽい題名で考えると「浮気にブチ切れて怒りのあまり接見禁止をくらった私が、最後に幸せになっちゃいます」かな。軽すぎるけど。