実際の地動説
コペルニクスの『天体の回転について』は1543年だから、この物語世界の最初は15世紀なので、次の世紀に結実する話。この物語で出てくるかどうかは、まだわからない。そもそもこの物語の最初では、コペルニクスは生まれていないかもしれない。
ニコラウス・コペルニクス (Nicolaus Copernicus)[1473-1543]
不明 - http://www.frombork.art.pl/Ang10.htm https://www.welt.de/img/kultur/mobile152954235/1212503297-ci102l-w1024/Kopernikus-Gemaelde-in-Krakau.jpg パブリック・ドメイン, リンクによる
「それでも地球は回っている」のガリレオ・ガリレイ (Galileo Galilei) [1564-1642] は16-17世紀の人、つまりコペルニクスのほほぼ100年後を生きた人。
ユストゥス・サステルマンス - scan of the 2D image as in notes below, パブリック・ドメイン, リンクによる
ガリレオと同世代の人、ヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler) [1571-1630]
ケプラーの3法則。惑星が楕円軌道であること(第一法則)などを表す。
ケプラーの法則を拡大して、万有引力の法則を導いた、アイザック・ニュートン (Isaac Newton) [1643-1727]
After ゴドフリー・ネラー - パブリック・ドメイン, リンクによる
年表
紀元前3世紀:古代ギリシアのサモスのアリスタルコス『太陽と月の大きさと距離について』(15世紀にラテン語訳される)[チ世界では、キリスト教以前の異教徒扱いされている]
2世紀ごろ:プトレマイオスによる天動説が優位となる。
1543年:コペルニクス『天体の回転について』
1609年:ハネス・ケプラーがケプラーの法則(第1法則および第2法則)を発表
1616年:第1回異端審問所審査で、ガリレオ・ガリレイがローマ教皇庁検邪聖省から、以後、地動説を唱えないよう注意を受ける
1630年:ガリレオ『天文対話』(地動説の解説書)
1633年:ガリレオは第2回異端審問所審査で、ローマ教皇庁検邪聖省から有罪(終身刑)の判決を受ける
1992年:ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世はガリレオ裁判の誤りを認め、公式に謝罪
最新の研究では、地動説は異端迫害されてないらしい
上記年表で見る限り、ガリレオ以前に地動説の基礎となるケプラーの法則を発表しているケプラー。しかし彼は迫害を受けていない。
ガリレオが有罪とされたのは、地動説というよりも別の政治闘争の結果という意見が現在は主流で、地動説が本作のように迫害されていたということないようだ。
権威を否定して、「それでも地球は回っている」として悲劇のヒーローをさせるというのが、人気を得たということなのかもしれないが。
私が科学に興味を持った頃は、この作品世界のように迫害されていたという説が一般的だったのだけれど。
21世紀になっても歴史って新事実が出て来るものだと感心する。そう、「いい国作ろう鎌倉幕府」ではもはやない、というのを知ったのと同じくらい衝撃だった。
大学の教養課程で科学史をとったような気がしたんだが。まるで覚えていないな。
リアリティライン
これ、とても難しくて、自分の中の判断基準も曖昧。作品によるとしか言いようがなくて困っている。
地動説で迫害されているわけでもないのに、この作品は嘘を書いている、というのは可能なのだが、この作品、とても面白いのです、私にとって。
宇宙を描くのに、『スターウォーズ/Star Wars』(Episode IV: A New Hope. 1977)で宇宙に音があるのはおかしい、というのがあまり意味がないように、フィクションだから何をしてもいい、という極論に振るのは、ありといえばあり。
ただし、宇宙に音をなくしてBGMにクラッシックをつけた『2001年宇宙の旅 / 2001: A Space Odyssey』1968)の美しさは格別で、これも大好き。
小説や映画など、「リアルがいいんじゃなくて、リアリティが大事」というのはよく言われるのだが、リアルでなさすぎて、専門家の人が見ていられないと文句を言うのもよくある話。
私としては、「面白くて、気持ちよく騙してくれるなら、いい」と言うことだとは思うのだが、その基準を人にうまく説明できない。説明できるようになるんだろうか。