cafe de nimben

見たものと、読んだもの

斉木久美子『かげきしょうじょ!!』白泉社(12巻)

9巻から続く、『オルフェウスとエウリュディケ』編。

 

 

「全は個にして、個は全なり。個は孤にあらず」

鋼の錬金術師』にも出てくる「一は全。全は一」ににているが、「個は孤にあらず」がついている意味は何か、というのもモチーフになっているように思う。憑依型の演者であるさらさは、11巻でも暴走していた。それを、一つの芸術のピースとして、他を置いてきぼりにせずに、場にはまることができるのか。

私は「個は孤にあらず」を、「個が別の個を孤にしないように動いて全となる」というように読み取った。

 

さらさのように、ナチュラルに暴走し、それが人を魅了するというのが、主役の器だよなあ。
才能などで周りを圧倒する存在になれるというのは、フィクションの正しい楽しみ方かと思う。
ある意味、異世界転生無双のような。現実世界では、暴走したら使えないやつでおしまい、だからね。

 

サブストーリーとして、奈良っちが、少しずつロボから人間になっていく姿がとても良い。短期的には自分を押し殺して、その場を保つことがいいことはあるんだけど、押し殺すのが当たり前になると、あるべき何かを永遠に失う気がするから。

委員長の杉本さんの、メタ認知力の強さと、それが故に自分を枠に止めようとする無意識の力にも、ちょっと危惧を覚える。