これは傑作。
タイミングが合わず劇場で見ることができなかったことを悔やむ。
映像が美しい
なんといっても、映像が美しい。構図も、色彩も。
ノルウェー、イタリア、ジャマイカ、キューバ、イギリスなどなど、ハリウッド大作ならではの世界各国を飛び回る。こう言うのは、ブロックバスター映画として理想的。旅行に行った気になれるしね!
それだけでなく、情報デザインが美しい。
見なければならないところは、見逃さないようにしっかりと見せる。それ以外のところは、被写界深度の浅さを使ってぼかすとか、視線誘導が心地いい。「なんのために、こんなの映しているんだっけ」みたいなノイズを感じることがない。伏線にしたいものは、一瞬ピントを合わせた後、ピントを外すなどなども含めて、「わかっている」感がある。このため163分もあるのに、全然ダレない。この映像だけでも、大満足。
Daniel Craig 版の5作
ダニエル・クレイグ版としては最後の作品であることを銘打って作られている。過去の5作を色々と引きずっているところがあるので、できれば、過去作も見ておくと楽しい。
以下の順番。単品でも楽しめるが、この順で見た方が、いろんな布石がわかるので、おすすめ。
『007 カジノ・ロワイヤル』(2006) "Casino Royale"
『007 慰めの報酬』 (2008) "Quantum of Solace"
『007 スカイフォール』(2012) "Skyfall"
『007 スペクター』(2015) "Spectre"
『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021) "No Time to Die"
以降は、ネタバレ
ネタバレあり感想
まず、冒頭
007はサスペンスはあるけど、ホラーという文脈がくると思っていなかったので、まずびっくり。ノルウェーのあの絵面に、能面と言うのもまた怖い。なぜ能面だったのかは説明されない。しかし、これは、『13日の金曜日』のようなホッケーマスクより、不条理に怖い。
Ana de Armasがかわいい
キューバのCIAエージェント、パロマ役。天然ウッカリさんって、007には必要ないんじゃない? と思っていたら、そのキュートさと、実はの実力披露の両方で嬉しい誤算。
アナ・デ・アルマスは、メイドAIのジョイとして出演している。気が付かなかった!
大事なキャラは、惜しみなく殺す
惜しみないのがすごい。もうちょっと引っ張りたいとかあったろうに。しかも、きちんとした見せ場を作っているところが、引退興行っぽくて素敵。
いつものキャラは、きちんといつものまま
だったり、そうでもなかったりという裏切りもありつつ。
Qはなんかおっさん化したのかな。やはり "Skyfall" での初登場が一番好き。
Mは、ジュディ・デンチがよかったけれど、殉職後、引き継いでいるレイフ・ファインズの、大会社の専務的なちょっと人間臭いところもいい。
007を引き継いていたのが、黒人女性エージェントというのも、現代っぽくて良い。
悪役対決
ローガン・アッシュの小者ぶりは、こういう映画には必須のスパイスなので、好き。
ブロフェルドは、今作ではちょっと『羊たちの沈黙』に影響を受けすぎのような気もする。
サフィンは、正直、そんなに怖いかなあという感じ。冒頭のシーンはすごく怖かったのだけど、それはホラー的かつプレイヤー的な怖さ。"Spectre" のブロフェルドは悪役の組織のトップとしてというところが強いので、格が違う気が。でも、Spectreを壊滅させたトップとしての怖さが、もうちょっと出てくるとよかったかも。
恋というか家族
恋として一番好きだったのは、ヴェスパーだと思うのだけど。そして、冒頭でそれを吹っ切るところから始まるというのも面白い。仁義を切っている感。
マドレーヌとの恋は前作 "Spectre" から始まるのだけれど、今回は恋というより家族じゃないかという気もする。
実は、最後の最後にマドレーヌを悪役に育ててしまうサフィという図があるのかと思っていたが(『バットマン ビギンズ』のラーズみたいな感じで)流石になかったかあ。あったらすごいどんでん返しだと思っていたのだけど。
ナノボット
これは、あんまり追求しないw
こういうのは、本当はノイズになって見づらくなるはずなのだけど、きちんとキャラクターの動きその他で押し切るのが、映画として正しくて好き。自分でも、なんで押し切られてしまったのかよくわからない。
ミサイルも、地下にある施設を狙うなら、クラスタ的に分裂するものじゃなく、『シン・ゴジラ』でも出てきた、地中貫通爆弾にするんじゃなかろうかと思うけど、画面が美しいからいいや。
BEING JAMES BOND
Daniel Craig がJames BOND を演じてきたことを振り返るドキュメンタリー。