19世紀から20世紀のかけての日独収集のオールスター!
松方コレクションとドイツのフォルクヴァング美術館が収集していた大体19世紀後半から20世紀前半までの作品のいいところを集めて展示してある感じ。このため、超目玉の作品を中心に、と言うよりもこの年代の絵画を同時代性で俯瞰して見るような展示で、面白かった。オールスターキャストといっても題名の通り、自然を人間が見てどう思って絵画として書き残したのかという補助線が引いてある。自然といってもそれは、森とか川とか海だけではなく、人間のポートレイトも含まれる。
個人的にはリヒター展を先に見ていたので、頭の中で参照しながら鑑賞できたのは楽しかった。
Ⅰ. 空を流れる時間
モネがどっさり。今回で一番の好みは、クロード・モネ/Claude Monetとゲルハルト・リヒター/Gerhard Richterの共演。
モネとロスコーも相性が良かった*1が、モネとリヒターも良かった。
この二つだけ、背景が白く、Iの中でも大きく浮き上がっている印象で、この二つを同時に見てほしいというキュレーターの意志を感じる。
どうやら私は、リヒターの中でも、写真を精密に模写しているように見えてぼやかして油絵で描くフォトペインティングというものが好きらしく、この『雲』をすごく推したい。
国立近代美術館のリヒター展でも、モネ『睡蓮』を彷彿とさせるアブストラクト・ペインティングがあった。リヒターがお好きなら、同時期にやっている両方を見ると楽しいかも。
II. <彼方>への旅
ルドンとかゴーガン *2 とか。
III. 光の建築
前半がポール・セザンヌ/ Paul Cézanne,などの印象派、ポスト印象派、後半からワシリー・カンディンスキー/Vassily Kandinsky、パウル・クレー/Paul Klee などの抽象画へと。その中でも好きだったのが:
アクセリ・ガッレン=カッレラ/ Akseli Gallen-Kallela "ケイテレ湖 / Lake Keitele" (1906)
ケイテレ湖はフィンランドの湖だそうな。画面の真ん中に大きく描かれるジグザグが素敵。
ポール・シニャック / Paul Signac "サン=トロぺの港 / The Port of Saint-Tropez" (1902-02)
右下の水夫さん達を拡大。こう拡大しても、キレイ。
シニャック "ポン・デ・ザール橋 / The Pont des Arts" (1912/13)
絵だけでも素敵なんだけど、照明が当たるとキラキラ光るのね。それが夜の月光の反射する静謐さとマッチして、とても素敵。
ジョアン・ミロ/ Joan Miró "絵画 / Painting" (1953)
注:今回は撮影禁止。昔撮った写真。
IV. 天と地のあいだ、循環する時間
フィンセント・ファン・ゴッホ『刈り入れ』"The Wheatfield behind Saint Paul’s Hospital with a Reaper" (1889)
耳そぎ事件が1888年12月なので、その後の作品。この辺り以降が一番ファン・ゴッホらしく感じる。黄色という楽しげな色なのに、悲しさも感じる。
他にもモネの『睡蓮』があり、特に上半分にダメージがあるものがあった。作家の意図とは違うので写真には撮らなかったが、逆にいい感じだった。これを意図的にやったのが、リヒターのアブストラクト・ペインティングなのかな〜という気もする。
その他雑感
大きい号数の展示はたくさんあったのだけど、リヒター展で感じたような、大きいからいい、という感じはしなかった。当たり前すぎるが、大きい小さいと好き嫌いは、別の話。