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見たものと、読んだもの

アンディ・ウィアー 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』/ Andy Weir "Project Hail Mary" (2021)

大傑作のSF小説

 

同著者の『火星の人』ないしそれの映画化『オデッセイ』*1 がお好きであれば、気に入ること間違いなし。

 

読むにあたって、主人公の一人称小説なので、主人公が知り得る情報しかない状態で始まる。よって、これ以上の情報は入れずに、読書開始を乞う。

もし、もうちょっとだけ情報を、というのであれば、題名のお話。

アメフトの最終クオーターで、負けてるチームが一か八かの大逆転を賭けて投げるロングパスのことを Hail Mary Pass*2 という。昭和の洋画紹介風にいえば「聖母マリア様にお願い*3 作戦」ってな感じ。

宇宙船らしきものが表紙のこの小説で、神頼みするような作戦って何? 一体、地球がそういう状況になっているということはどういうことで、主人公はどういう立ち位置でこれに関わるのだろう? そしてこの「大作戦」は成功するのかしないのか?

そういうハラハラドキドキが味わえる逸品です。

 

 

 

ここから、ネタバレ。

 

 

 

細かいポイントは、訳者あとがきにうまくまとまっているので、読了後に読むといいまとめとして思い出せてとてもよき。

よって個人的ポイントだけ書くと、

 

  1. 絶望的なところでも悲壮にならずにユーモアを交えて前進する主人公がかっこいい
  2. あそこでああいう判断をする主人公がいい人
  3. 数々迫り来るトラブルが、きちんと伏線とともに回収されるのが気持ちい

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

まさかのファーストコンタクトものとは。

 

この、「ええっ」をこれから楽しむ読者は、これらの驚きをこれから味わうのかと思うと、羨ましい。

オススメです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:『火星の人』は読んでいないのだけど、映画、面白かったです。

nimben.hatenablog.com

*2:英語版 Wikipedia による説明:

en.wikipedia.org

*3:Hail Mary = Ave Maria = アヴェマリア / 天使祝詞 というキリスト教のお祈り。

ラテン語
    Ave Maria, gratia plena,
    Dominus tecum,
    benedicta tu in mulieribus,
    et benedictus fructus ventris tui Jesus.
    Sancta Maria mater Dei,
    ora pro nobis peccatoribus,
    nunc, et in hora mortis nostrae.
    Amen.

 

英語
    Hail Mary, full of grace,
    the Lord is with thee;
    blessed art thou among women,
    and blessed is the fruit of thy womb, Jesus.
    Holy Mary, Mother of God,
    pray for us sinners,
    now, and at the hour of our death.
    Amen.

 

口語和訳
    アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、
    主はあなたとともにおられます。
    あなたは女のうちで祝福され、
    ご胎内の御子イエスも祝福されています。
    神の母聖マリア、
    わたしたち罪びとのために、
    今も、死を迎える時も、お祈りください。
    アーメン。

 

なお、シューベルト『エレンの歌第3番エレンの歌第3番』

www.youtube.com

冒頭が "Ave Maria!" で始まるため、天使祝詞にメロディを乗せたのだと私は誤解していたが、違うみたい。それでも「アヴェマリア♪」で思い起こす曲は、やっぱりこれ。