「もらいタバコのジーン」が、タバコをもらうことで転がる物語。
ドーワー王国は13の自治区で構成されており、それぞれがかなり異なるキャラクターを持つ。これを統一的に束ねる官僚組織がACCA。ACCAは平和の象徴の赤い鳥。各自治区の支部を監察するのが、監察課。このため、13区全ての自治区に支部を持ち、抜き打ちで監査をする。そこの副課長が「もらいタバコのジーン」。
オノ・ナツメの良さは、説明セリフが少ないところ。いわゆるネームを話しているのではなく、必然性があってキャラクターがお話をする。そして、そのため、その人にとって当然のことは言葉にしない、あるいは誤解していれば誤解したまま話す。真実の吐露になることもあるし、信用できない話し手にもなるので、いい意味で気が抜けない。
もう一つは群像劇であること。独り言に近いような、あるいは神の視点のナレーションがないということは、必然があるキャラクター同士が話すのが大事。このため、魅力的なキャラクターが複数いないといけないのだが、ここを当たり前のように進めるのが素晴らしい。
読み終わった後に、また最初から読むと気持ち良い。
タバコはもう吸わないのだけど、気持ちよく吸いたくなるねぇ。