第7巻が出てきたので既刊も含めて一気読みした。
『海街Diary』って、落語なんだよね、「人の業を肯定する」という意味で。
『海街Diary』には天才はでてきません。普通の人ばかり。普通というか、ちょっとダメな人の方が多いかもしれない。
たとえば、すずのお母さんって、ダメでしょ。ぼくの近くにいたら侮蔑の対象として書くよ絶対。
でも、そうは書かない。
そんな感じの、ふつうだったら「バッッッカじゃないの!」と否定してしまいたくなるような人の心理まで照らしてみて、その業を少なくとも否定はしない。一理はあるのね、くらいには肯定していくという、気の遠くなるような話を、丹念に丹念に描いている感じがある。
ぼくにとって吉田秋生って、『BANANA FISH』なのだけど、作家としては今の『海街Diary』が好みになってきている。
『BANANA FISH』『吉祥天女』にしても、基本は頭が切れる若き天才がが、それが故に苦しみ、落とし前をつけ、そして平安を得て終わるという話。
『海街Diary』は、ふつうの人が、ふつうのひととかかわりあう中で、苦しみ、理解し、受け入れるかどうかは別にして許し、そしてふつうの生活をして人生は続いていくという話。
ドラマとしては前者の方がおもしろいのだけど、リアルなのは後者だとおもう。
『イブの眠り』から『海街Diary』までの間に、吉田秋生になにがあったんだろうね?