cafe de nimben

見たものと、読んだもの

manga

魚豊『ひゃくえむ』(全5巻)

ひゃくえむ = 100m 陸上競技の100m走の話。 ひゃくえむ。新装版 上 (マガジンポケットコミックス) 作者:魚豊 講談社 Amazon 舞台は100m走の話だが、自分の尊厳とどう向き合うか、という話。 そういう意味では、『チ。』とも通じるものがある。 nimben.hatena…

オノ・ナツメ『BADON』(既刊5巻)

『ACCA13区監察課』の世界で、時系列はちょっと後の話。 ラスベガス的な自治区であるヤッカラの刑務所に収監されていた囚人四人が、刑期を終えて出てきて、首都BADONでタバコ屋を始める。 BADON 1巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス) 作者:オノ・ナツメ…

オノ・ナツメ『ACCA13区監察課』(全6巻)

「もらいタバコのジーン」が、タバコをもらうことで転がる物語。 ドーワー王国は13の自治区で構成されており、それぞれがかなり異なるキャラクターを持つ。これを統一的に束ねる官僚組織がACCA。ACCAは平和の象徴の赤い鳥。各自治区の支部を監察するのが、監…

アベツカサ/山田鐘人『葬送のフリーレン』(8巻。続刊中)

文章としてはとても明瞭なのに、意味が全く取れない、ということを経験したことはないだろうか? 葬送のフリーレン(8) (少年サンデーコミックス) 作者:山田鐘人,アベツカサ 小学館 Amazon 第一巻からは、1000年以上生きるエルフと100年も生きない人間との…

夢枕獏原作、谷口ジロー作画『神々の山嶺』(かみがみのいただき)

山に登るということの凄み。 神々の山嶺 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) 作者:夢枕獏,谷口ジロー 集英社 Amazon 神々の山嶺(上) (集英社文庫) 作者:夢枕獏 集英社 Amazon ヒラリーとテンジンよりも先にエヴェレストに登頂したことがある人がいるかも…

魚豊『チ。-地球の運動について-』(第8巻/最終巻)

収まるところに収まって、きちんと終わってくれてありがとう。 井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る。 15世紀という、今では考えられないほど知の流通がなされていなかったカエルは、地動説という大海を知ることはできなかった。しかし、自分がい…

ソフィ・シュイム(原作)泉光(コミカライズ)『図書館の大魔術師』(第6巻)

一般的には、メディナ・ハハルク回と言われるのだろうけど、私にはイシュトア先生回ですね。素敵。 図書館の大魔術師(6) (アフタヌーンコミックス) 作者:泉光 講談社 Amazon 少年マンガの良さの一つに、まだ何者でもない少年が、何かになりたいと痛切に願…

福本伸行『賭博黙示録カイジ』

Kindle Unlimited に入っていたので、今更ながら、読んだ。 こう言う話だったのか。「ざわざわ」「圧倒的ーー」など、コマを切りはりした引用は多く見ていたのだが、オリジナルを読んで合点がいった。 現時点でUnlimitedに入っているのは、以下の3シリーズ…

斉木久美子『かげきしょうじょ!!』白泉社(12巻)

9巻から続く、『オルフェウスとエウリュディケ』編。 かげきしょうじょ!! 12 (花とゆめコミックススペシャル) 作者:斉木久美子 白泉社 Amazon 「全は個にして、個は全なり。個は孤にあらず」 『鋼の錬金術師』にも出てくる「一は全。全は一」ににているが…

ヤマシタトモコ『違国日記』第9巻

前回の感想で、こんなことを書いた。 朝の、たまにちょっとおバカさんかもと思う時もあるけど、てらいなく人に質問をぶつけることができる、という点に対して、私はすごく尊敬する。 nimben.hatenablog.com 今回は、あえて言えば「才能」って何、かな やばい…

野田サトル『ゴールデンカムイ』(連載最終回と期間限定全話無償公開)

大幅加筆がある模様なので、単行本派の人も、連載版を読むといいし、まだ読んだことがなければ、無償だし、登録も不要なので、立ち読みみたいな感じで読んでみるといい。 外伝とかいくらでも作れると思うけど、本伝としては314話で、キレイに終わる。 tonari…

源頼光の鬼退治、酒呑童子編

こちらで出てくる nimben.hatenablog.com 3巻の扉絵は、源経基。その子が満仲、孫が頼光。 そして、鬼として描かれている、酒呑童子、紅葉と茨木。 この鬼たちは頼光時代の伝説で、将門の物語とは別。このため、本編ではおそらく頼光はもうでてこないとおも…

夢枕獏・伊藤勢『瀧夜叉姫 陰陽師絵草子 』(第3巻)

少しずつ、少しずつ、大きな幹が見え始めてきたかも。 今までほぼバラバラだったエピソードが線でつながり始めた。さらに後で辻褄が合ってくるのかもしれない。(楽しみのために、夢枕獏の原作は読まないでおこう) 表紙は、平将門。きちんと異形として左の…

魚豊『チ。-地球の運動について-』(第7巻)

あああ、完全に抜けていた! Pはポルトガルじゃなくて、ポーランドか!!! 羅針盤>大航海時代>ポルトガルと、信じて疑わなかったのが、勘違いの原因ですね。 チ。―地球の運動について―(7) (ビッグコミックス) 作者:魚豊 小学館 Amazon ポーランド ポー…

七尾ナナキ『異剣戦記ヴェルンディオ』(3巻まで。続刊中)

『Helck』の七尾ナナキ作品なので、最初の世界観がミクロ寄りに描かれるため、大きいところが読めないことはワクワクにつながるので、とても楽しみ。 異剣戦記ヴェルンディオ(1) (裏少年サンデーコミックス) 作者:七尾ナナキ 小学館 Amazon 表紙の通り、…

たらちねジョン『海が走るエンドロール』(2巻。続刊中)

65歳の老女が映画を撮る話、というまとめ方は正しいのだが、本質はそこではない気がする。 なぜか自分で蓋をしてきてしまった何かを、誰が何を言おうと、きちんと解放する話。今まで怖くて見てこなかったものに、きちんと対峙して、解像度高く見てみることを…

深見じゅん『悪女(わる)』(全37巻)

2022年4月から日本テレビ系列で再ドラマ化されるということで、久々に原作を読んでみた。 悪女(わる)(1) (BE・LOVEコミックス) 作者:深見じゅん 講談社 Amazon 1988-1997年まで連載されていたので、バブル絶頂期の様子が背景に残っているのはとても興味…

日本橋ヨヲコ『少女ファイト』講談社(第18巻)

待望の18巻。 大体年に一回単行本が出るペースだったのだが、17巻は2020年7月発行なので一年半開いた。 しかも、今回は最大の敵、雨宮摩耶戦である。(あえて、青磁高校戦とは言わない) 少女ファイト(18) 特装版 (イブニングコミックス) 作者:日本橋ヨ…

吉田秋生『詩歌川百景』第2巻

人に優しい嘘。自分にだけ優しい本音。 弱さを飲み込む強さ。弱さを凶器にする無意識の卑怯さ。 詩歌川百景(2) (flowers コミックス) 作者:吉田秋生 小学館 Amazon 「街で一番の美女」杯でいうと、大女将から、その娘、孫娘と繋がっている。 大女将。 街…

魚豊『チ。-地球の運動について-』/ 15世紀欧州の宗教と美術と音楽と大航海時代

前提として、14-16世紀ヨーロッパについて調べてみた 15世紀P王国。おそらくアディス朝ポルトガル王国。 ゴシックから、ルネッサンスへ変わっていく時期。ルネッサンスを朝日とするなら、チ世界は一番暗い夜明け前。 キリスト教 細かい派閥はあれど、まだカ…

魚豊『チ。-地球の運動について-』/ 地動説とリアリティライン

実際の地動説 コペルニクスの『天体の回転について』は1543年だから、この物語世界の最初は15世紀なので、次の世紀に結実する話。この物語で出てくるかどうかは、まだわからない。そもそもこの物語の最初では、コペルニクスは生まれていないかもしれない。 …

魚豊『チ。-地球の運動について-』(既刊6巻)

面白いという噂を聞いていたのだが、その通りだった。 年末年始に既刊6巻を大人買いして追いついた。 地動説を信じる人たちの戦い、と言ってもいいのかもしれない。 地動説自体を信じているのか、地動説を正統と叫ぶことで得られる何かを得ようとしているの…

2021年に買ったマンガ / 完結作品

追っかけていた中で、2021年に完結した作品 藤本タツキ『チェンソーマン』 [まとめ買い] チェンソーマン 作者:藤本タツキ Amazon 展開が最後まで全く想像できなかったのがすごい。 綺麗事では無い、人間のダメさ卑怯さ狡さ、自己評価の過大と過少の揺れがど…

2021年に買ったマンガ / Web系

去年は私にとって、マンガ体験の比重がWebに移った年だった。 といっても、今自分が紙の雑誌で追いかけているのは、月刊アフタヌーンだけなので、別のものに変えたというよりは、追っかけるものが増えた、というのが正しいけれど。 今までも、収納スペースの…

原作:青木潤太朗 漫画:森山慎 『鍋に弾丸を受けながら』(1) KADOKAWA

治安の悪い場所の料理は美味い そう思いませんか? (中略) 日本みたいに安全な場所って、"70点から90点のものがどこでも食える" んですよ そりゃあ素晴らしいことです でも危険とされるところ… グルメなどでは絶対に赴かないはずのエリアかな… そういう場…

原作:井龍一、作画:伊藤翔太『親愛なる僕へ殺意をこめて』講談社

色々仕掛けられているので、ネタバレなしにいうのは難しいが、猟奇的サスペンスミステリー。『羊たちの沈黙』を横溝正史的なウエットにしたものが好きな人におすすめ。 親愛なる僕へ殺意をこめて(1) (ヤングマガジンコミックス) 作者:井龍一,伊藤翔太 講…

ヤマシタトモコ『違国日記』第8巻

相変わらず、深いテーマを、深刻にはならずに、むしろコミカルに描く卓越の技。 違国日記(8)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing) 作者:ヤマシタトモコ 祥伝社 Amazon えみりのカミングアウトの話と、朝の父親は「誰」だったのかを調べる探偵話。どち…

夢枕獏伊藤勢『瀧夜叉姫 陰陽師絵草子』2巻

「スーパー歌舞伎でトールキン」の第二巻。 いろんな布石を打つ巻ではあるが、藤太 vs 大百足戦と言う絵的にも大変楽しいものもあり、飽きることはない。 [まとめ買い] 瀧夜叉姫 陰陽師絵草子 作者:伊藤 勢 Amazon 伊藤の画力の高さは、これだけで楽しい。老…

羽海野チカ『3月のライオン』16巻

天才は畏敬することすることしかできないのだが、もがく人には共感する。 一緒に戦っている気分になるのは、悪いことではない。 3月のライオン 16 (ヤングアニマルコミックス) 作者:羽海野チカ 白泉社 Amazon 将棋のことはわからないけど、棋士のエピソード…

田素弘『紛争でしたら八田まで』7巻

ナウル編のエピローグと、シンガポール編全編と、日本編のプロローグ。 紛争でしたら八田まで(7) (モーニングコミックス) 作者:田素弘 講談社 Amazon もうちょっとエピソードを長くした方がいいんじゃないかと言う気がする。 フォーマットがあるのは強く…