cafe de nimben

見たものと、読んだもの

新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」2020

新国立劇場バレエ団を久々に。

今年、吉田都が芸術監督になり、最初の作品が10月のピーター・ライト版『白鳥の湖』のようだが、どう変わるのかな。

 

新国立劇場バレエ団は、背格好の揃った手足の長いダンサーが踊っているので、とても見栄えが良い。華奢すぎないか、とは思うこともあるけど。


新国立劇場バレエ団「レ・シルフィード」リハーサル映像

 

演目は以下の4つ。

「セレナーデ」
「ライモンダ」より パ・ド・ドゥ
「海賊」より パ・ド・ドゥ
「DGV©」(日本初演)

 

ローザンヌの印象がどうしても強い「ライモンダ」「海賊」なのだが、奨学金狙いの若者が踊るのと、プリンシパルが踊るのとでは随分と違う物だと感じた。同じ振りなのにねえ、プロの技だねぇ。

 

今回の一番面白かったのは日本初演の「DGV」。映画『ピアノレッスン』『仕立て屋の恋』などで有名な、マイケル・ナイマンの以下の曲に合わせて振り付けられたモダン。


'MGV 1st Region' by Michael Nyman

 

音楽の軽快さと、ダンサーの動きが絶妙にシンクロしていてよかった。

 

www.nntt.jac.go.jp

www.nntt.jac.go.jp

 

NHKで、2020年2月17日0:00(16日24:00) に放送するらしいので、ご興味あれば

www.nntt.jac.go.jp

イズマイル・バリー「みえないかかわり」@銀座メゾンエルメス フォーラム

今年初めての美術館巡りは、銀座メゾンエルメスだった。イズマイル・バリー「みえないかかわり」展の最終日に駆け込み。

 

www.hermes.com

 

銀座メゾンエルメスは、レンゾ・ピアノが設計し、2001年にオープンした。

2018年に隣接するソニービルが解体されたので、数寄屋橋交差点からも見ることができる。美しいガラスのビルだ。なんとなく中銀カプセルタワーを感じる。特に夜がいい。エルメスオレンジに近い色の色温度の低い照明が外に溢れる様は、ランドマークとしても気持ちがいい。

とはいえ、ハイブランドの基幹店なので、入るのには緊張する。

一階のスカーフと香水の売り場の奥に、エレベータがあるので8階に。

降りると、奥に誘導される。

以前は特に誘導はなかったがと思ったが、その理由はあとでわかる。

最初の展示は、"Apparation"ビデオ作品。下から強い白い光が当たっている白い板。背面から指を動かすとそれが影になり、上から投射されている写真が浮かび上がる。指に隠れていない部分は白い光で飛ばされ、表示されない。白い影。指の動きで、見える場所が変わる。手法をまねることはおそらくそんなに難しくないが、そこにどういう意図を乗せて行くのかは、頭を捻らないと難しい。あとで分かったが、作者が選択した絵は、チュニジア独立記念日。エモい写真とそのエモさへの接続は現代美術っぽくある。

そのあとは、暗室のような部屋で、影をモチーフにした作品群を見る。学芸員さんから教えてもらったが、ピンを壁に挿して、その影で一本の曲線を作るとか、砂の上の足跡のような物だとか、心の中のBGMを全部消して、静謐な中で五感を研ぎ澄まして対峙してみないと見えない何かが展開される。

外に出ると、暗室側の逆が示される。メゾンエルメスが取り込む外光に満たされた部屋から、暗室に零れる揺れる光が、内側の作品と共鳴しているという謎解きがなされる。確かに先にこちらに来ていたら効果半減だわ。誘導賢い。

 

作者による解題など


Ginza Maison Hermès Le Forum – Ismaïl Bahri

2019年美術展振り返り

今年をトップ3+1で、振り返り。

今年は、なんと言ってもアムステルダム にいって修復直前の『夜警』をアムステルダム 国立美術館で見たのと、そのお隣のファンゴッホ美術館に行ったというのが、最大のハイライト。

アムステルダム国立美術館の記事が大量にあるということでテンションの高さが伺えて、恥ずかしくもある。

Top 1: アムステルダム国立美術館

The Nightwatch by Rembrandt - Rijksmuseum.jpg
By Rembrandt - http://hdl.handle.net/10934/RM0001.COLLECT.5216, Public Domain, Link

 中でも通常展でもある 2F Gallery of Honour の凄さが。

nimben.hatenablog.com

オランダといえばフェルメールでもあるので、前年秋に日本でフェルメール展を見てから行ったというのは流れ的にもよかった。美術展にいろいろ行くと、単純にその展示会だけではなく、その作家の流れであったり、時代の流れであったりというものも糸のように繋がって見えてきて、それが面白い。セルフキューレーション的な。

Top 2: ファンゴッホ美術館もよかった。

作家としての彼の流れを知ることができたのもよかったし、私が知らなかった名作、『花咲くアーモンド』(1890年 サンレミ時代) を見ることができたのが嬉しかった。

Vincent van Gogh - Almond blossom - Google Art Project.jpg
By Vincent van Gogh - dAFXSL9sZ1ulDw at Google Cultural Institute maximum zoom level, Public Domain, Link

 

nimben.hatenablog.com

 

Top 3: クリムト

Gustav Klimt 039

『ユディトI』などの妖艶さ。金とぼんやりとした薄暗がりに浮かぶ人の心理の不確かさ。『ベートーヴェン・フリーズ』は、ウイーンに行ったら本物体験できるのかしら。 

nimben.hatenablog.com

番外: IWM London

f:id:nimben:20190324110836j:plain

美術展ではないのだけれど、キューレーションデザインというものの大事さを思い知ったのが、帝国戦争博物館

地下から時系列で階をあがって行き、最後は現代かと思いきや、ホロコーストに戻って終わるとか。第一次世界大戦という、「世界大戦」に初めて参加した泥沼具合の見せ方のメリハリと、第二次世界大戦に行く前に、モータリゼーションについて語るとか。

 

nimben.hatenablog.com

その他

記事化していないものもあったので、順不同で。

東寺展

 

f:id:nimben:20190531180359j:plain

年初に言っていた通り、『東寺展』に行けた。お客さんが写真やフラッシュはダメと言っているのにやっちゃってるところが、とても残念だった。このため体験としてはTop3からは外したくなった。いやーな感じを思い出してしまうので。

展示会としてはとてもよくって、なんと言っても立体曼荼羅の中を回遊できるのは、夢見ごこちだった。

 

ヨシダナギ写真展 HEROES 2019

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000356.000031382.html

f:id:nimben:20190706173436j:plain

主にアフリカだったのだけど、アイヌのビジュアルも。レタッチしまくって彩度も上がりすぎているので、本来は私は嫌いなタイプの絵作りなのだが、元の素材の力が強いので、そういう好き嫌いを超越して入ってくる感じ。
 

f:id:nimben:20190706172739j:plain

 

塩田千春展

f:id:nimben:20190809191944j:plain

三国志

f:id:nimben:20190823180343j:plain

推し関羽

横山光輝の原画もあったりと、小学生時代からのファンだったので、楽しかった。

f:id:nimben:20190823182045j:plain

美術品ではないが、この矢の雨のビジュアルは迫力あったなあ。映画だと『レッドクリフ』や『グリーンデスティニー』?

正倉院展

f:id:nimben:20191026192012j:plain

螺鈿って美しい。国宝のコピーを正確に作っていく過程のビデオも素晴らしかった。技術の伝道。経年でしか得られない美しさもあるんだなあとも。エレキギターの磁力が、最初から弱かったらダメで、経年劣化で弱くなるからこその良い音、的な。

同時開催だった『文化財よ、永遠に』展がよかった。修復の過程を見せてもらうのと、あとは過去の修正をオリジナルに戻すような修正などなど。仏像は1000年前のとか平気で存在するので、地味でもメンテナンスがどんなに大事かを見せつけてくれる。

https://www.tnm.jp/modules/rblog/index.php/1/category/105/

こちらはその時の通常展の千手観音様と四天王。

f:id:nimben:20191026173303j:plain

 

来年も良い美術品と出会うことができますように。

大英博物館『マンガ展』の図録

ラッキーなことに、大英博物館でやっていた『マンガ展』の図録を手に入れた。

magazine.manba.co.jp

これをざっと見るだけで、行くべきだった展覧会だということがわかった。

メインキャッチの絵が、『ゴールデンカムイ』のアシリパさんだったから、現代によっているのかと思いきや、浮世絵から、手塚や赤塚から、萩尾望都竹宮惠子というレジェンドから、井上雄彦尾田栄一郎こうの史代などなど、かなり満遍なくカバーしている。

こんなに網羅的に開催されていたのか。


The Art of Manga at British Museum | Exhibitions | Showcase

トーハクでいつかやらないかなあと思いつつ、ゆっくりと図録を読もう。

 

 うむむ、難しいのか。

末次由紀『ちはやふる』映画版と合わせて

 漫画の『ちはやふる』と映画のそれとは、違うんだけど一緒の物語のように思う。

Kindleまとめ買い版

漫画版の『ちはやふる』はまだ完結していない。しかし、第1巻の最初の見開きを見ると、もうすぐ終わろうとしているのではないか、というところまで差し掛かっている。

終わってから一気読みも良いが、お話が終わるかもしれないドキドキを共有するのが連載リアルタイムの醍醐味というものだろう。

話のはじめは小学六年生。今は、高校三年生の10月中旬。三年間を今の所42巻で書いている。

 

今をときめく広瀬すずがヒロインで映画化というと、アイドルのプログラム映画かと思うが、違う。ど真ん中の青春映画だと思う。

青春映画とは、何かを打ち込む青春の姿を描く映画。

カルタを横軸に、太一、新、千早の3人の人間関係を縦軸に織られた大河ドラマだと思う。しかし、ある意味青春らしく、この3人の「好き」は、恋なのか友情なのか戦友なのか、いまいち判然としないところが、みぞみぞするポイントになっている。

カナちゃんと机くんの方がよっぽどわかりやすい。

 

ちはやふる』はカルタの天才を書いている漫画ではあるのだが、同時に負けて去っていく凡人を描いた作品として、私の胸を打つ。Good Loserという、潔い負けを描いているわけではない。私のような凡人が、いかに負け、負けたことに負けずに生きていくのかということを書いているかのような。青春の全てを賭けて勝つことも、負けることも、青春を過ぎたらただの一コマとなっていくに過ぎないという切なさと、それでもたくましく生きていく様を突きつけられるような。

うん、生きることは、インスタグラム的な人から見て映えることを第一目的としなくてよい。興味のない人から見たら「たかが」カルタのようなものに 貴重な時間を費やして良い。カルタが手段でも目的でも良い。目的が競技に勝つことだったり、昇級することだったり、恋人ができることだったり、深く百人一首の世界に浸ることができることだったり、田舎のばーちゃんに知ってもらうことだったり、それはなんでも良い。

自分が自分であることに満足できる何かをなしたならば、それでいい。 なせなかったら、ツライ。でもそのツラさも、良い。

ただ懸命に生きる。愚直に生きる。そこに愚直になることに賭けるものと出会えたこと自体ですでに勝利、的な。

んー、これも一つの「生きているだけで丸儲け」的なものなのかもしれない。

 

 

 

 DVD