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見たものと、読んだもの

book

アンディ・ウィアー 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』/ Andy Weir "Project Hail Mary" (2021)

大傑作のSF小説。 プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 作者:アンディ ウィアー 早川書房 Amazon 同著者の『火星の人』ないしそれの映画化『オデッセイ』*1 がお好きであれば、気に入ること間違いなし。 読むにあたって、主人公の一人称小説なので、主人公が…

ソフィ・シュイム(原作)泉光(コミカライズ)『図書館の大魔術師』(第6巻)

一般的には、メディナ・ハハルク回と言われるのだろうけど、私にはイシュトア先生回ですね。素敵。 図書館の大魔術師(6) (アフタヌーンコミックス) 作者:泉光 講談社 Amazon 少年マンガの良さの一つに、まだ何者でもない少年が、何かになりたいと痛切に願…

木村元彦『オシム 終わりなき闘い』 (小学館文庫) Kindle版

日本代表監督を退任後、母国ボスニア・ヘルツェゴビナの2014年ブラジルワールドカップ出場の話を中心に。 オシム 終わりなき闘い (小学館文庫) 作者:木村元彦 小学館 Amazon 「正常化委員会」という、全くもって正常な状態でないことを表す委員会。 FIFAから…

木村元彦『オシムの言葉』 (集英社文庫) Kindle版

歴史に「たら、れば」はないのだが、オシムが日本代表を率いて2010年W杯南アフリカ大会に臨む未来を見たかった。 2022年5月1日没。 紙の本でも持っていたと思うが、今回Kindleで買い直して再読した。 オシムの言葉 (集英社文庫) 作者:木村元彦 集英社 Amazon…

野田サトル『ゴールデンカムイ』(連載最終回と期間限定全話無償公開)

大幅加筆がある模様なので、単行本派の人も、連載版を読むといいし、まだ読んだことがなければ、無償だし、登録も不要なので、立ち読みみたいな感じで読んでみるといい。 外伝とかいくらでも作れると思うけど、本伝としては314話で、キレイに終わる。 tonari…

小川一水『天冥の標』(てんめいのしるべ)早川書房/冥王斑

感想をどういう書き方にしようと悩んでいた。 10巻17冊の大河小説なので、いろんな切り方ができる。しかもダレ場というか無駄なところがなく、どれをどうとっても濃い。本当は相当書いて削っているんだろうなあという感じで、書こうと思ったらこの倍の外伝が…

鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文春e-book)

監督として2008年から2011年まで8年間中日ドラゴンズの指揮を取り、日本一を1度、リーグ優勝を4度獲得、そして一度もBクラスにならなかった落合博満。 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book) 作者:鈴木 忠平 文藝春秋 Amazon 「嫌われ…

ヤマシタトモコ『違国日記』第8巻

相変わらず、深いテーマを、深刻にはならずに、むしろコミカルに描く卓越の技。 違国日記(8)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing) 作者:ヤマシタトモコ 祥伝社 Amazon えみりのカミングアウトの話と、朝の父親は「誰」だったのかを調べる探偵話。どち…

夢枕獏伊藤勢『瀧夜叉姫 陰陽師絵草子』2巻

「スーパー歌舞伎でトールキン」の第二巻。 いろんな布石を打つ巻ではあるが、藤太 vs 大百足戦と言う絵的にも大変楽しいものもあり、飽きることはない。 [まとめ買い] 瀧夜叉姫 陰陽師絵草子 作者:伊藤 勢 Amazon 伊藤の画力の高さは、これだけで楽しい。老…

羽海野チカ『3月のライオン』16巻

天才は畏敬することすることしかできないのだが、もがく人には共感する。 一緒に戦っている気分になるのは、悪いことではない。 3月のライオン 16 (ヤングアニマルコミックス) 作者:羽海野チカ 白泉社 Amazon 将棋のことはわからないけど、棋士のエピソード…

田素弘『紛争でしたら八田まで』7巻

ナウル編のエピローグと、シンガポール編全編と、日本編のプロローグ。 紛争でしたら八田まで(7) (モーニングコミックス) 作者:田素弘 講談社 Amazon もうちょっとエピソードを長くした方がいいんじゃないかと言う気がする。 フォーマットがあるのは強く…

おかざき真里『阿・吽』14巻完結

最澄と空海のお話の最終巻。 実は最後の最後で意味が取れなくなってしまった。読解力が落ちてしまったのか、自分にトホホな気分になっている。 阿・吽(14) (ビッグコミックススペシャル) 作者:おかざき真里 小学館 Amazon 最澄と空海の関係性はつまりな…

甲賀長生『異世界紀元前202年』(2巻まで、継続中)

紀元前202年は、ハンニバルがザマの戦いで、スキピオ・アフリカヌスに敗れ、項羽が垓下の戦いで四面楚歌となり劉邦に敗れる。この二人がこれらの戦いで勝ち、そのまま東西の大帝国がぶつかったら、と言うファンタシー。 この荒唐無稽さは面白い。 異世界紀元…

野田サトル『ゴールデンカムイ』

和風闇鍋ウエスタン。 と言うのを公式が言うようになったのがいつかはわからないのだが、これは言い得て妙だ。 最終章突入を記念して、9月17日までの限定で「となりのヤングジャンプ」で全話無料で読めるので、ぜひ読んで欲しい。 tonarinoyj.jp 最初は、ア…

鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』全5巻完結/KADOKAWA

ほんわかとした、でも地に足のついたお話。 市野井雪(いちのい・ゆき)75歳が、偶然手に取ったBL漫画にハマる。ひょんなことから、書店アルバイトで同じ作品を愛する佐山うらら17歳と友達になる。 これが、どちらかの暴走によるスラップスティックになった…

ソフィ・シュイム(原作)泉光(コミカライズ)『図書館の大魔術師』(第5巻)

これは、読めとしか言いようがない名作。まだ5巻だから、追いつくのもかんたん。 これ、長い作品になると思うのだけど、完結はいつくらいになるんだろうなあ。最後まで追っていきたい。 [まとめ買い] 図書館の大魔術師 作者:泉光 Amazon 良い点を3つにまと…

世界観に押し切られたい

アニメやコミックを摂取するのが好きだ。 その理由が最近わかってきた。 物語のリアリティラインと、私の脳内のリアリティラインのすり合わせがうまくいくからなのだ。 文字情報だけのリアリティライン 例えば小説だと、ほぼ完全に読者の脳の中でリアリティ…

オススメ> Kindle本(特にマンガ)を、Kindleマンガ本棚から、ブラウザで読む

KindleリーダーのMac版が鈍い。 Macごと買い替えてやろうかという意味がわからないことを妄想するくらいに、腹が立っている。ページをめくりたいときにめくれない、めくるのにタイムラグがあるのってなんだそれは、UXとして最悪でしょう。そこはリッチな機能…

杉谷庄吾【人間プラモ】『映画大好きポンポさん』

素晴らしい。一人の天才映画監督が生まれるところと、それを見出し育てたプロデューサー。という話なんだけど『ハスラー』とか『スティング』のようなお話ではない。 映画大好きポンポさん (MFC ジーンピクシブシリーズ) 作者:杉谷 庄吾【人間プラモ】 KADOK…

佐々木 常夫『そうか、君は課長になったのか』WAVE出版

名著と言われるものを読んでみるシリーズ。 主に部下になる人と、どう言う付き合いをして、何を目標にしてやっていくべきか、という志の部分を問い直してくる、手紙集。 そうか、君は課長になったのか 作者:佐々木 常夫 WAVE出版 Amazon 著者の背景 いわゆる…

Kindleの使い分け

Kindleは、Paperwhiteなどのハードウェアデバイス、PCアプリ版とモバイルアプリ版がある。 私の使い分けは、何を読むか。 文字を読むときは、Paperwhite。 漫画や雑誌などグラフィカルなものを読むときはアプリ版。 Paperwhite ちなみに持っているのは、Kind…

玄奘三蔵のインド紀行ルート

『天竺熱風録』を読んでいて、この頃の世界図って頭に入っていないなと思ったので調べてみた。7世紀中盤の中央アジアから東アジアの図版です。 中国/唐 唐は、西暦618年から907年の間、中国を治めていた王朝である。遣唐使の「唐」ですね。都は長安(現在の…

原作田中芳樹・作画伊藤勢『天竺熱風録』全6巻

中国は唐の時代。貞観21年というと、647年。(日本は飛鳥時代。大化の改新の始まりとなる乙巳の変(蘇我入鹿暗殺)が645年) こんな時代に、中国から北インドに外交官として行き、捕らえられ、部下を置いて逃げ出し、文官にもかかわらずネパールから軍を借り…

田素弘『紛争でしたら八田まで』(既刊5巻)

チセイは、地政と知性。 紛争でしたら八田まで(1) (モーニングコミックス) 作者:田素弘 発売日: 2020/03/23 メディア: Kindle版 地政学の知識、数ヶ国語を操る知性、そして交渉とはwin-winであることと、それを信じさせる裏付ける力(暴力を含む)である…

芥見下々『呪術廻戦』15巻

渋谷事変編。 呪術廻戦 15 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:芥見下々 発売日: 2021/03/04 メディア: Kindle版 いろんな描写がオマージュと言うところに目を奪われるが、描きたい本質はどこにあるんだろう、とか考える。 虎杖が考える「正しい死」が皆に等…

おかざき真里『かしましめし』4巻

どうしても一時的な再集合に過ぎないシェアハウスというか居候生活が、終わろうとしているのかな。 かしましめし(4)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS) 作者:おかざき真里 発売日: 2021/04/24 メディア: Kindle版 癌の受容段階として、「1.否認⇒2.怒り⇒3.…

鶴淵けんじ『峠鬼』(既刊4巻)

時空を超えた、日本の昔のお話。主人公の一人が役小角なので、ベースは7世紀(飛鳥時代)くらい? 峠鬼 1 (HARTA COMIX) 作者:鶴淵 けんじ 発売日: 2019/08/10 メディア: Kindle版 話の竜骨は、一言主と役小角のお話。 役小角は修験道の開祖とも言われる、…

大河原遁『王様の仕立て屋』シリーズ

スーパーな腕を持つ職人が縦横無尽に活躍する短編連作的な作品は、手塚治虫『ブラック・ジャック』を含めて種々あるが、これはつまり落語なのだな、と言うことに気づいた。 王様の仕立て屋〜サルト・フィニート〜 1 王様の仕立て屋~サルト・フィニート~ (…

萩尾望都『一度きりの大泉の話』竹宮惠子『少年の名はジルベール』

大泉サロンの話を、恥ずかしながら全く知らずに読んだ。 一度きりの大泉の話 作者:萩尾望都 発売日: 2021/04/21 メディア: Kindle版 【電子版限定特典付】 少年の名はジルベール (小学館文庫) 作者:竹宮惠子 発売日: 2019/11/06 メディア: Kindle版 読んだ順…

大窪晶与『ヴラド・ドラクラ』1-4巻(続刊)

ワラキア公国の君主ヴラド三世(1431年 - 1476年)が主人公の史実寄りのコミック。 ヴラド三世といえばドラキュラのモデルで、その血生臭さは串刺し公としての悪名なのだが、大国に挟まれた弱小国の、しかも政治基盤が弱い王としての、まあ出世物語と思って…