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見たものと、読んだもの

バリー・ジェンキンス『ムーンライト』2016

2017オスカー作品賞だが、大作というよりも極めて個人的な映画。大きな社会的なインパクトがあった話を華々しく描いているわけではないが、それゆえに考えさせられる。主語の大きさという意味では、日本の映画的だとおもう。

アカデミー賞候補作!『ムーンライト』本国予告編

丁寧な描写

シャロンという少年の姿を丁寧に描写していく。でも直接それを語ったりはしない。ナレーションもなかったようにおもう。そこが邦画的ではない。彼は口数が多くないひととして描かれ、多くは無言の中で懊悩する。

ひとついえるのは、彼はどのように自己開示をしていいのかわからないなかで生きてきたということだ。ステレオタイプに描かれる、彼の母親。抑圧と歪んだ愛を同時に与え、混乱させ言葉を奪う。

ハウス・オブ・カード』のレミーとは思えない抑えた演技をしてオスカーの助演男優賞をとったアリによる、父親的な男性とそのガールフレンドによる唯一の心の安らぎ。

いじめっ子達。いじめない唯一の友人ケヴィン。

個人的な、伝記的な映画で、自分の内面を静かに触ってくる映画。鏡よ鏡、鏡さん。鏡に映っているのは、誰?

映像美

しかし話が邦画的私小説的個人的な話なのに、邦画ちっくにみえないのはどういうわけなんだろう。もしかしたら絵なのかもしれない。南国の空気、天気、日本だともっと暗く狭く蛍光灯の明かりが見えてきそうなのにそうはならない。色編集には色々手を入れていると聞いた。また被写界深度が浅く、見るべきポイントがきちんと計算づくで撮られているという美しさもある。

どう撮ったのかについては、以下のサイトが参考になる

www.club-typhoon.com

 

ここから、ネタバレ感想

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デミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』2016

クラッシックなミュージカルをいまつくるとこうなる。

つべこべいわずに楽しく見るのも良いし、つべこべ言いながらほろ苦く見るのも良い。


映画「ラ・ラ・ランド」オリジナルmusicPV

 

ハリウッドミュージカルのリブート版

まず、色がいい。基本的に無地の服を着ている。全体的に彩度が高い、くっきりとした色をしていて、みているだけで楽しそうだ。

 

『パリの恋人』1957年なんかの感じ。みんなの衣装の色みてくださいな。

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フレッド・アステア最高!

もちろんジーン・ケリーも忘れちゃいけない。
マジックアワーのあのシーンでセブがさりげなく真似をしている『雨に唄えば』1952年。

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雨に唄えば』といえば、ドナルド・オコナーでタップダンスですよ。

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「楽しい」が溢れている♪

ハリウッド的ミュージカル映画って、そういえば長く見ていない。

ブロードウェイ系は、『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』『レント』『コーラスライン』『シカゴ』などなどけっこうあったけど。ヒットしたハリウッド系ミュージカルってベスト盤のような『ザッツ・エンターテイメント』以来なのかもしれない。

古臭い、ということだったのかもしれない。

ジャズのリブート

古臭いの代名詞でつかわれていたのが、ジャズ。セバスチャンは、まったく誰にも理解されない。セブが好きなのはビバップだとおもうのだけど。

どのアルバムのアートワークかはわからなかったがビル・エバンスのレコードはあった。

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椅子で出てきたカウント・ベイシー

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オーケストレーションによる豪華さ

といっても、ビバップのスリーピースで楽曲ができているわけではない。

多くはオーケストレーションされていて、とってもゴージャス。

うまく適切な例がだせなくてもうしわけないのだけど、クラッシックだとたとえば『ボレロ』のピアノ版とオーケストラ版を聴き比べると、ゴージャスさのちがいがわかりやすい。まずはピアノ版。

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そしてドゥダメル指揮のウイーンフィルオーケストラ版

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あまりに楽しすぎて買っちゃいましたよ、サントラ

 

Ost: La La Land

Ost: La La Land

 

Another day of Sun が一番のお気に入り。

 

しかし、全編オリジナル楽曲というのがすごい話で。ブロードウェイミュージカルの映画化であれば、すでにある程度の人気がある楽曲があるということになるが、映画封切りまではとうぜん誰もしらないわけでしょ。プロデューサーがよくお金をひっぱってこれたなあという、もうため息しかない。

実際、この監督の前作『セッション』よりも前にこの映画の構想はあったのだが、お金が集まらなくて作れなかったみたい。『セッション』のおかげでなんとか出資を集めることができたみたい。かつすでに興行収入は制作費の十倍以上みたいなので、出資者は十分にもとがとれたようだ。よかった、もっとビッグバジェットの映画もとれる権利獲得だ。

恋模様と夢模様

これは、本当は賛否がわかれるんだろうなあとおもう。非常に重層的で、あの終わり方をハッピーエンドとしてみるかどうか。

「女の恋は上書き保存、男の恋は別名保存」などというステレオタイプで語っていいものではないとおもう。

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オスカーでも主演女優賞をとったEmma Stoneは、ゴールデングローブ賞の受賞スピーチで、1:05のところから、

This is the file for dreamers and I think that hope and creativity are two of the most important things in the world

and that the movie is all about and so to any creative persons whose had a door slammed in the face (...) or physically, or actors whose had their auditions cut off or the callback didn't come

or anybody anywhere really that feels like giving up sometimes find into themselves to get up to keep moving forward, I share this with you.

 (一部きちんと聞き取れていなくてもうしわけない)

この映画は夢を追っているたちに捧げる映画だ。希望と創造性がこの世で最も大事なことだ。この映画はそのためにあり、クリエイティブに何かを始めようとする人たちの前でドアがぴしゃりと、たまには物理的に、閉まったり、俳優の卵がオーディションに落ちたり、結果の折り返し電話がかかってこない。誰にでも、どこででも本当にもうダメだと落ち込んで止めてしまいたくなっても、立ち上がって前に進もうとする、そんな人たちと、この賞を分かち合いたい。(拙訳)

と夢を追っているひとたちに捧げる映画だと述べている。

直接は言わないが、「仕事と恋のどちらを選ぶの?」という話でもある。どちらもは選べない。どちらを選ぶのが正解だったのか。今のは正解、でももっと別の正解があったのではないか。

それは誰にもわからない。それがあれば世界が滅んでも構わない、それだけでは進まなくなるのがオトナってやつで。

その恋の始まりの楽しさと一緒に、人生の苦さってやつを複雑に練りこんだタペストリーになっている。そういう意味で、とてもテクニカルな脚本であり、演出でもある。

きらびやかな楽しさを追うことを楽しむ映画でもあり、人生のほろ苦さを味わうことにもなるという意味で、『プラダを着た悪魔』を思い出す。

 

この映画、クラッシックになる映画なので、10年に一度ずつみるといいとおもう。きっと感じ方がかわってくる。これを30歳の映画監督が撮っているなんて、まあなんとすごいことだ。

長々と書いているが、ぜひ劇場で、大画面で、特に最初の高速道路のシーンをみてほしい。

 

 

質問力と翻訳力

言葉を、わかりやすくまとめる翻訳力が大事だなとおもった話。

 

logmi.jp

対談形式なので、断定調で語る結論的なものはないから、自分の勝手解釈で考えていくが。

 

 

1日の終わりに「チェックアウト」を設けるのが大事

「チェックアウト」ってなぜ必要?

考えていることにキリをつけないと脳の稼働が終わらない。まあパソコンでいうとアプリが立ち上がりっぱなしになって、メモリにゴミが残り続けることになる。パソコンと一緒でそれだと不安定になる。これが日々たまり続けるとつらい。一旦アプリを終了させるとCPU/メモリに負担がかからなくなる。そのアプリ終了ボタンとなる自分への質問のことを、「チェックアウト」といい、毎日の仕事終わりに行うとよい。

では、よいアプリレベルの「チェックアウト」とは

明日はこの件についてA,B,Cをする、というように計画をする。数分でいい。そうすると、これは明日の仕事だ、今日は解放だと脳がかんがえるらしい。

一日の総括としての「チェックアウト」は?

「印象に残ったことはなにか?」細かくではなく、一日を一日として捉えて、振り返ってみる。ポジティブであれば問題ないが、ネガティブが続くようだと、何か問題がある。

なにか Steve Jobsのスピーチを思い出す。

I have looked in the mirror every morning and asked myself:

“If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?”

And whenever the answer has been “No” for too many days in a row, I know I need to change something.

news.stanford.edu

仕事はうかつに始めるな = PCDAのまわしかた

ここもまとめではなく、私の解釈。

PDCAの考えがないひとと仕事をすると逆によくわかる。仕事でしないといけないことを、事前準備なく、締め切りの時間が来たからいきなり開始、別の締め切りが来たからいきなり終了でやりっぱなし。Dはあるけど、PCAがないので、そこからは何も学びがない。そう、学びの回数が多いほど、一粒で複数回美味しい。

ということで、Plan時点でシミュレート、Dの時点で実際にやる、C/Aの時点で振り返れば、3倍は効く。

脳はルーチンが好きなので、ルーチンにすると苦ではなくなる。

 

 

鬼速PDCA

鬼速PDCA

 

 

 

「ひらめきはカオスからうまれる」をもうちょっと翻訳すると

ひらめきはカオスから生まれる

ひらめきはカオスから生まれる

 

 イノベーションを生み出す穏やかなカオス

= 余白 x 異分子 x 計画された偶然

= 「ちゃんと寝て」 x 「変な人と会って」 x 「嫌なことをする(= 好きなこと、慣れていること以外の何かをする)」

ちゃんと寝て

寝ている時に脳は、起きている間の情報を再構築するので休んでいるのではなく働いている。この寝ている時の働きをうまくつかうことが余白となるので、睡眠をしっかりとる。

「変な人と会って」「嫌いなことをする」は究極はいっしょ

ここは私の解釈なのだが。

自分が慣れている「コト」「ヒト」こと以外と会うということ。

秋元康が年に一度嫌いな人と会う話はおもしろかった。

よく「ワカモノ」「ヨソモノ」「バカモノ」という話があるが、自分にあまり馴染みがないヒトと会いましょう、そうすると異文化体験ができる。

ソムリエとして勉強するなら、自分が苦手なワインを飲むのが大事という話も。

これを考えると、「よいところを伸ばしましょう」という教育の限界もみえますね。あえて欠点を直しにいく、未知の分野に飛び込む良さの再認識というか。

さて、もうちょっと、やりっぱなしを直すかな。

 

ノイズキャンセリングヘッドホンないしイアフォンで悩むの巻(解決編)

結論として、買いました。インイヤーじゃないやつを。

インイヤー型は、耳をかっぽり覆わないので、軽いし汗もかかなくていいんだけど、そのぶん遮音性に劣るので回避。また高音質を諦めたくなくなった。音はドライブユニットが大きく取れる分、高音質であろうということで、オバーイヤー型に態度を変更。

買ったのは: MDR-1000X

最後まで迷ったのは、

 

 

購入理由:音の好み

最終的には好みの問題です。ノイズキャンセリング機能については、おそらくほとんどかわらない。有線でも無線でもつかえるのもかわらない。ただ、この機種は聞いていないけれど、今までの傾向として、Sonyの音のほうがBoseよりも好みだ、というところです。

購入後の感想は:ノイズキャンセリング機能最高

人間の頭はえらいので、自動的に脳内ノイズキャンセルをおこなっている。

カクテルパーティー効果ってやつだ。

でも、脳が疲れるとなかなかできなくて、イライラしてしまう。

そう、今の時期にイライラする室内の要因、それは花粉症のための空気清浄機の音。

USBで充電してすぐにつかってみたが、ノイズキャンセル効果がすばらしい。

ノイズキャンセルは、定常的な暗騒音にもともと強いので、空気清浄機の騒音はたしかに消しやすいという理屈がたつとはいえ、ほぼ無音。このため、ppくらいの音でも、通常と同じくらいのボリュームでしっかりと聞こえる。

以前使っていたMDR-NC100Dよりも、騒音を消しているし、軽く流れるホワイトノイズも随分抑えられたし、ノイズキャンセルをいれたときの鼓膜が吸い出されるような変な感触もないので、非常に快適だ。

また、音質もかなりよい。まあ、値段が値段だからノイズキャンセルなしの機種と比べたら、正直見劣りがするんだろうけど、有線の2万円レベルの音質くらいは普通に出ていると思います。

当分室内では、ノイズキャンセルとして使うことになるとおもいますわ。Bluetoothだからケーブルの長さに縛られないですしね。

ということで、購入直後効果もありますが、かなり幸せな感じ。

 

カルテット

すずめちゃんの、このセリフだけでも、このドラマは見る価値があった。 

人を好きになることって絶対裏切らないから

知ってるよ、まきさんがみんなのこと好きなことくらい

絶対それは嘘なはずないよ

だってこぼれてたもん

人を好きになることって、勝手に溢れるものでしょ

溢れたものが嘘なわけないよ

 

www.tbs.co.jp

最初はこのドラマ、なんかいけすかない感じだなとおもっていたのだけれど。

家森さんのウザさとか。まきまきさんの小狡そうな感じとか。

舞台劇調で少ない人数に閉じてやるのかとおもったら、クドカンが急にでてきてとか。

バランスが微妙に破調になっていて、ちょっとあざとさを感じていたのは事実。

でもあれだね、ウザさみたいなものは、ああこういうキャラなんだとおもえば、好きになるひともいるんだね。ぼくが今回そうなった。

一番感情移入したのは、クドカンの失踪理由回。あのすれ違い感は、泣けましたよ。

「全員片思い」という惹句は、ちょっと違う感じがしたけどね。

あと、吉岡里帆。ただのグラビアアイドルだとおもっていてごめん。あんなに目の笑わないイっている役ができるのはすごいなあ。

abematimes.com


シューベルト「死と乙女」 アルバン・ベルク四重奏団