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見たものと、読んだもの

奈良国立博物館の「なら仏像館」は良いぞ

何も特別展の快慶展だけが良い、というわけではない。地下を通っていける「なら仏像館」は飛鳥時代から鎌倉時代までの仏像が網羅されていて楽しいです。

www.narahaku.go.jp

 

前菜として、地下道で基礎を学ぶ

地下道には、レストランとミュージアムショップと、そして仏像についての概要説明がある。

作る材料何なのか、いつの時代の物にはどういう特徴があるのか、仏のグループってどうなっているのかなど、地下道の壁面いっぱいを使って、小学生でもわかるように書いてあって、とても参考になった。

  1. 悟りを開いたのが、如来
  2. 悟りを開こうと頑張っているのが、菩薩。(観音は観音菩薩なのでこのグループ)
  3. 仏法で人を救うために怒った顔をして頑張っているのが、明王
  4. インドの神々でのちに仏教に帰依したのが、天部

ここら辺はもうちょっと深く勉強しないとよくわからないな。

密教の三輪身という考え方では、本来の姿が如来、仏法の守護者としての顔が菩薩、導き難い人間を憤怒の表情で導くのが明王として、同じものが三つのパターンで形を成すということのようなので。

となると、1−3のグループは同じもので、4だけ異質ということになる。

4番の天部は、宗教拡大にあたって色々と神様を飲み込んだ感じ。阿修羅もいる八部衆はもともとインド神話に登場する神々で仏教に帰依したもの。

というような基礎情報を得てから、拝観。

名品展 珠玉の仏たち

www.narahaku.go.jp

リストは上記。全部ではないが個別解説と画像が載っているので、詳細はそちらを参照されたし。これ、ずっと残っているといいんだけど。

気になった仏像

見ていて楽しかったのは、まずは、飛鳥時代の誕生釈迦仏立像。

天上天下唯我独尊」のアレである。

10センチくらいの体高で、素朴でかわいい。ああ、お生まれになったのね! という愛らしさに溢れる。

また、第六室の如意輪観音坐像がよかった。なんとも言われぬ柔らかい形。

第七室の十一面観世音菩薩4体と、千手観音像2体というのも迫力でした。

部屋の中で圧倒されたのは第8室。

奈良国立博物館の工房で修理を終えた降三世明王坐像(大阪府、天野山金剛寺)が新国宝認定されて、展示されている。来年2018年の3月には金剛寺に戻されるみたいだから、ここで見るなら今がチャンス。

これ、かなり大きいんですよ。像の高さが230cm。極彩色だし。大迫力。快慶の弟子の行快の作ともわかったみたい。

このほかにも兜跋毘沙門天立像や、広目天増長天と迫力の武人系が並ぶ。

 

特別展ほどは混んでいないので、じっくりと見ることができるので、超オススメです。

 

 

 

 

新潮社『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』

快作いや、怪作か。

普段触れることのない、鳥類学者の知られざる日常を軽妙な文体で語りあげる。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 

文体は平易でユーモアにみちる

これ、同世代でないと、あるいはネット文体に慣れてないと、あるいは嘘と諧謔と事実を見分ける眼を持ってないと、と言う、ある意味学者にあるまじき文体である。学者のそういう文章でいうと、土屋賢二あたりを彷彿とさせるかもしれない。

しかし、そのぶん、平易である。

内容 は鳥類学者自己(事故)紹介

 

鳥の話をしているが、鳥類学者の生態の自己申告。とはいえ、多岐にわたる活躍、楽しい。

例えば、南の西之島が火山で島が広がったと聞けば、無人飛行機を飛ばして海鳥が繁殖しているか確認。NHKでも番組をやっていたと思ったら、記事残っていた↓

www9.nhk.or.jp

www.nhk.or.jp

絶海の孤島での有人探検のときは、その島の外来種を持ち込んでしまうリスクがあるので、中古ではなく新品のツールを使うとか。

自分ではなかなか知りようがない世界を垣間見れるということだけでも面白いので、オススメです。

 

興福寺で阿修羅像を見る

なんかおっかけみたいになっているが、また阿修羅像を見てしまった。

奈良に来てしまったら、お会いしないとしょうがないよね!

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しかし、興福寺国宝館は耐震工事のため休館! しかしっ!

 

阿修羅天平乾漆群像展

仮講堂に、(個人的な理解では京都の東寺の立体曼荼羅のように)群像として展示されているのだ。前期が2017年3月15日から6月18日まで。後期が同年9月15日から11月19日まで。

真ん中に、阿弥陀如来像。

四隅に四天王(四天王は前期のみ展示)

阿弥陀さまの左右内側に左が帝釈天像、右が梵天像。左右外側に、左が金剛力士像(吽形)、右に同阿形。

阿弥陀さまの前に、中央に華原磬(かげんけい)。左右に龍燈鬼、天燈鬼(前期のみ)

左右前方に、十大弟子のうち現存する6体と、阿修羅を含む八部衆

東金堂よりもゆったりと見ることができる。

正直、博物館とは異なり、柱の関係でどの位置からでも綺麗に見える、というものではないのだが、それがまた良い。

阿弥陀さまの真正面に窓があり、そこから光が入り込む。全体にはもちろん光は回らないのだが、そのぶん暗さの中で荘厳な美しさが浮かび上がる。「陰翳礼讃」というほどには暗くはないが。

阿修羅像は、2009年の東京国立博物館や同年の九州国立博物館での展示のように、主役としてたっているわけではない。あくまでも八部衆の一人としてご本尊である阿弥陀如来像を支える感じが良い。

暗い系の壁に、落ち着いた金の阿弥陀如来像と赤めの像が揃ったので、ちょっと背景に溶けるところを除けば、いくらでも見続けられる感じだった。

後で御朱印をいただいていたのだが、その時に9月の東京国立博物館の運慶展に10体くらい行くみたいなお話を聞いた。後期に出展がない四天王と華原磬、龍燈鬼、天燈鬼は東京にお越し願うのかもしれない。

 

中金堂は建築中。東金堂から撮影。「中金堂再建勧進所」が見えるが、御朱印はここでいただいた。右に見切れているテントが、仮講堂のチケット発売所。

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ここで奈良国立博物館のなら仏像館で学んだ知識でレビューして見る。

興福寺仮講堂の展示をグループ分割すると

という感じになり、阿弥陀様一強である。

菩薩、明王もないというのは、ちょっと驚いた。

そして、後出しの衝撃の事実は、毘沙門天多聞天が同じものを指すということ。不明を恥じるばかりである。

東金堂の薬師如来

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この手の展示は、東金堂がお手の物。

本尊の薬師如来像、日光・月光菩薩像 (この三体セットは落ち着く)

文殊菩薩像と維摩居士像 (文殊はいるが、普賢はいないのね)

四天王像と十二神将

参拝するにあたって道が狭いのが玉に瑕。

十二神将があると、自分の干支の人はどこかなと探してしまいますね。

 

国宝の五重塔を始め、見るものがたくさんあるので、ゆるゆると散歩しながら(鹿と戯れながら)楽しむのが良いですね。

その他雑感

興福寺のホームページはこちら。右クリックはできませんが、画像など豊富に揃っているので、予習や復習にどうぞ。

www.kohfukuji.com

しかしまあ、今回も日本人が半分で、外国人が半分くらいな感じでした。世界的な観光地になったんだなあという感じ。外国語対応は難しいかもしれないけれど、じっくり腰を据えて進めてほしいです。

 

(追記)

いつまで掲示されているかどうかわかりませんが、NHK日美旅で仏像たちの設置の様子が放送されたようです

www.nhk.or.jp

 

 

緑豊かな春日大社で癒される

空気感が伊勢神宮にとても近く、巨木原始林が醸し出す神域の濃さにノックアウトされた

 

水谷神社ルートで御本殿へ

東大寺経由で春日大社に行ったため、一の鳥居からという王道ではない入り方をした。

若草山>水谷神社>一言主神社>総宮神社>桂昌殿>御本殿の順である。

世界遺産 春日大社 公式ホームページ/境内のご案内/御本殿から水谷神社

若草山からコンクリートの階段を降りてくると、一本の道路に出会う。

道路を渡り、橋を渡ったところから、春日大社の敷地だ。入った途端に、何かある、という気持ちになる。

伊勢の外宮の敷地に入った時にも感じたあの感覚。原始林による森林浴効果という人もいるだろうし、神の存在と捉える人もいるだろう。そういう強烈な場である。

最初の摂社は水谷神社。みず「たに」ではなく、みず「や」と読む。

境内からイブキの巨木が生えている。高さ12.5m、直径6.55m。外側はイブキなのだが、内がうろになっており、うろの部分からスギが生えている。圧倒的な大きさで、巨木ラバーの私としては、手をかざしてハグをするのである。

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雨を吸って生き生きとしている苔と新緑が魅力的。

色々体の不調があるので、病気平癒を願う。ここはもともと牛頭天王を祀ってある神社なのだ。

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階段を上って道なりに右に曲がるったところ。左右に奉納された灯篭がある。いずれも苔むしており、長い年月を感じる。左の林は神域なので、人の手が入っていない原始林である。

そこから一言主神社、総宮神社、桂昌殿、酒殿・竃殿をへて、西回廊から慶賀門をへて、御本殿へとお参りする。参道ではずっと、なんかやばい、なんか穢れが落ちていく感じとかなんとかつぶやいていた気がする。

御本殿と特別参拝

世界遺産 春日大社 公式ホームページ/境内のご案内/御本殿(回廊内)

知らなかったのだが、慶賀門は、古来の正式な参入門だそうだ。というのも、ここからは御蓋山を真正面に見て本殿に入ることになるから。ひゃー、そのような流れに乗っている感じですね。

残念ながら藤の季節はほぼ終わっており、中庭にある砂ずりの藤と言われる藤棚は、もうほとんど散りかけていた。絵馬は神鹿にちなんでの鹿の顔の形をしているのがかわゆい。

式年造替が終わった後の特別拝観が可能で、御廊から中に入っていく。塗りたての朱色が美しい。

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年始の春日大社展で予習済みだ。

 

nimben.hatenablog.com

 階段を上ると、結婚式をやっていた。めでたい。こういうところで結婚式って素直に羨ましい。

直江兼続が奉納した燈篭など脇目で見つつ、御廊を進む。影向門から一旦外に出て、東回廊から、御蓋山浮雲峰遥拝所へ。

御蓋山は、鹿島神宮からわざわざ武甕槌命様にお越しいただいた場所で、御神体である。白鹿に乗っていらしたので、鹿は神鹿であるし、建物は御蓋山を削らずに建っている。

遥拝所から御蓋山を見ると、御神域なので、原始林以外のなにも見えない。個人的には三輪神社に馴染みがあるので、山自体が御神体という発想には慣れている。そこに大きな仏像や十字架やメッカへの方向を示すくぼみがあるわけでもなく、という場所からお参りするというのは、宗教観的に理解できるのかどうかわからないが、たくさんの外国人観光客とともにお参りする。

逆ルートを通って、今度は中門を越えて、後殿参拝所から本殿にお参り。中門のところからじっくり見たかったが、結婚式だったので、もちろんそちらを優先してもらう。

本殿は、中には入れないのだが、春日大社展で予習してあるので、あれだあれがそこにあるのか、と思いながらお参り。

近くの摂社の八雷神社は電気関係の会社がスポンサーされていて、さすがという感じ。

万燈篭再現を藤浪之屋でやっていて、真っ暗な中に灯っている燈篭を見るのはちょっと怖いけれど美しかった。春日大社展で見たやつもこの中にあるのかしらね。

灯篭は経年変化で薄い緑色から真っ黒まで色々あって、その色々に、それぞれの願い事があるんだなあと思うと、祈るという行為に時代などないという感じをもつ。

若宮十五社参り

南門を出て、紀伊神社へ。若宮十五社参り。

世界遺産 春日大社 公式ホームページ/境内のご案内/若宮15社めぐり

本来は、夫婦大國社で受付が必要なのだが、それはしていないので、正式なお参りではないのですが。

御蓋山の奥の方を巡るので、空気の濃いところをずっと回る感じ。足元はちょっと緩いので、スニーカーがいいです。

ここから本殿に戻り、二の鳥居におり、馬止橋から東大寺ミュージアムへと、下界に降りていく感じ。

一の鳥居からの正規ルート

世界遺産 春日大社 公式ホームページ/境内のご案内/一之鳥居から御本殿

翌朝、一ノ鳥居から、伏鹿手水所>祓戸神社>二の鳥居>御本殿のルートでお参り。

前日は雨模様だったが、一転して晴れ。これはこれでまた違う感じのお顔を拝見した感じ。何度でも訪れたい心地よさがありました。

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多分この鹿もまた来いよと言っている。

 

 

 

 

東大寺で仏像を見上げる

博物館で快慶を見たら、その足で東大寺南大門にいき、仁王像を見るのだ。途中で鹿のフンを踏んだり、人力車に「リムジン乗りませんか」と声をかけられるが、そんなものは気にしない。

 

東大寺南大門金剛力士

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お昼に行った時は、網が邪魔をしてうまく映らなかったのだ。夕刻にライトアップされると、いけるぞ!

仏敵が中には入れないように守る、通称仁王、正式名金剛力士。阿吽の二躯とも国宝である。運慶快慶というか慶派として作成したらしいが詳細はまだわかっていないようだ。学術的なところは置いておいて、この堂々たる力強さをみよ! という外連味が素晴らしい。この8.4mの木造像は、1203年にたった69日で作られたらしい。東大寺の建立が752年なので、約4.5世紀たって金剛力士像ができたことになる。そこからさらに8世紀たっているので、いやはや時の流れは速い。

快慶といえば九尺阿弥陀だと思っていたら無位時代の色々やっているところに戻って、いやあこの力強さはこれはこれで素晴らしいとまたループに入る。この辺りの謎解きは秋の運慶展に期待したい。

ここまできたら、本殿にお参りである。盧舎那仏見ませんと。

中門をくぐって右を見ると、木造の屋根のゆったりとしたRが美しい。

 

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東大寺大仏殿

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見上げるお姿。

盧舎那仏、虚空観音、如意輪観音の三位一体。

修学旅行の時に参拝しているとはいえ、素晴らしい。大きいものはそれだけで十分すごいものと感じてしまうのは古来からの人間心理なのだろうか。

聖武天皇が建立し、それは色々な物語にもなっているのだが、大きく見上げてみんながそう思わせるべき世相だったのだとすると、単純に崇高な感じでは見られなくなるが。

如意輪観音にはちょっと違和感があった。というのは通常は六臂のはずだが、こちらは二臂なので。

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ちなみに盧舎那仏を裏側から見るとこんな感じ。

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二月堂三月堂

三月堂の不空羂索観音や執金剛力士像などは公開時期でもないし、二月堂の十一面観音は絶対秘仏で見ることができないので、建物だけ。

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二月堂は、思ったよりも小さかった。ここで二月にお水取りをするんだろうけど。

鹿さんが、せっせとお食事中。

ここから歩いて春日大社

手向山八幡宮

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なーんか気になって、左を見るとかわいい灯篭が。

巨木もありそうなので、入って見る。

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たまらない。素晴らしい巨木。

手向山八幡宮は、東大寺を建立するにあたっての守り神として、宇佐八幡宮からいらしたそうな。(調べると参拝は、一般的な二拝二拍手一拝ではなく、二拝拍手一拝なのが、八幡さまだそうな。失礼しました)

癒された後でふと見ると、

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菅原道真公ではありませんか!

新古今和歌集「このたびは幣もとりあへず手向山 紅葉の錦神のまにまに」を詠んだ地とされる。

ついでに見て行きなさいよ、と呼ばれた感じだ。

 

東大寺ミュージアム

東大寺総合文化センター 公式ウェブサイト/東大寺ミュージアム 企画展・特別展のご案内

千手観音をぜひご覧あれ。運慶快慶よりも前、平安時代のものだが、手が全て太い。

これの迫力は、後世の洗練されたものとはまた違う凄みがあって良い。

国宝の日光月光菩薩と共に三位一体で展示されている。