cafe de nimben

見たものと、読んだもの

(primo piatto-1) 趣旨説明(中原淳氏)

趣旨説明「カフェと学びに思うこと:場づくりの技術と科学をめざして」中原淳東京大学准教授
http://www.nakahara-lab.net/blog/

中原先生は、「組織外に、パブリックでインフォーマルな場をもつこと」の重要性をとき、それが「カフェ」ではないかという仮説を投げかける。

中原先生の研究から、成長感が高い企業は「内省支援」を行っていることが統計的にわかっている。

「内省支援」とは、「自分自身を振り返るきっかけを与えてもらったり、自分の態度を変容するきっかけを与えてもらうこと」とのこと。

引用元
「人材開発白書2009—他者との”かかわり”が個人を成長させる」、『企業と人材』vol42,No942(2009)
http://www.fxli.co.jp/co_creation/archives/000266.html
から、連載1回 3月5日号掲載 「若手・中堅社員にとっての大切な”かかわり”とは」 (vol42,No942,pp36-38,2009)

しかしながら、社内にそういう場を「公式」につくった場合、それが意図とは異なり機能していないことが多い事例を紹介(とある出版社、の事例)

このため、社内というフォーマルな枠にあることが良くないのではないか、という仮定につながり、「インフォーマル」な場の重要性がうかびあがる。

そして、荒木淳子氏の研究によると、軸足をしっかり社内にもつひとが、社外のひとと交流し、成果を持ち帰って社内にフィードバックすることが、破壊的イノベーションにつながることがあると展開。

インフォーマルであり、社の枠内にとらわれないとなると、社外にいろんなひとが集まってくるという「パブリック」な場であろうという仮定ができる。

上記2件より、「成長につながる場」とは「インフォーマルかつパブリックな場」であり、それには、「カフェ」という事例があるのではないか、という仮説にむすびつけた。

これを枕詞に、いなほ書房『cafe から時代は創られる』の著者である飯田美樹氏の紹介へ。

(primo piatto-2) 創発空間としてのcafe (飯田美樹氏)

飯田美樹氏のブログ
http://blog.goo.ne.jp/iida-miki

ヨーロッパのカフェは、17世紀から20世紀の初頭にかけて、新しい時代を生み出していったという事例紹介から、話は始まった。

藤田嗣治という画家の名前はしっていたのだが、彼の最初の個展で推薦文を書いたアンドレ・サルモンとは、エコール・ド・パリで出会ったというのは知らなかった。

wikipedia: 藤田嗣治
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E7%94%B0%E5%97%A3%E6%B2%BB

飯田先生のお話から自分なりに整理すると、まず、カフェとは三つの自由からなる。
時間的な自由:そこにいつ行ってもいい、居続けてもいい、いつ帰ってもいい
身分からの自由:社会的地位と関係なし。話す内容で関係がきまる
思想の自由:サロンとは異なり、女主人による閉鎖性がない

で、ハードであるカフェをソフトウェア的にもカフェ的空間たらしめるには、アトラクターの存在がキーになる。

アトラクターは、すでに名をなした人物で、「その人がいるぞ」ということで、後輩世代をそのカフェに呼び込む力がある人のこと。

「神」だであるアトラクターを、後輩世代は最初はあがめ、見て、話す機会をえる。そのうち、「神」フィルターが徐々に解けてきて、「自分もイケるんじゃないか」とおもうようになる。

「自分もイケるんじゃないか」とおもったら、同世代と議論をしていき、互いに学び合う。

そして「先輩世代はイケてないんじゃないか」とおもったら、「何かを否定するのはたやすいことだが、乗り越えるのは簡単ではない(ボーボワール)」にしても、自分たちで新しい道を苦しみながら探ることになる。

#このあたり、能の「守・破・離」にちょっと似ている気がする。

苦しみつつ新しい道を見つけられた人たちがいる(=カフェが天才を創発できた)のは、ジョハリの窓でいう「unknown self」をお互いに指摘し合い、協調学習プロセスをへて、議論が上昇していくからではないか、という仮説をとなえる。

#協調学習とは:複数の学習者同士がお互いにコミュニケーションをとりながら学び合うこと
http://www.beatiii.jp/seminar/012.html

そのための条件としては、カフェは「内部では言いづらいこともいえる外部の空間(=public & informal)」であってほしいとのことでした。

(primo piatto-3) ミニレクチャー(上田信行氏)

いやー、記憶って抜け落ちるもんだなとおもいますが、日常におぼれると更に思い出せなくなるとおもうので、まずは、メモした内容だけ。

考察などは、後で追加することにします(orz)

閑話休題

授業をデザインするときに、以前は最終的に評価される内容から逆算してつくっていた。
そうすれば、もちろんいい点がとれるようにすることはできるのだが、評価軸には入っていないが大事なポイントが抜け落ちてくるのが気になってしかたがない。

このため、あえて先にゴールをつくらず、創発の場としてのデザインをすることを考えた。(めっちゃチャレンジングですね!)

Playful noise が入ってくることを期待して、Zone of Potenial Confidence を場としてつくりあげていく。

流れは、イタリアンミールモデルをとる。

1.antipasto: attention & relevance
2.primo piatto: engatement (1st act)
3.secondo piatto: interaction (2nd act)
4.dolce: reflection
5.espresso: discovery & awareness

#詳しくは
http://www.nakahara-lab.net/blog/2006/10/post_596.html
http://learningart.net/blog/index.php?entry=entry070314-210948

一回のイベントやワークショップでは、ひとつの流れが"5.espresso" で完結してしまうが、TKF(つくって、語って、振り返る)という一連の流れをスパイラルにして、つながっていくようにするのが大事。

#今回のantipastoでは、LEGOでカタチを「つくって」、それがどういうものか「語って」、語りながら内容を「振り返る」というひとつのフラクタルな流れをつくっていた。

イタリアンミールモデルで一番重要なのは、antipastoの設計。
最終的には、espressoのところまでは何もいじらず、場にまかせられるような流れが自然とできるような設計にするのが一番むずかしい。

どこかで、「神→人」から、「人←→人」という流れにスイッチがかわる瞬間がある。

How can I do it? → How can WE do it together?

これを促す流れをつくるのが大事。
イタリアンミールモデルでいうと、"primo piatto" → "second piatto" への移行でスイッチがはいる(はず)

そのために、antipastoでは、ロール紙や発色のいいペンをつかうというところにまで気をつかった。

(dolce) wrap-up

長岡健先生
http://www.mi.sanno.ac.jp/top_menu/infom/nagaoka.html

「逆に、Cafeと正反対のものは何か? それは『組織』である」
組織にはルールがあり、Cafeにはルールがない。
以前はよく「コミュニティ」というものが語られた。
たしかに「組織」よりはルールはゆるい。しかし、それでもコミュニティにはルールは存在する。

Cafeの挑戦は、「ルール無しに参加者が主体的に動けるのか」というもの。
逆に、「ルール無しで動ける場」が一番Cafe的な物といえるのではないか。

という、簡潔で強いメッセージを発せられた。

「ルールなし」というところに対して、何をどこまで求めるのかについて、もっと言及があればうれしかったな、とおもいました。

PDCAサイクルに当てはめると、Pの最初期「なぜこれを実行したいのか」あるいはPの直前期「これをやってみたらおもしろそうじゃない?」を担当するのが「Cafe」ではないか、と私はおもっております。

このため、Cafeの得意とする物、不得意とする物を(ある程度)明確化することが大事なのではないかな、と。

中原先生

今回、上田信行氏を迎えておこない、イタリアンミールモデルを実際におこなった。イタリアンミールモデルで一番大事なのはアンティパストの部分。これはワークショップの仕掛けのデザインである。
各テーブルにひとを配置するのも、男女比や年齢構成をかんがえ、「だいたいこんな感じの話でもりあがるであろう」ということを意図し調整するという事前準備を、実はしている。
また、このホールに最初の段階で入ってきたひとはおわかりだろうが、実はフード、ドリンク、照明、バックグランドミュージックについては、かなり気を配って、現在の状態になるように変えてきた。

照明は、じつは蛍光灯の光が多く、「会社の会議室みたい」な感じだったのだが、蛍光灯を消し、白熱色のダウンライトに切り替えた。
これにより、照度をおとし、寒色系から暖色系にかえて、「ゆるい雰囲気」を設計し、リラックスするような雰囲気に適宜かえていっている。

この「仕掛けのデザイン」の話はとてもおもしろかった。
あとになって、ホストのみなさんが焦げ茶色のエプロンをしているのに気がついたり。Cafeだけにフリードリンク、フリーおやつになっていたり、と、なるべく「Cafeモード」という非日常的なリラックス空間を演出しようという意図がわかったりした。


上田先生

「イタリアンミールモデルの「どこで」、ルールのしたで動くモードから、ルールをはなれて動くモードになってきたのか、考えて書き残していってください」

これは、
1. アンティパストやプリモピアットの状態では場のホストである人間の話すルール通りに行動しようとしていたはずなのに
2. ワークショップが始まるとMCのいうことを聞かずに話し合いを続行したりなどなどしていくというルールからはみ出た行動をみんながとっていた
という、行動の振り返りをもとめられた、ということ。

私は「守破離」のステップだったのではないか、とおもい、そう書き残した。

アンティパスト:守
セコンドピアット(前):破
セコンドピアット(後):離

でもイタリアンミールモデルにとらわれずにいうならば、一方的に聞いているという行為よりもグループワークという主体的にうごける面白さに、MCのいうことをあんまり聞かなくなってしまった、ということだろうか。

それすらも、設計されているのだろうな、とおもうと一本とられた感がございますが。