cafe de nimben

見たものと、読んだもの

TATE Modern / テートモダン:ダリとピカソ @London, UK

ダリとピカソが同じ壁に並んでいた。

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Level 2: Artist and SocietyのCivil War という展示室。

その名の通り、「芸術家と社会/内戦」についての部屋だ。

Civil Warだけどアメリ南北戦争ではなく、第二次大戦直前のスペイン内戦のこと。

ピカソは『泣く女 / Weeping Woman』ダリは『秋の人肉食い / Autumnal Canibalism』である。他にもいろいろ展示があるが、戦争について描いたものなので、沈痛で黒くあるいはおぞましい。

Weeping Woman /Pablo Picasso / 1937

'Weeping Woman', Pablo Picasso | Tate

キュビズムの代表作のひとつ。モデルになったドーラ・マールはものすごく美人なんだけど、そういうことがいいたいわけではないから、本当にモデル必要だったのかという感じ。

絵から受ける印象は、とにかく「悲嘆」

バスク地方へのドイツ空軍による空爆。そしてその直後にピカソが描いた『ゲルニカ』そしてその系譜にのる『泣く女』

別の部屋にある『三人のダンサー』('The Three Dancers', Pablo Picasso | Tate)もいろいろ謎解きが隠されていておもしろいのだけど、『泣く女』を見た後では説明的すぎるかも。

Autumnal Cannibalism /Salvador Dalí /1936

'Autumnal Cannibalism', Salvador Dalí | Tate

シュルレアリズム。食べ合っているような自分自身を食べているような。

リンゴがウイリアム・テルのような。

ユーモアがあるんだか、悪意があるんだか。そこはかとなく底意地悪い感じ

 

両方とも超有名作家ではあるが、スペイン内戦の悲惨さからうけたのは、やはり人のダークサイドで、それに影響される。"Artist and Society" としてまとめるのは、キューレーターがえらい。

 

 

TATE Modern / テートモダン 抽象画: モンドリアンたち

モンドリアンといえばイブサンローラン。

 

nimben.hatenablog.com

というのはこの映画で知ったのだけど、それのもともとを生では見たことがなかった。

Composition C (No.III) with Red, Yellow and Blue / Piet Mondrian / 1935

'Composition C (No.III) with Red, Yellow and Blue', Piet Mondrian | Tate

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抽象画の中でもモンドリアンって、白地に太い黒い線を描いて、てきとうにビビッドな原色を塗ればいいんじゃない? くらいにおもっていたので、あんまり美しいとか感じたことがなかった。

おかしい。なんかおかしい。

生で composition C (1935) をみると、すごくよく感じる。

興味深かったのはオーディオガイドで、むかしはリンゴの木を具象的に描いていて、どんどんそれが抽象化されて、鉛直水平方向の線になっていった様子がオーディオガイドの小さいスクリーンでも表示されていた。ちなみに5ポンド弱なので、ぜひ使おう。

 

むかしTATEリバプールで回顧展をやっていたらしく、その情報が残っていた。いいなあ、日本に巡回してくれないかな。

www.tate.org.uk

 

そして、その2次元のモンドリアンを三次元にしたような作品もあった。

Abstract in White, Green, Black, Blue, Red, Grey and Pink / Victor Pasmore / 1963

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'Abstract in White, Green, Black, Blue, Red, Grey and Pink', Victor Pasmore | Tate

単純になんかおもしろい!

TATE Modern / テートモダン 抽象画: クラズナー

また抽象画でおもしろかったのが、

Gothic Landscape / Lee Krasner / 1961

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躍動感というか、ちょっと抽象的な棟方志功というか、なんか太い線がポジティブな感じで。現実というよりもファンタシーな感じもして。なーんか好き。

'Gothic Landscape', Lee Krasner | Tate

 

リー・クラスナー自体の名前は日本語版のwikipediaには名前がないが、夫のジャクソン・ポロックは有名なひとらしい。知らないというのはいいことでもあって、名前に邪魔されずにいろいろ「いいなあ」というものを発見できるもんだ。(もちろんテートにあるんだから、それなりのものではあるはずという前提はあるけど)

 

ポロックとクラズナーの関係性について面白いのがあったので、リンク貼っときます。

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/kiyou/pdf_24-3/RitsIILCS_24.3pp.15-23Yonemura.pdf

TATE Modern / テートモダン 抽象画: モネ、ロスコとリヒター

モネは印象派の巨匠だ、という印象しかなかった。

晩年は目を悪くされて、全面がぼんやりとした感じの絵になるものだなあとも。

が、そのぼんやり感が抽象画っぽい! ということを、今回のTate Modernのキューレーターに気付かされた。すごいね、キューレーションの力。

まずは、モネのこれ。

Water-Lilies / Claude Monet / after 1916

女性と比べるとかなり大きな絵だということがわかる。この壁は、これしか貼っていない。

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'Water-Lilies', Claude Monet | Tate

キューレーターはこの隣に、Mark Rothkoを並べ、関連性をみてみろと挑発する

Red on Maroon / Mark Rothko / 1958-9

明るい部屋に展示されているWater-Liliesから一転、暗い部屋へ。ここにマーク・ロスコの "Red on Maroon" "Black on Maroon" がほの明るく浮かび上がる。

(フラッシュもたきたくなかったので、写真はなし)作品群は以下を参照されたし。

http://www.tate.org.uk/search?rid=10619&type=object

room 10にある、ロスコの絵がまとめて閲覧かのうだが、あの大きさと部屋の暗さとの連携は、さすがにオンラインでみるのは厳しいね。

 

そしてその隣の部屋が、ゲルハルト・リヒター

Cage (1) - (6) /Gerhard Richter / 2006

ゲルハルト・リヒターが、ジョン・ケージの音楽にインスパイアされて描いた絵。

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'Cage (1) - (6)', Gerhard Richter | Tate ←部屋の感じと、ひとつひとつの作品はこちらで。

でもさ、ぼくにとっては モネにはこっちのほうが近く感じた。

まったく関係ないはずの絵が、キューレーターの補助線によって、こういうのどう? と関連付けられ、さらにそれを別のものとも関連付けしてみてやろうなんて気を起こさせるのって、すごい。

 

TATE Modern / テートモダン 行き方と建物編

現代アートにめざめてしまった。抽象画をみて楽しいと思ったのは初めてだ。

通いたいわぁ。

行き方

公式な行き方はこちらから。"GETTING HERE" をご覧あれ。

しかし、ついでに建物も見ながら進みたいならば、北側からテムス川を渡ってくるか、南側のサウスバンクを散歩しながらたどり着くか。

北側から攻めるなら、central線のSt.Paul's駅でおり、セントポール大聖堂を見て、ミレミアムブリッジを徒歩で渡って、テートモダン到着、がおすすめ。

南側から攻めるなら、Jubilee線ないしNorthern線のLondon Bridge駅を降り、テムス川沿いに西へ西へと歩くのがおすすめ。シェークスピアゆかり揃い。サウスワーク大聖堂→シェイクスピアが通ったとかいう英国パブのThe Anchor→グローブ座と歩いていける。

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グローブ座

建物

旧館と新館がある。もともと発電所だった旧館が Boiler House、今年(2016年)に出来たばかりの新館が Switch House。どちらも同じくらいの大きさ。

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旧館:ボイラーハウス / boiler house

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新館:switch house (ケータイのカメラだと入りきらなかった。けどファザード素敵でしょ?)

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北側の入り口

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入り口から振り向いてセントポール大聖堂をみる。特別展のノボリのしたでは、いろんなひとがパフォーマンスしている。

 

どちらも2階と4階(ややこしいが日本風に言うと3階と5階。地上1階がグランドフルア略してG階なので。本稿は、英国式にならう)が無料展示。他の階は優良の特別展や会員限定の施設など。

ぼくは入っていないが、てっぺんの8階にはレストランがあって眺望が非常によろしいらしい。

エスプレッソバーなどお茶するところも、無料ソファもたくさんあるので、疲れたらいつでも休めばよい。

無料展示室は基本的に写真はOK。オーディオガイドが5ポンド弱だったかな。コインが不要だったので、「釣りは寄付します」とかっこよくいってみた。

入り口は、北の川側にも南側にもあるが、北側がおすすめ。背にセントポール大聖堂を背負いながらはいっていくのは気持ち良い。

無料展示

英国美術館博物館なので、基本的に無料。4ポンド寄付してねとかいてあるので、ぜひ寄付するか、何か買おう。まじで内容がすごいので、お布施するべき。

 入ってまずは驚け。超大型ホール "Turbin Hall/ タービンホール" である。

f:id:nimben:20161004134040j:plain縦155m、横23m、高さ35mの巨大な空間があり、そこで動くインスタレーションを行っている。あまりにも巨大なので一目では見切れないから、上記写真のように寝転がって天井を見るようにして観覧しているひと多数。

私が行った時は、音楽に合わせて照明が点いたり消えたり、また大きな壁のようなものがつり昇がったり降りたりするという、star guiterのPVのような感じだった。

 


The Chemical Brothers - Star Guitar

長くなったので、展示物に関する感想は次の項にて。