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見たものと、読んだもの

京都・醍醐寺 真言密教の宇宙@サントリー美術館

『阿・吽』から空海づいてる。醍醐寺は、空海の孫弟子の聖宝が開祖の真言密教のお寺。「醍醐の花見」の醍醐寺でもある。

構成は編年体っぽく、開山から年代別に流れていく。

展示替リストを見ると、九州国立博物館でほぼ同じ内容のものが2019年1月から3月に行われるので、そちらも良いかも。

というか、キューハクでしか出てこないものもたくさんあります。ここら辺は物理的キャパの問題でしょうね。流石にキューハクに比べるとサントリー美術館は小さいので。

 

第一章 聖宝、醍醐寺を開く

まずは「如意輪観音坐像」の360度展示でお出迎え。

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全高50センチほどの小ぶりの坐像である。

本来であれば異形である一面六臂。しかし、

右手を頬にあて、輪王座という胡座で両足うらをつけた形。アシメトリック

リラックスした穏やかな表情で、素敵。

写真1/19|展覧会「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-」国宝の仏像など"醍醐寺"の至宝約135件 - 東京・福岡で - ファッションプレス

※先日、『バーフバリ』を見たのだが、お母様の座り方って如意輪観音風なのね。

 

空海筆の、国宝の「大日経開題」も出ている。相変わらず「にょほっ」とした文字。

ちなみに、読みは「だいにちきょう」であり「だいにっけい」ではない。wikipediaで調べたら「大毘盧遮那成仏神変加持経」に飛ばされた。8世紀に成立したみたいだから、もしかしたら空海が日本に持って帰ったかも? ←どこにも記述が見当たらないので妄想です。

 

第二章 真言密教を学び、修する

五大明王を絵と像で対比する

daigoji.exhn.jp

絹本著色五大尊像(国宝)と五代明王重要文化財)という二次元と三次元の対比が面白かった。

絵の方は、炎の赤を主体に、緑色で筋骨隆々。

像の方は、赤系が主体なのは一緒だが、割と木目が見えている感じで、腕や足は細く長い。筋肉はあまり付いていない感じ。

しかも、大威徳明王が乗っている牛が、割とプリミティブな抽象化がされている感じで、なんともかわいらしい。六面六臂六脚なんですね。多脚であることには今まで気がつかなかった。

梵名のヤマーンタカとは『死神ヤマをも殺す者』ということは、閻魔であるYamaを殺すものか。

金剛夜叉明王も正面のお顔は五眼なのね。絵・像ともにきちんと5つありました。これも今回初めて気がついた。

閻魔天、not 閻魔大王

閻魔天って、閻魔大王しか覚えていなかった。

閻魔大王ってこんな感じよね。

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こちらは、日本仏教的には地蔵菩薩と同じ(え? 魔改造すぎません?)

 

しかし、醍醐寺の閻魔は、十二天の南担当のYama様だった。閻魔大王とは全然異なり、菩薩などのような安らかなお姿である。

Enmaten.jpg
By 不明 - The Universe of Daigoji - Esoteric Buddhist Imagery and Sacred Texts (Nara National Museum 2014), p113, パブリック・ドメイン, Link

この絵のほかにも、閻魔天騎牛像帝釈天騎象像が並んでいたりと、なかなか楽しうございました。

五大明王ではそのほかにも展示がある。別格だったのは快慶の不動明王坐像。これは一年ちょっとぶりの再会。

nimben.hatenablog.com

このほかにも色々あったが、普賢さんに会うなら、サントリーでの後期の方に国宝重文が展示されるので良いかも。(キューハクには行かない)

なお、80年に一度しか公開されない秘宝「太元帥法本尊像」や孔雀王系も、九州国立博物館会場のみ。

しかし、呪法系のものが多いですね。開祖の聖宝自身が、役小角に私淑して山岳修行を行ったらしいと言われれば、宝具である金銅九鈷杵や金銅五鈷鈴の美しさも含めて、ちょっと怖く感じたりもします。

 

第三章 法脈を伝えるー権力との結びつき

信長の「天下布武」のハンコ付きの文章は、生では初めて見たかも。

 

第四章 義演、醍醐寺を再びおこす

醍醐の花見および秀吉関係のものが展示される。

ここで望外の俵屋宗達と再会。正確には同一のものではないが、「扇面散図屏風」は「名作誕生展」に「伝俵屋宗達」としてあったものとほぼ一緒。

nimben.hatenablog.com

とはいえ、第四章の中だと、「三宝院障壁画 柳草花図」(重文)がよかった。特に柳に白くハイライトを置くのがかっこいい。

 

 

 

 

AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展 @21_21 DESIGN SIGHT

21_21 DESIGN SIGHTに初訪問。

 

Audio Architectureとは、以下の音楽を使って、ビジュアルデザインをいくつか見せていくというもの。

vimeo.com

※Vimeoでの公開が終了。おそらく展示会自体が終了したので。

 

見せ方が面白い。

広大な横長のスクリーンに一つの作品を写したり、複数のものを同時に映したり。その裏側では、一つずつを制作の意図とともに展示している。

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※写真撮影OK 動画も15秒未満ならOK。

 

作品の「中に入る」というのは、なかなかない体験で、とても面白い。

 

全ての作品が、この音楽をベースにして映像がつけてあるので、同時にいくつも流されていても、カオスになることがないというのは素晴らしい。マルチスレッド的な。

 

実験的な感覚は、「デザインあ」でおなじみのメンバーが制作に携わっているから。

展覧会ディレクター:中村勇吾
音楽:小山田圭吾Cornelius

そのテイストが好きな方には全力でおすすめ。2018年10月14日まで。

 

川原泉『笑う大天使』白泉社文庫

ものすごくしばらくぶりに再読したのだが、こんなに哀愁を帯びたお話でしたっけね。

笑う大天使 全2巻 完結セット(白泉社文庫)

笑う大天使 全2巻 完結セット(白泉社文庫)

 

というか、表題作の『笑う大天使』もそうなんだけど、後日談である『空色の革命』

オペラ座の怪人』『夢だっていいじゃない』の哀しさたるや。

いいところのお嬢ちゃんが、猫かぶるのに疲れて授業を抜け出してアジの干物を焼いて食べる。そういう馬鹿馬鹿しいような話が出たりとか。

でもね、そういうコミカルさはお化粧で、通奏低音として流れているのは、自分に素直で、かと言って相手にはそれを押し付けず、好きな相手が幸せであることを一途に祈るという情感で、そしてそれが昭和のお話のようにウエットではなくサラリとちょっとドライめに描かれているところ。

いや、情というよりも哀切に近いかも。

哀しいとは。

自分を出して、自分がなりたい自分になるぞ、と自ら道を切り開かないタイプの人がいる。自分よりも大事にしたい人がいて、その人が幸せであったら、自分のことは二の次でいい、というような。

とあることがきっかけで、その気持ちに気がついたりする。

特に、後日談は、それに気づく物語だ。

気づくのが幸せとはいえない物語が多い中で、素直に幸せな気分にさせてくれる。

 

トム・ティクヴァ『ザ・バンク 堕ちた巨像』(原題 The International) 2009米英独仏

ハードボイルドでガンアクションがあって、古いクライムサスペンスの良いところを、現代ならこうなるというアップデートがされていて、とてもよかった。

キャスティングも含めて 原題である The International であり、グローバルであることが当たり前である今、作られる必然性があったように思う。

 

ご都合主義のところが極小に抑えられていて、かつ、その部分は、ここまで頑張ったらこういうご褒美もあるよね、という納得感があった。

www.youtube.com

なんか、いい予告編がないので困る。

 

色々伏線もあるし、その人がそうでないといけない理由もあるので、頭に予備知識を特に入れずに、ご覧になってくださいませ。

 

見た方には。私が好きなこのシーンを二つ。一応隠します。

続きを読む

島根県立古代出雲歴史博物館

建築かっこいい。

https://www.izm.ed.jp/

緑と一体となって、悪目立ちしないのが素晴らしい。

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例によっていろんなところにウサギさんがいるので、探してみると良い。

古代出雲大社建築仮説が良い。

16丈を積極採用するかどうか? 5パターンの仮説模型

常設展示の「出雲大社と神々の国の祭り」

島根県立古代出雲歴史博物館|サイト

(2)神々の住まい ─ 巨大な神殿、出雲大社

派手なのは一番大きいやつですけどね。でも、本当に可能? というところで5者見比べは、論理的整合性が高く、一長一短を考えながら見て行くことができたのでとてもよかった。

 

派手なので、そういえばこちらでも模型展示ありました。

nimben.hatenablog.com

 

銅鐸すごい、矛すごい。

1996年に加茂岩倉遺跡より出土した国宝の銅鐸39個、どーん!

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加茂岩倉遺跡は、荒神谷遺跡からは3.4Kmしか離れていない、とのこと。

 

1985年に荒神谷遺跡より出土した国宝を含む銅剣、どーん。

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それまでの全国の銅剣出土総数は300本余りだったが、1985年に荒神谷で、358本が一度に出土しました。今まで見つかった本数より多いものが一度に見つかるというミラクル。

 

王者の服装

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王者の剣。持てます。

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ずっしりと、重かったです。

 

主な見落とし

シアター時間切れ、うぬぬ