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羽海野チカ『三月のライオン』

海の地下って、どれだけネガティブなところまで地球を掘り進んでいくのだろう。

そして地上に出て、ふっくらした厚い食パンに一生懸命探した四葉のクローバーとたぶんちょっとザラメっぽくなっているハチミツをつけて、愛だ恋だという意味ではなく好きな相手に純粋にそのあまりにもぶさいくでそれだけに泣けるほど温かいオープンサンドを渡すようなラストシーンをかけるんだろうか。何周か巡り巡って人を愛せてしまうのはなんでだろうねえ。

 

いやー、ひどいだろ。あいつとあいつ。前者のあいつは、まだ可愛げがあるけど、後者のあいつはどうにもならないだろう。ああいうキャラを、妄想で出せるとは思えないんだよね。そのまんまではないにしても、ああいう、いつのまにか相手の手を縛って、人のことを思いやる気高い心を人質にして、その瞬間のセルフィッシュな欲望だけに忠実な笑顔の素敵な鬼畜って、目から血を流しながらいうけど存在するんだよ!!!!

ぎゃー、ってしながら読む。

同時に、ああ、自分って甘いなあとおもう。相手の思考が流れ込んできて、その濁流の中で自分を見失わなずに有限リソースのなかからぱちんぱちんと駒を進める、そういう冷静さというか最後の最後まで生き抜くという意地を、ぼくは持ち続けているのだろうかと、振り返って赤面して奥歯を噛みしめるような、そんな感じ。高校生になんか負けないぞくそったれ。

いつ読んでも面白い作品と、今自分がこういう状態だからバッチリフィットしてしまう作品がある。羽海野チカは、前者だと「ふんふん、いい話だねえ」となり、後者だとたぶん忘れ得ないレバーをスマッシュでぶん殴られるようなボディーブローだ。ぼくにとって、今読むべき物語だった。

人から見てどうとかじゃない。おれは負けない。