cafe de nimben

見たものと、読んだもの

2019年美術展振り返り

今年をトップ3+1で、振り返り。

今年は、なんと言ってもアムステルダム にいって修復直前の『夜警』をアムステルダム 国立美術館で見たのと、そのお隣のファンゴッホ美術館に行ったというのが、最大のハイライト。

アムステルダム国立美術館の記事が大量にあるということでテンションの高さが伺えて、恥ずかしくもある。

Top 1: アムステルダム国立美術館

The Nightwatch by Rembrandt - Rijksmuseum.jpg
By Rembrandt - http://hdl.handle.net/10934/RM0001.COLLECT.5216, Public Domain, Link

 中でも通常展でもある 2F Gallery of Honour の凄さが。

nimben.hatenablog.com

オランダといえばフェルメールでもあるので、前年秋に日本でフェルメール展を見てから行ったというのは流れ的にもよかった。美術展にいろいろ行くと、単純にその展示会だけではなく、その作家の流れであったり、時代の流れであったりというものも糸のように繋がって見えてきて、それが面白い。セルフキューレーション的な。

Top 2: ファンゴッホ美術館もよかった。

作家としての彼の流れを知ることができたのもよかったし、私が知らなかった名作、『花咲くアーモンド』(1890年 サンレミ時代) を見ることができたのが嬉しかった。

Vincent van Gogh - Almond blossom - Google Art Project.jpg
By Vincent van Gogh - dAFXSL9sZ1ulDw at Google Cultural Institute maximum zoom level, Public Domain, Link

 

nimben.hatenablog.com

 

Top 3: クリムト

Gustav Klimt 039

『ユディトI』などの妖艶さ。金とぼんやりとした薄暗がりに浮かぶ人の心理の不確かさ。『ベートーヴェン・フリーズ』は、ウイーンに行ったら本物体験できるのかしら。 

nimben.hatenablog.com

番外: IWM London

f:id:nimben:20190324110836j:plain

美術展ではないのだけれど、キューレーションデザインというものの大事さを思い知ったのが、帝国戦争博物館

地下から時系列で階をあがって行き、最後は現代かと思いきや、ホロコーストに戻って終わるとか。第一次世界大戦という、「世界大戦」に初めて参加した泥沼具合の見せ方のメリハリと、第二次世界大戦に行く前に、モータリゼーションについて語るとか。

 

nimben.hatenablog.com

その他

記事化していないものもあったので、順不同で。

東寺展

 

f:id:nimben:20190531180359j:plain

年初に言っていた通り、『東寺展』に行けた。お客さんが写真やフラッシュはダメと言っているのにやっちゃってるところが、とても残念だった。このため体験としてはTop3からは外したくなった。いやーな感じを思い出してしまうので。

展示会としてはとてもよくって、なんと言っても立体曼荼羅の中を回遊できるのは、夢見ごこちだった。

 

ヨシダナギ写真展 HEROES 2019

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000356.000031382.html

f:id:nimben:20190706173436j:plain

主にアフリカだったのだけど、アイヌのビジュアルも。レタッチしまくって彩度も上がりすぎているので、本来は私は嫌いなタイプの絵作りなのだが、元の素材の力が強いので、そういう好き嫌いを超越して入ってくる感じ。
 

f:id:nimben:20190706172739j:plain

 

塩田千春展

f:id:nimben:20190809191944j:plain

三国志

f:id:nimben:20190823180343j:plain

推し関羽

横山光輝の原画もあったりと、小学生時代からのファンだったので、楽しかった。

f:id:nimben:20190823182045j:plain

美術品ではないが、この矢の雨のビジュアルは迫力あったなあ。映画だと『レッドクリフ』や『グリーンデスティニー』?

正倉院展

f:id:nimben:20191026192012j:plain

螺鈿って美しい。国宝のコピーを正確に作っていく過程のビデオも素晴らしかった。技術の伝道。経年でしか得られない美しさもあるんだなあとも。エレキギターの磁力が、最初から弱かったらダメで、経年劣化で弱くなるからこその良い音、的な。

同時開催だった『文化財よ、永遠に』展がよかった。修復の過程を見せてもらうのと、あとは過去の修正をオリジナルに戻すような修正などなど。仏像は1000年前のとか平気で存在するので、地味でもメンテナンスがどんなに大事かを見せつけてくれる。

https://www.tnm.jp/modules/rblog/index.php/1/category/105/

こちらはその時の通常展の千手観音様と四天王。

f:id:nimben:20191026173303j:plain

 

来年も良い美術品と出会うことができますように。

大英博物館『マンガ展』の図録

ラッキーなことに、大英博物館でやっていた『マンガ展』の図録を手に入れた。

magazine.manba.co.jp

これをざっと見るだけで、行くべきだった展覧会だということがわかった。

メインキャッチの絵が、『ゴールデンカムイ』のアシリパさんだったから、現代によっているのかと思いきや、浮世絵から、手塚や赤塚から、萩尾望都竹宮惠子というレジェンドから、井上雄彦尾田栄一郎こうの史代などなど、かなり満遍なくカバーしている。

こんなに網羅的に開催されていたのか。


The Art of Manga at British Museum | Exhibitions | Showcase

トーハクでいつかやらないかなあと思いつつ、ゆっくりと図録を読もう。

 

 うむむ、難しいのか。

末次由紀『ちはやふる』映画版と合わせて

 漫画の『ちはやふる』と映画のそれとは、違うんだけど一緒の物語のように思う。

Kindleまとめ買い版

漫画版の『ちはやふる』はまだ完結していない。しかし、第1巻の最初の見開きを見ると、もうすぐ終わろうとしているのではないか、というところまで差し掛かっている。

終わってから一気読みも良いが、お話が終わるかもしれないドキドキを共有するのが連載リアルタイムの醍醐味というものだろう。

話のはじめは小学六年生。今は、高校三年生の10月中旬。三年間を今の所42巻で書いている。

 

今をときめく広瀬すずがヒロインで映画化というと、アイドルのプログラム映画かと思うが、違う。ど真ん中の青春映画だと思う。

青春映画とは、何かを打ち込む青春の姿を描く映画。

カルタを横軸に、太一、新、千早の3人の人間関係を縦軸に織られた大河ドラマだと思う。しかし、ある意味青春らしく、この3人の「好き」は、恋なのか友情なのか戦友なのか、いまいち判然としないところが、みぞみぞするポイントになっている。

カナちゃんと机くんの方がよっぽどわかりやすい。

 

ちはやふる』はカルタの天才を書いている漫画ではあるのだが、同時に負けて去っていく凡人を描いた作品として、私の胸を打つ。Good Loserという、潔い負けを描いているわけではない。私のような凡人が、いかに負け、負けたことに負けずに生きていくのかということを書いているかのような。青春の全てを賭けて勝つことも、負けることも、青春を過ぎたらただの一コマとなっていくに過ぎないという切なさと、それでもたくましく生きていく様を突きつけられるような。

うん、生きることは、インスタグラム的な人から見て映えることを第一目的としなくてよい。興味のない人から見たら「たかが」カルタのようなものに 貴重な時間を費やして良い。カルタが手段でも目的でも良い。目的が競技に勝つことだったり、昇級することだったり、恋人ができることだったり、深く百人一首の世界に浸ることができることだったり、田舎のばーちゃんに知ってもらうことだったり、それはなんでも良い。

自分が自分であることに満足できる何かをなしたならば、それでいい。 なせなかったら、ツライ。でもそのツラさも、良い。

ただ懸命に生きる。愚直に生きる。そこに愚直になることに賭けるものと出会えたこと自体ですでに勝利、的な。

んー、これも一つの「生きているだけで丸儲け」的なものなのかもしれない。

 DVD 


ちはやふる -上の句- Blu-ray/DVDトレーラー

 


映画『ちはやふる -結び-』主題歌「無限未来」(Perfume)PV

クリムト展 - ウイーンと日本1900 @東京都美術館

クリムトを生で見るのは初めて。

素晴らしかったです。

 

特設Webサイト

https://klimt2019.jp/

 

東京都美術館のサイト

www.tobikan.jp

ユディトⅠ

Gustav Klimt 039.jpg
By グスタフ・クリムト - http://www.belvedere.at/en/sammlungen/belvedere/jugendstil-und-wiener-secession/gustav-klimt, パブリック・ドメイン, Link

1901年 油彩、カンヴァス / ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館

84×42cm なので、そんなに大きくない。大作かと思っていたんだよね。

クリムトのこの作品は、異様に書き込まれた黄金の首の文様とユディトの蕩けるような顔。ホロフェルネスの顔はほとんど見えない。有名な絵の流れからしても、異様な作品。20世紀は始まっているが、世紀末的退廃が漂う。エロスとタナトス

元ネタのユディト記

アッシリアの王ネブカドネザルが、ユダヤに侵攻。アッシリア軍司令官ホロフェルネスは、ユダヤのベトリアを包囲。その町の美しい寡婦ユディトが、ホロフェルネスを酔い潰し、首をはねる。動揺したアッシリア軍をユダヤが追い払う、というのが旧約聖書のユディト記のお話。

1472年ごろ。ボッティチェリ『ユディトの帰還』 

Sandro Botticelli 020.jpg
By サンドロ・ボッティチェッリ - The Yorck Project (2002年) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., パブリック・ドメイン, Link

敢然と敵司令官と対峙し、勝利を収めた誇らしさと凛とした意志を感じる。

 

1530年のクラナッハ作のユディト

Lucas Cranach d.Ä. - Judith mit dem Haupt des Holofernes

Lucas Cranach d.Ä. - Judith mit dem Haupt des Holofernes (Staatsgalerie Stuttgart).jpg
By ルーカス・クラナッハ - The Yorck Project (2002年) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., パブリック・ドメイン, Link

なかなか無表情。ホロフェルネスの首の肉の盛り上がりがリアルで気持ち悪い。

首取りましたので、ちょっと記念撮影というような、軽い感じが怖い。

 

1598-99ごろのカラヴァッジォ作

Judith Beheading Holofernes by Caravaggio.jpg
By ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ - http://www.ibiblio.org/wm/paint/auth/caravaggio/judith.jpg, パブリック・ドメイン, Link

スカーレット・ヨハンソンに似ているこのユディットだと、腰が入っていないから首が切れなさそうではある。お付きの老女の方が強そう。とはいえ、それ以外はカラヴァッジォらしいテネブリズムがリアリティを添える。

なんでこんなに腰が引けたように描いたんだろう、ホント。 

 

 

しかし、全然みなさん作風違うのね。

ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)

Nuda Veritas by Gustav Klimt, 1899, oil on canvas - California Palace of the Legion of Honor - San Francisco, CA - DSC02764.jpg
By Daderot - Own work, Public Domain, Link

これは、大きい。244×56.5cm

ユディトの顔にも共通する、ぼんやりとしている二次元的な体、青と金の組み合わせが美しい。

 

 


【クリムト展】《ベートーヴェン・フリーズ》CG映像

第九、フルトベングラーとは、わかってらっしゃる。

凍れる音楽という感じ。リズムとか、合唱の様子とか。五線譜を絵に書き起こしたような。とはいえ、音楽的な部分を一旦停止してみても、これまた美しい。

 

 

 

特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」 @東京国立博物館 平成館

『阿・吽』以来、私の中で空海がブームなのだが、東寺も重要ポイントですね。

f:id:nimben:20190531180359j:plain

 

割と昔からお寺さんは好きで、その中でも東寺は雰囲気が好きなのと京都駅から近くて便利が良かったので、よく行っていました。今回はそのときわからなかったことを知ることができるという、とても良い機会でした。


東博のページ

www.tnm.jp

特設ページ(数ヶ月後にはなくなっているかも)

toji2019.jp

 

一番楽しかったのは、立体曼荼羅の中を歩くこと

どうしても、正面から見るだけになりがちなのですが、仏像の間を縫うように歩けるというのは良かった。

 

第1章 空海と後七日御修法

第2章 真言密教の至宝

第3章 東寺の信仰と歴史

第4章 曼荼羅の世界

 

nimben.hatenablog.com

 

 

nimben.hatenablog.com

 

 

nimben.hatenablog.com