cafe de nimben

見たものと、読んだもの

横浜美術館コレクション展 @横浜美術館

Nude展の流れで。

横浜美術館コレクション展 2018年3月24日(土)-6月24日(日)「コレクションをつくる。未来へつなぐ―近年の収蔵品より」「人を描く―日本の絵画を中心に」 | 開催中の展覧会・予告 | 展覧会 | 横浜美術館

横浜美術館のコレクション基準がなるほど、である。

西洋文化流入窓口であった横浜開港当時からのヨーロッパ近代美術と日本近代美術の相互影響の足跡がたどれる作品
(1)現代美術の展開と流れの眺観に役立つ作品
(2)今日の美術が内包する問題点を明確に表している作品
(3)近代美術の一分野としての写真の代表作品
(4)現代の市民生活に密着した分野(デザイン、工芸、建築及びビデオ)の代表作品
横浜ゆかりの代表的作家の作品
岡倉天心との関係を含めて、原三溪に庇護された、日本近代美術の発展に寄与した作家の作品

基本的に昔のではなく、近現代のものという縛りなんですね。上野とは時代で分けようという感じかしら。横浜ゆかりというのも、地縁的に良いですね。

松井冬子

生で初めて見た。私の中では幽霊画の人。

「成灰(じょうけ)の裂目(さけめ)」は九相図っぽいし、その流れで「世界中の子と友達になれる」をみると、不幸になりそうで辛い。順番が逆だけど「世界中の子と友達になれる」は学部卒業の時の作品なのね。幽霊とか死とか、狂気を描き続けるのって、正気を保つ特別な努力が必要そうだ。

諏訪敦:Stereotype Japanese 08 Design

f:id:nimben:20180506153927j:plain

ブログによると、大学で具象を描いていることで、抽象画の人たちに小馬鹿にされていたということだが。具象だからかける抽象概念ってあると思うんだよねぇ。

すごく精緻に描いてあるが、何を想起するかは見た側に委ねられている。具象故に逃げられない感。

山中雪人:魔

f:id:nimben:20180506153902j:plain

解脱済みなので悩んでいない「聖アントニウスの誘惑」という感じがする。

具象と抽象の中間なイメージ。静謐だがよくみると赤い情念で誘惑する魔がいる感じ。

ついでに国立西洋美術館の「聖アントニウスの誘惑」ダフィット・テニールス (子)/ David Teniers the Younger

David Teniers, the Younger - The Temptation of St. Anthony - Google Art Project.jpg
By David Teniers, the Younger (1610 - 1690) – Painter (Flemish) Born in Antwerp. Dead in Brussels. Details of artist on Google Art Project - IwHqShKHL1WOgg at Google Cultural Institute maximum zoom level, Public Domain, Link

プラド美術館展の流れで、初めて拝見。

誘惑している魔がブリューゲル(父)っぽいと思ったら、その娘と結婚しているのね。

なお、聖アントニウスの誘惑としては、個人的に一番印象に残っているのはサルバドール・ダリのですね。多分あれでシュールレアリズムを知った。

https://www.dalipaintings.com/temptation-of-saint-anthony.jsp

ヌード 英国テート・コレクションより @横浜美術館

久々にテート式のキュレーションに翻弄されて面白かった。

artexhibition.jp

ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより | 開催中の展覧会・予告 | 展覧会 | 横浜美術館

 

横浜美術館は凄く久しぶり。10年は行ってない。その時何を見たのかも、覚えていないくらい。

アクセスは、ちょっと歩くけど、みなとみらい線みなとみらい駅に直結しているので、雨でも大丈夫なのはいい。

ショッピングモールのMARK IS もすぐなので (値段を気にしなければ) 大抵なんでも揃うし。

ヌード展は、私が愛するテートからの展示で、ブログやツイッターなどでキュレーションが、すごいという噂が多かった。

第1章の「物語とヌード」は良い。

フレデリック・レイトン「プシュケの水浴」、ハーバード・ドレイバー「イカロス哀悼」、あの「オフィーリア」のジョン・エヴァレット・ミレイによる「ナイト・エラント(遍歴の騎士)」など、神話的な理想化された男女の裸体として展示。ここを全ての始まりとする。

美男美女ですが、もちろん神様女神様なので、当たり前です。劣情を催すなんてことはありえませんなあ。美ですから、美。

#なお、ナイト・エラントは、模写が通常展にある。同じチケットでそのまま見れるから、忘れずに。

フレデリック・レイトン「プシュケの水浴」/ The Bath of Psyche by Frederic, Lord Leighton 1890

Image released under Creative Commons CC-BY-NC-ND (3.0 Unported)

 

ハーバード・ドレイバー「イカロス哀悼」/ Herbert Draper - The Lament for Icarus 1898

Herbert Draper - The Lament for Icarus - Google Art Project.jpg
By ハーバート・ジェームズ・ドレイパー - wwGsH3KJkvD1gA at Google Cultural Institute, zoom level maximum Tate Images (http://www.tate-images.com/results.asp?image=N01679&wwwflag=3&imagepos=1), パブリック・ドメイン, Link

天使の逆光の髪の表現がすごすぎるでしょ。「逆光は勝利」(たわば先輩)

#画面中央下の割れは修復されていたような気がする。

ジョン・エヴァレット・ミレイ「ナイト・エラント(遍歴の騎士)」The Knight Errant (1870)  / John Everett Millais

The Knight Errant b John Everett Millais 1870.jpg
By ジョン・エヴァレット・ミレー - 2. Tate Gallery, online database: entry N01508 1. http://www.celtic-twilight.com/camelot/art/millais/knighterrant.htm, パブリック・ドメイン, Link

とはいえミレーのナイト・エラントの女性は本当は騎士の方を見ていたのだが、エロすぎて書き直した、ということがX線写真でわかったらしいけど。

劣情を催してはいかんのです、神話ですから。 

なお、常設展で、下山観山が模写したものも展示されているので、そちらも是非ご覧あれ。 

第2章の「親密な眼差し」の寓話性

で、話が19世紀後半になると、神話から日常の、しかし寓話的なものに変わってくる。印象派系のドガルノワールマティス、ボナールがでてくる。それに従って、細密な絵柄がもっと曖昧なものになる。それは、印象派などの光を見せるものにすることによって、エロスという批判をかわす意味合いがあったのかもしれない。光の実験である、と。 

Pierre Bonnard The Bath 1925

Image released under Creative Commons CC-BY-NC-ND (3.0 Unported)

 

Edgar Degas Woman in a Tub c.1883

Image released under Creative Commons CC-BY-NC-ND (3.0 Unported)

同じ湯浴みでも随分違いますね。

 

すごくちなみに、江戸時代の湯女図(MOA美術館、重要文化財,17世紀)

YUNA ( SERVICE WOMEN IN BATHHOUSE ) - Google Art Project.jpg
By Unknown - jQHU6547q24uEA at Google Cultural Institute, zoom level maximum, Public Domain, Link

 

 

第3章「モダン・ヌード 」

だと、さらに抽象化が始まる。20世紀前半。ヘンリー・ムーア、ジャコメッティという、抽象彫刻。ボンバーグの油絵「泥浴」に至っては、人かすらわからない。それってヌードといってもいいのか?

ボンバーグ「泥浴」 / Bomberg,David "The Mud Bath"

Bomberg, The Mud Bath.jpg
By Painting: David Bomberg., PD-US, Link

アルベルト・ジャコメッティ「歩く女性」/  ALBERTO GIACOMETTI "Walking woman (Femme qui marche)" 

Femme qui marche Giacometti Tate Modern T01519.jpg
By © Marie-Lan Nguyen / Wikimedia Commons, CC BY 2.5, Link

好みの泥人形ではなかったが、シンプルで美しい。

nimben.hatenablog.com

 

第4章 「エロティック・ヌード」

と、混乱が極まったところで、アイコンである、

ロダンの「接吻」

f:id:nimben:20180506144129j:plain

別角度から。

f:id:nimben:20180506163955j:image

このために死ぬことになる、不倫の熱い恋。

ダンテの「神曲」インスパイア、なんですね。

エロスはタナトスの逆なんだねえ。思いを叶えると死ぬことになることになるかもしれないがために、逆にその瞬間を永遠に生きることになる。

youtu.be

頭の中は、この曲でいっぱい。

ちなみに、国立西洋美術館が「接吻」のブロンズ版を持っています。今は展示されていませんが。

collection.nmwa.go.jp

白大理石と青銅でどう印象が変わるか見比べたいけどなあ。なお、ブロンズ版はwikipediaによると300以上作られているようです。

 

このロダンの作品の裏、というか設置している壁の下の陳列棚に置いてあるのが、淡々と男性同性愛のスケッチというかイラストのようなホックニー

そして、風景画家として知られているので「こんな卑猥なものは描くわけないじゃないですか」と、習作スケッチを、死後焼かれたという、ターナー手塚治虫かよ。手塚のは公開されていないが、ターナーのエロいよ。タッチはターナーのまんまであれだもんね。

Joseph Mallord William Turner / Erotic Figure Studies: ?A Nymph and Satyr c.1805–15

Image released under Creative Commons CC-BY-NC-ND (3.0 Unported)

 

ターナーだったら普通はこういう作風を思い浮かべると思うの。

Shipwreck turner.jpg
By ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー - Calouste Gulbenkian Museum, パブリック・ドメイン, Link

 

ヌードは、具象になればなるほど、ゲスで、スキャンダラスでもある。

 

第5章「レアリズムとシュルレアリスム

スナップ写真のようなスペンサー「二人のヌードの肖像: 画家とふたり目の妻」。リアリズムが行きすぎると逆にエロくなくなったりもする。

マン・レイが、でていたのだが、裸婦の背中に描いてバイオリン化するという "Le Violon d'Ingres" はでてこなかった。ミュージアムショップでポスター的なものは売っていたけど。

ベルメールの「人形」となると、ギョッとする。

エロさがなくなってきて、別の突きつけられ方をしてる感じになる。

この辺り、絵を取り上げながら書いていきたいが、著作権などで貼れないのでご容赦。

総評

19世紀末から現在に至るまで。Nudeという一本の軸で展示されてきた。

神話の時代から、世俗へ。世俗に行くとなると、貴族的教養よりも、現代社会との関わりがもっと深くなる。

モデルの裸体は誰のものか、見ている自分はどういう立場のものか、それを突きつけられる。差別、フェミニズム、そういうものだ。そこを第6章から第8章で提示していっている。こういうのも「美」とみるのか、社会運動を突きつけられたとみるのか、自分の中の差別意識を意識することになったと思うのか、色々な受け取り方があると思う。

だんだん、よく女性モチーフになっているものを男性に変えるとか、白人を黒人に変えるとか。そういう現代社会への批評性がではじめる20世紀後半。モダンアートの一つの理由は批評性だと思うから、これはこれでありだけど、批評に立ち向かうには知的体力が必要だ。私は、そこまで体力も知識もないので、最後は重くて辛かった。

個人の好みとして、まず美しく、その通奏低音に微かに批評が香る程度が好きなので、批評性が前面に来るとちと好みと外れる。(その美しさの再定義を迫るのが現代芸術では? と言われると、辛いけどね)

こういう考えさせる的なもの、既視感ある。テートモダンだ。やっぱ、テートっぽいんだな。あんまり日本のでこういう突きつけかたをするキュレーションはない気がする。ほぼ同時に開催されている東京国立博物館の「名作誕生」は、仏像だったり、雪舟若冲の絵だったりと、多軸で見せているので、軸の大黒柱感は少ない。色々用意してあるので、気に入ったものを見ていってね、となる。これが、芸術に造詣が深い人向けに高く評価されるところだろう。

Nudeの場合は、自分も持っている肉体をどうみるか、見せるか、ということで、当事者になりやすい。また、Nudeという軸で展示会の最初から最後まで貫いているので、逃げようがない。

見ている時よりも、見た後の方が大きな爪痕を私の心に残す感じだった。

 

参考

bijutsutecho.com

展示品リストへ

場内で再生されていたのは、以下。シドニーにも行っていたのね。

www.youtube.com

その他の関連動画一覧

artexhibition.jp

 

 

マーグ画廊と20世紀の画家たち―美術雑誌『デリエール・ル・ミロワール』を中心に @国立西洋美術館

国立西洋美術館は超久しぶり。天井が高いし、絵もでかいし、引いて見るに最適。それなりに空いていたので、近づいたり遠くから全体を見たりと、いい感じで過ごせた。

ちょっと迷路っぽいので、順路を辿るのは面倒かも。そこは、流石に新しい国立新美術館に軍軍配があがる。移動に階段が多いのは、バリアフリー的に厳しいしね。

とはいえ、コルビジェデザインは好きですよ。世界遺産だし。

 

さて、プラド美術館展のチケットでそのまま入れるので、ついでに。 

マーグ画廊と20世紀の画家たち―美術雑誌『デリエール・ル・ミロワール』を中心に

www.nmwa.go.jp

そしたら、シャガールとかジョルジュブラックとか、結構たくさんあって眼福でした。

出展リスト

 

好きだったのは、

13番 ジョアン・ミロ "絵画" / Joan Miró [Barcelona, 1893 - Palma de Mallorca, 1983] "Painting"  (1953)f:id:nimben:20180506160941j:image

なんかよかった。初めて目にすると思うのだが。

 

collection.nmwa.go.jp

 

カンディンスキーは私にとっては相変わらずわからないのでスルー。

シャガールは相変わらずの良さ。

 

通常展が強い。

展示物をプラド美術館展に合わしているのかわからないが、だいたい同世代のものが多かった。

ロダンの彫刻がいい

でも、私にとっては国立西洋美術館は、何と言ってもロダンの彫刻ですがね。国立西洋美術館って松方コレクションだということは知っていたが、結構ロダン作品がある。

国立西洋美術館の公式サイトの検索で、ロダン、彫刻で検索するとなんと58件!

所蔵作品検索|国立西洋美術館

 

2016のオルセー以来の地獄の門とか、カレーの市民とか、考える人とか。考える人って "The Thinker" っていうのね。"man thinking" とかと思っていたので、なんか印象が違う。


オーギュスト・ロダン ”私は美しい" / Auguste Rodin "I am Beautiful" (1885)

f:id:nimben:20180506161441j:image

人生賛歌っすなぁ。でもこれ、「地獄の門」の一部を取り出したものらしいです。

collection.nmwa.go.jp

そうだっけ、印象にないな。門は門という全体としてしか把握してないぞ。

オーギュスト・ロダン "地獄の門" / Auguste Rodin  "La Porte de l'enfer / The Gates of Hell" (原型1917, 鋳造1930-33)

f:id:nimben:20180506161735j:image

ロダンの集大成というかオールスター、地獄の門

collection.nmwa.go.jp

初めて上野公園にきて、国立西洋美術館を見た時の印象の一つがこれ。いつ何の展示を見に来たのか覚えていないけど。ただ、いつでも外に置いてあるから、逆に印象が薄れて来ていた。時は流れて、オルセー以来だから2年ぶりくらい。オルセーのは室内に置いてあるし、ブロンズでもないのです。これがオリジナルで、これをもとに、パリのロダン美術館、フィラデルフィアロダン美術館と共に、上の国立西洋美術館の3つが作られているんですって、wikipediaによると。(他にもあるやつは、パリのロダン美術館のを元に作製されているので、上野のとは、姪-叔母の関係かな)

f:id:nimben:20160207171510j:plain

オルセーのは青銅ではなく、石と石膏なので白いのです。室内だけど天窓に近いところにあって綺麗でした。色が違うと印象がずいぶん違う。鋼の錬金術師の「真理の門」は、これからインスパイアされているに違いないと思っている。

 

確かに「私は美しい」が、右端、高さは考える人のところに埋まってますね。男性の背中が主に見えてます。

 

f:id:nimben:20180506161751j:image考える人よりも先に覚えたかも、カレーの市民

collection.nmwa.go.jp

 

横浜美術館のNude展の "The Kiss / Le baiser" とも繋がるね。

なお、調べたら、今は展示していないけれど、青銅版の「接吻」は、国立西洋美術館が持っている。

collection.nmwa.go.jp

 

 

ポール・シニャック《サン=トロペの港》/ Paul Signac [Paris, 1863 - Paris, 1935]
The Port of Saint-Tropez

あと、ビュールレ展でも展示があったシニャックがあって嬉しかった。


1901年頃 油彩・カンヴァス:131cm×161.5cm

 

f:id:nimben:20180506161532j:image

ビュールレ展ではあまり気にしなかったが、ヴァン・ゴッホとまではいかぬまでも、厚塗りなんですね。塗った絵の具の影が映るくらいの。

f:id:nimben:20180506161544j:image

collection.nmwa.go.jp

 

国立西洋美術館青柳館長インタビューでも触れられていますね:

www.nmwa.go.jp

 

 

天井の高さとか好きなんよね。あと、シャルルドゴールの第1ターミナル的なラストセンチュリーモダン感。

f:id:nimben:20180506161616j:image

 

通常展だけ行ってもいいなあ。うまく探すとギャラリートークもあるようだし。 

満足満足。

 

 

プラド美術館展 ベラスケスの絵画と栄光@国立西洋美術館

ベラスケス目当てで行ったが、それ以外も面白かった。

artexhibition.jp

Las Meninas見てみたいなあ。プラド美術館に行かないと、かなー。

ちなみにオンラインでベラスケスを目で探すならこちら

https://owlstand.com/roam/6ad2f894-70a2-4654-ab26-3f3c0aebd075

 

プラド美術館の公式ページ(英語)

www.museodelprado.es

 

まとめ感想

写真でいう被写界深度の魔術師のように見えます。映画でいうと、「セブン」の監督のデヴィッド・フィンチャーの絵作りっぽい。大好き。

王太子バルタサール・カルロス騎馬像 / príncipe Baltasar Carlos de Austria (1635ごろ)

ディエゴ・ベラスケス: Equestrian Portrait of Prince Balthasar Charles
By ディエゴ・ベラスケス - 原版の投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link

 

細密に描けるからといって、全部を細密には描かずにメリハリつけるよ! というのが好み。一番好みだった、カルロスくんで、説明すると。

顔は高解像度。きりりと引き締まって、ああ、次の王様になるんだなと、わかる主人公感。視線が自然とそこに行くように計算されている。

逆にいうとそのほかはぼんやりとしている。馬だけでなく服装の一部すらもぼんやり。写真でいうとボケ味。でも遠くから見ると(ないし上記のように小さくなった写真でみると)きっちりとした解像度のように見えるマジック。感覚的にはドット絵職人もかくや。また、ぶらぶら美術散歩だったかな、本来は下から見上げる位置に置いてあったということだったので、そんなに混んでいないことをいいことにしゃがんで見たが、確かにこちらの方が自然に見える。

低解像度でも手は抜いてなくて、山々の緑と空な青さは、王太子と馬の茶色との補色関係でとても目立つし美しい。いわゆる、マローネ エ アズーロですね。

「東方三博士の礼拝 / Adoration of the Magi」(1619)

とはいえ初期作品の「東方三博士の礼拝 / Adoration of the Magi」(1619) は、どこに視線を誘導するか、カルロスくんと比較をするとまだフォーカスが甘いように思えて、かわいい。やっぱり、だんだん上手くなるんだね。この時ベラスケスは20歳(1599年生まれなので計算しやすい)

Velázquez - Adoración de los Reyes (Museo del Prado, 1619).jpg
By [2], Public Domain, Link

 

 

ベラスケス視点 

ベラスケスは以下の7作品。ベラスケスは1599年生まれだから、西暦の下二桁に1を足すと良い。今回きたものは、東方三博士の礼拝以外は、脂の乗った三十代。

 

フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像1635

メニッポス1638 /後述

マルス1638ごろ Dios Marte

筋骨隆々ではないが贅肉はない中年。戦いが終わって、防具など全部脱いだ感じ。ヘルメットの低解像度具合がたまらない。印象派に影響を与えたと言われるとなるほどと思う。

Velázquez - Dios Marte (Museo del Prado, 1639-41).jpg
By Diego Velázquez - See below., Public Domain, Link

 

狩猟服姿のフェリペ4世1632-34 Philip IV as a Hunter

左脚の描き直し跡があんなにくっきりあるとは思わなくてびっくり。

ディエゴ・ベラスケス: Q956015
By ディエゴ・ベラスケス - Museo Nacional del Prado, パブリック・ドメイン, Link

バリェーカスの少年1635-45 / The Dwarf Francisco Lezcano, Called "El Niño de Vallecas"

少年と書いてあるが、中国語で侏儒、英語でdwarfとある。顔の表情が、人を小馬鹿にする愚者という顔。ベラスケスはよっぽどこの人が嫌いだったに違いない。

Diego Velázquez - The Dwarf Francisco Lezcano, Called "El Niño de Vallecas" - WGA24434.jpg
By ディエゴ・ベラスケス - Web Gallery of Art:    Image   Info about artwork, パブリック・ドメイン, Link

王太子バルタサール・カルロス騎馬像1635/先述

東方三博士の礼拝1619/先述

 

ベラスケスを離れて:聖ベルナルドゥスと聖母

知らなかったのでおもしろかったのは、聖ベルナルドゥスと聖母。母乳飛ばし。これが、面白いでも、猥雑でもなく、聖なる話として成立する美しさ。

Saint Bernard / Alonzo Cano

San Bernardo y la Virgen, de Alonso Cano.jpg
By Alonso Cano - Galería online, Museo del Prado., Public Domain, Link

 

artexhibition.jp

 

対比で面白かったもの

対比があるのもキュレーションの面白さ。全部をベラスケスってわけにはいかないが、逆に広く取れたりするわけで。こういうの大好き。

ポートレート対決

フェリペ4世の近辺に置いてあるものも、比較のために良い展示。

アントニス・モル「フアナ・デ・アウストリア」ヴァン・ダイク「レガネース侯爵ディエゴ・フェリペ・デ・グスマン」が並んでいるのだが、服の黒の影の付け方が素晴らしい。写真だと細かいところが潰れるなあ。

アントニス・モル「フアナ・デ・アウストリア」Juana de Austria / Anthonis Mor

Joana de Áustria 1536-1573.jpg
By アントニス・モル - www.museodelprado.es/coleccion/obra-de-arte/doa-juana-de-austria/d3d06131-46a4-4331-878f-786a3a8b5736, パブリック・ドメイン, Link

 

ヴァン・ダイク「レガネース侯爵ディエゴ・フェリペ・デ・グスマン」/Anthony van Dyck "Diego Felipe de Guzmán, Marquis of Leganés"

Anthony van Dyck - Diego Felipe de Guzmán, Marquis of Leganés - Google Art Project.jpg
By アンソニー・ヴァン・ダイク - ywEF4SyuI8qLFQ at Google Cultural Institute maximum zoom level, パブリック・ドメイン, Link

哲学者対決

ルーベンスのを見て、それに「似せず」に書いたという学芸員の方の言い方だった。ルーベンスは「泣く」を見せるための構図とライティング。ベラスケスは、シュッとだって明るい全身を見せる。貧乏哲学者のステレオタイプが決まって来た的な解説があったが、うーん、そこはピンとこなかった。

ルーベンス工房の「泣く哲学者ヘラクレイトス」1638ごろ / Crying Heraclitus

Rubens-heraclito-prado.jpg
By ピーテル・パウル・ルーベンス - http://web.madritel.es/personales2/jcdc/presocraticos/pinac04_heraclito_democrito.htm, パブリック・ドメイン, Link

wikipediaによると

その著作の難解さと厭世観から「暗い哲学者」、あるいは、「泣く哲学者」と呼ばれる。また、ヘーゲルなどの思想の源流として、弁証法の始まりを担う人としても考えられている。

それで泣いているのか。個人的にルーベンスは笑っている奴の方が好き。

ベラスケスの「メニッポス / Menippus」1638:

陽気で全身に目がいく。後ろの甕の適当具合にも

Velazques moenippus 1639.jpg
By 不明, パブリック・ドメイン, Link

こっちは笑っている。

wikipediaによると

メニッポスは(中略)深刻なテーマを嘲笑の精神で論じ、とくにエピクロス主義とストア派を攻撃して楽しみ、ストラボンとビュザンティオンのステパノス(Stephanus of Byzantium)はメニッポスのことを「 σπουδγελοιο, Spoudaiogeloion(まじめな道化師)」と呼んだ。

となると、からかいの笑いかな。

聖家族対決 

聖アンナが中心で、泥臭くも暖かいルーベンスと、家族3人と小鳥と犬で静かに黒背景基調にはっきりとした解像度のムリーリョ。どちらも静かで暖かい。

ルーベンス「聖アンナのいる聖家族」1630ごろ / Peter Paul Rubens - The Holy Family with St Anne 

Peter Paul Rubens - The Holy Family with St Anne - WGA20253.jpg
By Peter Paul Rubens - Web Gallery of Art:    Image   Info about artwork, Public Domain, Link

ムリーリョ「小鳥のいる聖家族」1650ごろ Sagrada Familia del pajarito /  Bartolomé Esteban Murillo

Sagrada Familia del pajarito (Murillo).jpg
De [2], Dominio público, Enlace

蛇足: 今回来ていないベラスケス

 これ、生で見たい。Las Meninas/ラス・メニーナス (1656年)

Las Meninas, by Diego Velázquez, from Prado in Google Earth.jpg
By The Prado in Google Earth: Home - 7th level of zoom, JPEG compression quality: Photoshop 8., Public Domain, Link

作成年をみると、最晩年ですね。 

 

平成30年新指定国宝・重要文化財 @東京国立博物館

「名作誕生」からの流れで見に行きました。同じチケットで、追加料金なく拝見

www.tnm.jp

文化庁による理由づけと写真などは、こちらの報道資料参照のこと

 

報道発表 文 化 審 議 会 答 申 ~国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定について~ 

http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/__icsFiles/afieldfile/2018/03/20/a1402236_01.pdf

※しかし、パブリックドメインになってていい作品については、映像を公開してくれないかなあ。

 

では、トーハクで見た中で印象に残ったものを。

彫刻:薬師寺の木造四天王立像

展示は持国天? 外連味があって最高。やはりこういうのが好きだな。有形文化財重要文化財に格上げ。

東院堂の仏様 聖観世音菩薩像【国宝】-薬師寺公式サイト|Guide-Yakushiji Temple

彫刻:東寺の木造夜叉神立像

夜叉というから邪神かと思いきや、樹神であった。四天王に踏まれている系かと思いきや、大きくて2mくらいある。あんな大きいのは見たことない。ボロボロだったが、原始的な強さ。

有形文化財重要文化財に格上げ。

www.asahi.com

彫刻:広島県世羅町甲山の丹生(たんじょう)神社の木造丹生明神坐像、木造高野明神坐像

二頭身くらいでとてもかわいらしく、親しみやすい感じでした。おかざき真理「阿・吽」を読んでるところなので、「丹生」と聞くとアンテナがピンとたつ。

 

mainichi.jp

※新聞社のサイトへのリンクなので、切れていたら、この記事の最初にある文化庁のPDF内の画像参照されたし。

絵画:紙本墨画顆粒涅槃図:若冲の野菜の涅槃像が重文に新指定:かわいい

果蔬涅槃図 - 伊藤若冲 — Google Arts & Culture

かわいい。 

若冲の良さって、バカみたいに繊細に精密に描かれているものと同時に、ほんわりとした墨の曲線にあると思っていて、それがどどんと描いてあるこれは、とても愛しい。

spice.eplus.jp

今年の秋に、動植綵絵+釈迦三尊という2016年の東京都美術館で好評を博したセットで、フランスのプチパレで展示するみたいね。

Jakuchû (1716-1800) | Petit Palais

あそこで見るのは気持ちよさそうだなあ。

 

絵画:紙本墨画淡彩瀑布図:右隣の応挙、でかい。

真ん中の滝が雄々しくどーんとあって、脇が奇岩。大きいけど描きすぎてなくてシンプルに強い。

www.tnm.jp